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そのまま食べておいしい、作りおきにもうれしい

2017年12月04日

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そのまま食べておいしい、作りおきにもうれしい
(91号「まとめて蒸して、どう食べる? いろんな蒸し鶏」)

「今日、なに食べたい?」
と聞くと、週に一度は、「蒸し鶏!」と返ってくる鶏好きの家族のおかげで、すっかり蒸し鶏マスターになりました。でも、毎週食べていると、タレを変え、付けあわせを変えても、どうしても飽きてしまうし、保存しておいた蒸し鶏もうまくアレンジできない……。

そんなわが家の事情からうまれた企画ですが、料理家の堤人美さんが教えてくださった蒸し鶏は、わが家の食卓への登場頻度が週に一度から二度に増えてしまいそうなくらい、とびきりおいしいレシピでした。

これまでは鍋で茹で蒸ししていましたが、今回のレシピではフライパンで手軽に、さらにおもいきって、4枚の鶏肉をまとめて蒸してしまうのです(26cmのフライパンはぎゅうぎゅうです)。

2枚はあたたかいうちにいただき、残りは冷蔵(冷凍)保存。アレンジレシピは、ポトフに、チリソース、和え麺に、サンドイッチとさまざまな料理に変身します。火が通っているので、フライドチキンだって短時間で作れます。
お正月にぜひ作っていただきたい、むね肉入りの「大根とにんじんのなます」。まろやかな味わいで、酢のものが苦手な子どもや男性でも食べやすいでしょう。

わがスタッフも、この撮影以来、毎週蒸し鶏を作っているとのこと。
本当に、心からおすすめします!(担当:小林)

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編集部員がおすすめ本を紹介します。

2017年12月01日

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編集部員がおすすめ本を紹介します。
(91号「本屋さんに出かけて」)

「最近、本が読まれなくなった」と聞きます。たとえば電車では、たくさんの人が手にしているのはスマホです。インターネットは便利でコンテンツも豊富ですから。でも、同じ車両に数人は、本を開いている人が必ず数人はいます。少なくなりつつあるのかもしれないけれど、まだまだ本は読まれているし、これからも読まれていくことでしょう。もちろん、私たち出版社は、これからも魅力ある本を作っていかなければなりません。

などと書いている私は、10代後半までほとんど本を読まない子どもでした。でも、ある作家の作品に出合い、小説をよく読むようになり、歳を追うごとに、いろいろな作品へと読書の幅は広がっていきました。心の成長と感受性が変化する年頃で、よいタイミングだったのでしょう。みなさんもそんな出合いがありませんでしたか?

さて本題です。「本屋さんに出かけて」のページは、編集部員の皆が最近読んだ本を、それぞれが読んだ感想を含めてご紹介するものです。小誌は隔月刊ですから、2カ月に一度、ひとり数冊ずつ提案して、その中から毎号8冊を選んでご紹介しています。実際に本屋さんの店頭で出合った本を購入して読んでいます。
一般的に雑誌などの書評欄というのは、文学者や批評のプロの執筆者に依頼して、書いていただくというのが多いでしょう。それを、編集部員が担うというのは、いささか不相応の感があります。でも、だからこそ、本の読者のひとりとして、わかりやすくお伝えできるのではないか、と考えています。

今号でご紹介しているのは、谷山彩子さんの『文様えほん』、佐藤雅彦さんの『新しい分かり方』、寺本紗穂さんの『あのころのパラオをさがして』、若菜晃子さんの『街と山のあいだ』、在本彌生さん写真の『熊を彫る人』、阿部岳さんの『ルポ 沖縄 国家の暴力』、『山の家クヌルプ』、『お父さん、だいじょうぶ? 日記』の8冊です。絵本から社会派ルポまで、多彩なラインアップ。それぞれ、編集部員の心に響いたのは何なのか、私たちの言葉で素直にご紹介しています。

また、毎号誌面ではご紹介しきれなかった、すてきな本がたくさんあります。それらは、小社のウェブサイトの「Blog 手帖通信」とフェイスブックにも、web版「本屋さんに出かけて」でご紹介しています。こちらもぜひご覧ください。

