第4号の「ゴマじるこの作り方」には、花森安治の挿画が添えられている。「珍味 ごまじるこ らいてう」と、甘味処のお品書き風
鞠子が、憧れの平塚らいてうにいただいた随筆のお原稿。花山編集長は一読し、「ゴマのおしるこという題材がいい。読者の求めているものをよく理解しておられる」と絶賛します。
川端康成、中原淳一、牧野富太郎、志賀直哉……。『暮しの手帖』は創刊当初から、一流の作家や著名人の随筆を柱としていました。
ユニークだったのは、「暮らし」について書いていただきたい、と依頼したこと。戦後すぐ、誰もが物資不足で苦労を強いられていた当時は、高名な人であっても、日々の暮らしを精一杯工夫して送っている、自分と同じなんだと、読者の共感を呼んだことでしょう。
さて、平塚らいてうは第4号(1949年刊)で実際に、「ゴマじるこの作り方」と題した随筆を寄せています。わたしたち編集部は試作していないのですが、その作り方を簡単にご紹介しましょう。
〈1〉黒ゴマを強めの火で、焦がさないように注意して炒る。パチパチはねさせて、手ばしっこく炒り上げること。
〈2〉炒った黒ゴマを、乾いたすり鉢で充分に擂る。黒々と照った、たとえようもないほど滑らかな泥状になるまで擂ること。
〈3〉ぬるま湯を少しずつ加えて、おしるこ程度の濃さ(と言ってもいくらか濃いめ)に擂りのばす。
〈4〉鍋に移して煮立て、砂糖と塩少々で味をつける。黒砂糖ならなお結構。ときどきかき回し、よく煮立ったら、葛をうすめにひいてもよい。
〈5〉餅を入れて出来上がり。焼いたものより、ゆでて求肥のようになった餅が合う。
らいてうは第2号では、「陰陽の調和」という随筆を執筆しています。食べものには「陰性」と「陽性」があり、そのバランスをとるのが自分の健康法だ、といった内容で、玄米を中心とした粗食を好んでいたことがわかります。
らいてうによれば、ゴマじるこは、「小豆じることは味も香りも、栄養価も比較にならない」とか。いつか、編集部でレシピを開発して、ご紹介できたらいいな、と思います。(担当:北川)