本書は、『暮しの手帖』を創刊した大橋鎭子が、90歳のとき(2010年)に刊行した自伝『「暮しの手帖」とわたし』を、ハンディサイズに新装したものです。戦後まもなく花森安治と出会い、「平和な世の中にしたい、女の人をしあわせにしたい」と、28歳の女性がともした小さな灯は、やがて日本の家庭を温かく包む大きな光となってゆきました。『暮しの手帖』を詰めたリュックを背負って書店を回った創刊当時のことや、『暮しの手帖』で話題をよんだ記事「商品テスト」「すてきなあなたに」の制作秘話など、激動の昭和から平成を駆け抜け、戦後の暮らしの復興に情熱を傾けた大橋の生き生きとした姿に、心励まされる1冊です。
目次
先輩のこと 石井好子(歌手・エッセイスト)
一 花森安治と出会う
私にできるのは本や雑誌を作ること/ニコライ堂の下の小さな喫茶店で(立ち読み一部)/銀座から『スタイルブック』を/小さな新聞広告に大反響が/服飾デザイン講座開く
二 子ども時代、そして父と母、祖父のこと
北海道が縁で結ばれた父と母/広い広い亜麻の原っぱ/東京へ、そして鎌倉へ/悲しく懐かしい食事どきの思い出/父との約束
三 第六高女時代
心のふるさと、育ての親/オーシ―歯みがきを作る/卒業 そして祖父の死/日本興業銀行調査課へ/半年間の女子大生
四 戦時中の仕事、そして暮らし
日本読書新聞へ/文化アパートメントの思い出/父の故郷に食料を貰いに/朝鮮のアルバイトの青年におにぎりを/東京大空襲
五 『暮しの手帖』の誕生
「これはあなたの手帖です」/川端康成さんの原稿をいただく/裁判官に玉子を届ける/雑誌をリュックに背負い本屋回り/三号で倒産か/皇族の方の本当の暮らしを知りたい/やりくりの記/手優さん/商品テストを始める
アルバムから
六 『暮しの手帖』一家
花森さんの教え/社長兼一編集部員/『暮しの手帖』一家/別冊『すまいの手帖』をつくる/「キッチンの研究」始まる/原稿の依頼は、私か妹の仕事/『暮しの手帖』のぬりえ/第四回菊池寛賞を受賞
七 手紙でつづるアメリカ視察旅行
国務省の招待でアメリカへ/ワシントンD.C.より/ボストンより/ニューヨークより/ニューヨークより 2/シカゴより/デ・モインより/サンフランシスコより/旅を終えて得たたくさんのこと
八 『暮しの手帖』から生まれたもの
ロングセラーのふきんを作る/ステンレスの流し台「シルバークイーン」/スポック博士の育児書/「戦争中の暮しの記録を募ります」/外国人のファッション特集
九 すてきなあなたに
ささやかだけれど大切なこと/伊藤愛子さんのこと/三十九年後の感想/花森安治の死/花森安治は生きている
今日も鎭子さんは出社です
横山泰子(暮しの手帖社 前・代表取締役社長)
「いい本を作らなくちゃね」
阪東紅美子(姪)
大橋鎭子 年譜
大橋さんのこと
西田征史(脚本家・演出家)
[編著者]
おおはし しずこ
1920年生まれ。1948年、花森安治らと共に雑誌『暮しの手帖』を創刊。1969年、『暮しの手帖』第2世紀1号より、「すてきなあなたに」の連載を始め、1994年、同エッセイにより東京都文化賞受賞。生涯を出版に捧げ、2013年に永眠した。