そういえば先日、吉祥寺の書店で、小学生くらいの女の子が、佐藤雅彦さんの『新しい分かり方』をとても熱心に立ち読みしていて、戻ってきたお母さんに「これすごくおもしろいよ!」とちょっと興奮気味に話しているシーンに居合わせました。たぶん、そのあとお母さんは買ってくれたのではないでしょうか(と思いたい)。この本の内容からして、まさに知的好奇心に目がキラキラ! という感じで、なぜかとてもうれしくなってしまいました。
偶然、本屋さんで出合った本。そのページをめくるたび、少しずつ世界が広がる。それは何歳になっても経験できる、素晴らしい体験ですね。私たち編集部員は、今日も本を読み、そこのすばらしさをお伝えしたいと考えます。ぜひ皆さんも本屋さんへ足を運んでみてください。(担当:宇津木)

ことばにならないおもい

詩集 見えない涙
『詩集 見えない涙』 若松英輔 著
亜紀書房 1,800円+税 装釘 名久井直子

 みなさんはどんな時に詩集を手にするでしょうか。『見えない涙』の著者・若松英輔さんはご自身が厄年を迎えるまで、本当の意味で詩に触れていなかったと、あとがきに書いています。
詩は黙読するより、朗読を聴くのが好きな私は、やはり自分で読む時も声に出します。おそらく、そうするたびに新しい感情と新しいことばに出会うからかもしれません。
 とても美しい、愛らしい、嬉しい、あるいは、すごく淋しい、哀しい、恐ろしいというような感情は、日々の暮らしの中で度々沸き起こってくるのですが、いざ、その気持ちを人に伝えようとすると、ことばにならないもどかしさを感じることがあります。
 目前で大きな感銘を受ける出来事が起きたとして、一方で、自分のことばがつたなすぎて言語化できず、心拍数だけが、ただただ上がり気味という始末。そんな感情だけが体のどこかに宿っていて、たまたま開い頁の詩の一行に、そのすべてが表れていると、はっとして、ことばと気持ちの整理がつきます。
 
人が
 何かを語るのは
 伝えたいことがあるからではなく
 伝えきれないことがあるからだ
 言葉とは
 言葉たり得ないものの
 顕(あら)われなのである
 だからこそ
 語り得ないことで
 満たされたときに
 人は
 言葉との関係を
 もっとも
 深める
 (「風の電話」から一部抜粋)

 「燈火」「記念日」「薬草」「詩人」「読めない本」「仕事」「見えないこよみ」「青い花」ほか全26編が収められた若松さん初の詩集は、まるで私たちに贈る魂の声のように響いてきます。一粒一粒のことばに、人が涙する時の輝きと曇りを秘めて……。
 詩の清楚な空気感と息を合わせたような装釘は、名久井直子さんによるものです。(上野)

みんなを助けてくれる「良い魔女」のようです

2017年11月30日

動画は取材時の様子を5分弱にまとめたものです

みんなを助けてくれる「良い魔女」のようです
(91号「松岡享子さんと雪のブローチ」)

この企画は、児童文学者の松岡さんの「雪のブローチを作っているのを、ぜひ紹介してほしい」というお話から始まりました。東日本大震災後に陸前高田を訪問した松岡さんは、市内の小友(おとも)小学校に毎学期訪問して本を贈っています。ブローチの売り上げが、その活動の費用に充てられているのです。

撮影に伺ったご自宅は、かつては、子どもたちがやって来て、本を借りたり、お話を聴いたりする「松の実文庫」でした。黄色の外観は親しみやすく、ピアノと暖炉のある部屋と本棚にいっぱい書籍が詰まっている部屋があり、どちらも窓からは光が入って、とても居心地がいいのです。トップのブローチや人形、裁縫道具など、それに松岡さんご自身を撮影しました。

