「みんなで泣きじゃくる」
“疎開当初は、食事も入浴も寝るのも、友達と一緒の生活に多少興奮気味でした。しかしその賑(にぎ)やかさも次第に薄れていった八日目の夜のことです。(……)すると部屋のどこかで、小さなすすり泣く声が聞こえてきたのです。誰が泣いているのだろうと声の方へ目を向けると、泣いているのは三年生でした。近くにいた六年生の女の子が泣いている子に近づき、肩に手をかけて宥(なだ)めはじめました。でも、宥められた女の子は、前より一層大きな声をあげて「お家へ帰りたい」と泣きじゃくっているのです。”