手芸好きの松岡さんは、「こんなに楽しいこと、みんなも作ればいいのに」とおっしゃいます。材料は古着のセーターやフェルト、刺しゅう糸、牛乳パック、ブローチピンなど手に入りやすいものばかり。ブローチの直径は4~5センチほど。撮影の合間にも、松岡さんはどんどん手を動かして作っていきます。習いながら、雪の結晶を刺している私たちは、その手の速さにまったくついていけません。見る間に、雪の結晶が出来上がり、魔法のようです。

5頁で松岡さんが手にしているネコの人形は、出てきた時はひげが少しとれていて、しょんぼりしているふうでした。ところが、松岡さんが箒から1本抜いて、さっとひげをつけてあげると、ネコの表情が生き生きとしてきました。即興でネコと女の子になって話す松岡さんの声は、会話とは違う張りと表情があります。すっかり引き込まれてしまいました。

子どもの頃から、本を読むのも、友人にお話をするのも、手を動かして手芸をするのも大好な松岡さん。古着のセーターと余り布から作った人形で、子どもたちにしていたお話が本になった『なぞなぞのすきな女の子』など、大好きなことすべてが現在につながっていることを実感しました。まるで、みんなを楽しくするものを出してくれる、童話の「良い魔女」のようです。

ただし、お金は魔法のようには出てきません。松岡さんが創設者のひとりとなっている、東京子ども図書館は公的助成金がなく、出版や人材育成などの事業収入と、寄付やバザーの売り上げなどで活動しています。「良い魔女」の活躍を私たちも助けることができます。

「松岡享子さんと雪のブローチ」をご覧いただき、魔法の一端に触れてください。(担当:高野)

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白菜、大根……丸ごと買っても大丈夫!

2017年11月29日

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白菜、大根……丸ごと買っても大丈夫!
(91号「野菜を丸ごと使いきりたい」)

スーパーや八百屋で、いつも迷うことがあります。
それは、野菜を丸ごと買うべきか、はたまた1/2などカットされたものにするべきか……ということ。
もちろん前者のほうが新鮮でおいしいのですが、「今日も白菜、明日も白菜だと飽きるかな」という思いが脳裏をかすめ、あらかじめカットされたものを選ぶことが多くなっていました。
野菜が新鮮なうちに、飽きずに食べきるにはどうしたらいいのだろう。
そんな問いに対して、料理家のウー・ウェンさんはほがらかに笑いながら、
「わが家では、どんな野菜でもあっという間に食べきってしまいますよ! その秘訣は、切り方にあるんです」と話してくださいました。
白菜といえば鍋ばかりのわが家でしたが、ウーさんにレシピを教えていただいてからは、葉と軸に分けて、葉はセンイを断ってざく切りにして豆腐とともに蒸し煮にしたり、軸は細切りにして花椒(ホワジャオ)を効かせた炒めものにしたり、ぐんとレパートリーが増えました。
白菜のほかにも、大根やごぼう、長いもなど冬においしい野菜を通して、ウーさんの多彩な切り方とレシピをご紹介しています。切り方によってさまざまに変化する食感と味わいを、ぜひお楽しみください。(担当:井田)

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私にも、詠めるかも

2017年11月28日

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私にも、詠めるかも
(91号「奥村晃作さんのただごと歌」)

とつぜんですが、皆さん、「短歌」にはどんなイメージがありますか? 「高尚そう」? 「難しそう」? 「あれ、川柳や俳句となにが違うんだっけ」、なんて方も、いらっしゃるでしょうか。
なじみのない人にとっては、ちょっと遠いもののように感じられるかもしれませんが、歌人の奥村晃作さんは、「短歌は誰でも詠めるものですよ」と仰います。「人の心は常に動いています。大きな感動でなくても、小さな心でも、歌にすることはできるんですよ」。
現在81歳。奥村さんは、自分の作品を「ただごと歌」と呼び、身の周りにあるもの、日常に起きることを題材に、平易な言葉で短歌を作り続けています。本号の企画「奥村晃作さんのただごと歌」では、奥村さんに、短歌のおもしろさや奥深さ、ご自身の創作について伺いました。

ひとつ、ふたつ、奥村さんの作品を紹介してみましょうか。「ただごと歌」がどんなものか、お伝えするには、きっとそれが一番です。
まずは、私が大好きな歌を。

犬はいつもはつらつとしてよろこびにからだふるはす凄き生きもの

なんだか、とても可愛い歌だと思いませんか。ストレートな描写から、犬のさま(いつもニコニコしてこっちを見てる!)や手のひらに伝わる体温がまざまざと思い起こされますし、それを「凄き生きもの」として、奥村さんがいちもく置いている様子なのも、ほほえましく思えます。

 もう一首。

海に来てわれは驚くなぜかくも大量の水ここに在るのかと

いくつのときに詠んだ歌なのかは、わかりません。でも、もちろん、大人になってから詠んだ歌のはずなんです。なのに、子どもみたいに、まるきり新鮮に海を受け止めている。この歌に接して、私は、「短歌というのはこういうふうに、目を見開いて、世界に感動することからはじまるのかもしれないな」と思いました。

奥村さんのように、まっさらな目で日常を眺め、小さなことも心に留めて、それを伝わる言葉で表現できたなら。きっと、すてきですよね。
ということで、今回の企画では、皆さんからも短歌を募集することにしました。特集をお読みになって、奥村さんの世界を堪能したら、ぜひ、皆さんもご自身の「ただごと歌」を模索してみてください。お題や投稿のルールなど、詳細については誌面でご確認を。個性あふれる作品を、楽しみにお待ちしています。(担当:島崎)

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あなたはフランス料理を作ったことがありますか?

2017年11月27日

あなたはフランス料理を作ったことがありますか?
(91号「こんなフレンチ、知っていますか?」)

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あなたは、フランス料理を作ったことがありますか?
いやいや、それはレストランで食べるものでしょ……と思う気持ち、わかります。
私もまさに!そうでした。
でもそんな方にこそ、ぜひご紹介したいのがこのフレンチです。
教えてくださったのは、料理家の渡辺麻紀さんです。
渡辺さんは、フランス料理研究家・上野万梨子さんに師事後、料理学校の名門ル・コルドン・ブルーに勤務し、フランスとイタリアへ料理留学されました。
料理するのはもちろん、食べるのも大好きで、世界各国のおいしいものの話をして盛り上がると、勢い余って目の前の人をハグしてしまうような、朗らかなお人柄が魅力です。

「クラシックなフレンチといえば、数時間かけて肉や野菜を煮込んでフォン(ダシ)をとり、たっぷりのバターと生クリームを使って濃厚なソースで仕上げるもの。
でも、1970年代にヌーベル・キュイジーヌ(フランス語で、新しい料理の意)が提唱されると、調理時間は短縮され、あっさりと軽やかな味わいになりました。
そしてさらに、最近は、しょう油やみりん、海苔、麹など、和の食材を使って作る新しいフランス料理(言ってみれば、ヌーベル・ヌーベル・キュイジーヌ!)が、北欧やオーストラリア出身のシェフによって生み出され、世界各地で広がりを見せています」

「素材の組み合わせ方が新鮮で、個々の味が引き立ち、それもおいしい。
皿にアシンメトリーに盛りつけられた様子は、美しくて、心も華やぐのよ」

「絵を描くように盛りつけたら、料理って楽しいなあ……って、心の底から感じられると思う。肉じゃがを作れる人ならみんな作れる位、ほんとうに作りやすいレシピを提案して、毎日、家族のために料理してきた人に、作ってほしいな」

編集部一の田舎育ち、フレンチをいただいた経験もそう多くなく、作ったこともなかった私が、試作を重ね、わかりにくい箇所の書き方について、何度も先生にご相談して記事にまとめました。

試作した料理を盛りつけ、編集部のみんなに出して、「きれい!」「おいしい!」と言ってもらえたときの、うれしかったこと!
幾つになっても、「初めて」を経験するドキドキとワクワクは、いいものです。

4品から成るコースが、3時間かからずに、完成します。
この冬、ぜひとも腕を振るってお楽しみください。

※写真を撮影してくださったのは、長嶺輝明さんです。
お料理の美しさ、お皿に映るドラマチックな陰影も、ぜひぜひ堪能していただけたらうれしいです。
(担当・長谷川)

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港港に友のあり──編集長より最新号発売のご挨拶

2017年11月24日

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コンニチハ。
みなさんはどんな秋をお過ごしでしたか?
ぼくの秋は、京都、滋賀、徳島、高松、盛岡、三浦半島……と、公私ともどもけっこうあちこちしましたよ。
狭い日本ですが、タテには長いので、季節の変わり目はその違いが如実に出ます。
先日、京都で迎えた朝、めずらしく娘を小学校まで見送りがてら一緒に歩きました。娘はまだ手をつないでくれますが、友だちを見かけるとぱっと手を離す、小学5年生です。大きくなっちゃったなあ。
……なんて話はともかく、京都の寒い寒い早朝、凍えるような舗道には、イチョウの葉が今を盛りと真っ黄色に色づき、朝の陽光を浴びてきらきら輝いています。
一方で東京はというと、まだこれから。そう、東京の町が黄色く色づく盛りは12月なんですよね。

盛岡は、花森安治展があって9月の末に訪ねました。いつもはどこに行っても、呼び出すのが「その地の友人」というやつですが、盛岡の友は全員東京に出ているので、ああさびしく日帰りかあ……なんてがっかりしていたら、講演会に突然現れたのがIくん。もう10年ぶりくらいかなあ。以前ぼくが遊びで短歌会をやっていたときに知り合った仲間です。
なんだあ、今は盛岡なのかあ!「ちょっと太ったねえ」「サワダさんこそ」「講演後、飲みに行かへん?」「いいっすよー」
と、まことに軽いやりとりで、こういう感じ、ぼくは好きだ。
Iくんは、「12万キロ走った」という軽自動車で市内を案内してくれたあと、〈光原社〉にもつきあってくれ、さらに駅前の〈ぴょんぴょん舎〉へ。焼き肉と冷麺に、なつかしい友人という、うれしい夕べ。結局新幹線の終電近くまで相手をしてくれました。こういう展開、大好きです。
港港、町という町に友のあり、が人生の醍醐味であると、ぼくは信じて生きる者です。
先日はその盛岡の友から「雪でタイヤを履き替えました」なんて報告あり。ああそちらはもう冬なんだね!
友がいると、遠い町が近くなり、想像力、思いを馳せることができます。遥かな町の天気予報も他人事ではなくなるものですね。

さあまた新しい号の発売です。
『暮しの手帖』は、全国誌。港港、町という町の多くの書店に運ばれてゆきます。
その先の、会ったことのない読者のことを思い描きつつ、編集部員たちはいろいろな特集を編んでいるのです。今回は、やりたい企画が多かったので、一気に増頁、特大号としました。ボリュームのある一冊になったと思います。
ぜひお手にとってご覧ください。
週明けからしばらく、編集部員たちがそれぞれの担当頁の報告をさせていただきます。編集長は「面白いことを書くように」とだけ命じております。本欄をどうぞお楽しみに。
よい冬をお迎えください。

編集長・澤田康彦

終了・「空」の短歌を募集します。

2017年11月24日

◎たくさんのご応募ありがとうございました。
こちらの募集は終了いたしました。

みなさんも五・七・五・七・七に挑戦しませんか?
『暮しの手帖』91号(2017年11月25日発行)では、特集企画「奥村晃作さんの ただごと歌」を掲載しています。
このたび読者のみなさんに、「空」という字がはいった短歌(記事本文参照)、あるいは「自由題」の短歌を募集します。奥村さんと編集部で選考し、力作は2018年5月25日発行の『暮しの手帖』94号、および小社ウェブサイトでご紹介する予定です。

投稿方法
・無地のハガキ、またはEメールでお送りください。
ご投稿は一人何首でも結構ですが、ハガキの場合は一枚に四作品まで。
未発表の自作に限ります。特殊な読み方をする字には読みがなをつけてください。

・お名前(ペンネーム可、ただし本名も明記のこと)、住所、電話番号、
あればメールアドレスをお書き添えください。

・宛先
〒169-0074東京都新宿区北新宿1-35-20
暮しの手帖編集部 「短歌募集」係
Eメール tanka@kurashi-no-techo.co.jp

・締め切り
2018年1月31日(ハガキの場合は当日消印有効)

最新刊『わたしの暮らしのヒント集3』

2017年11月22日

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すてきなあの人、気になるこの人。魅力にあふれ、注目されている方は、何かしらの気づきや心がけている習慣をお持ちです。それが、「暮らしのヒント」です。毎日の暮らしをスムーズなものにし、心豊かに過ごすためのコツともいえる大切なものです。
おかげさまで、別冊『暮らしのヒント集』シリーズは、号を重ねるごとに、たいへん多くの読者の皆様にご購読いただいております。この3冊目も、既刊の2冊と同様に、このたび、長く、より多くの皆様にお読みいただけるように、単行本化しました。

この本にご登場いただいたのは、ヤエカのデザイナー井出恭子さん、料理家の大原千鶴さん、コスチューム・アーティストのひびのこづえさん、建築家の中村好文さん、画家の安野光雅さん、家事評論家の吉沢久子さん……。取材当時30代から90代まで7世代17人の方々にお話をうかがいました。
取材をお願いすると、みなさん最初は「ヒントになるようなことは特に何もしていないですよ」とおっしゃいます。でも、よくよくお話をお聞きすると、いくつもいくつも出てくるのです。ご自分では何気ない、毎日の当たり前のことでも、他人から見ると、「なるほど」とひざを打つ、感じ入ることばかりなのです。今日からすぐできる小さなアイデアから、奥深い生活信条まで。誌面の中から拾い上げて、あなたの暮らしに取り入れていただきたいヒントがたくさんありました。暮らしのようすを切り取ったたくさんの写真とともにご紹介しています。衣食住にわたる多彩で充実した内容の一冊です。

巻頭特集は、「有元葉子さんの『料理じょうず』になるヒント」。毎日、切れ目なく続いていく料理だからこそ、「書いてあるレシピ通り」に作るだけではなく、「自分のものにする」ことが大切。おいしい食卓をつくるには何が大切かを教えていただきました。
「岡尾美代子さんの靴とバッグ」は、人気スタイリストの岡尾さんならではの、ファッションだけではない、センスあふれるものの選び方、ものとの付き合い方をご紹介いただきました。

詳しい内容は、こちらをご覧ください。(担当:宇津木)

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考えることで、豊かに広がる

京都で考えた
『京都で考えた』 吉田篤弘 著 ミシマ社
1,500円+税 装釘 クラフト・エヴィング商會

 著者の吉田篤弘さんは、吉田浩美さんとともに「クラフト・エヴィング商會」としても、執筆やデザインなどをされている方。小誌でもかつて、「それからはスープのことばかり考えて暮らした」という、とてもすてきな小説を連載されていたので、ご存知の方も多いかもしれません。

 「『本当のこと』は面倒な手続きの先にしかなく、手っ取り早く済ませようとしたら、決して『本当のこと』はあらわれない」

 この本のなかで吉田さんは言います。いまは、知らないことや疑問があったら、インターネットでサクッと「答え」を知ることができます。でも、「答え」を知ってしまったら、もうあれこれ考えることはしない。この「あれこれ」がアイデアの元になるのに、その機会を逸してしまうことになると。面倒でも、自分で考える。そうしてしか得られない「本当のこと」を探すのです。そして、吉田さんにとって考える場は、京都です。
 京都って、たしかに多くの来訪者にとって、特別な場所かもしれません。単なる観光地ではない。鴨川が流れ、碁盤の目に整備された古い街。吉田さんは、古本屋や古レコード屋、古道具屋、喫茶店や洋食屋を訪れます。もちろん、直接的に本やレコードを探すためだけではない。そこで目にした古本の背表紙や古いレコードから、思考が始まり、思索のストーリーが繰り広げられる。創作のアイデアができるのです。百万遍や紫野、イノダコーヒー三条支店、大徳寺の松風など、ご自身が実際に訪れた場所を挙げながら、何を考え、その思考がどう広がっていったかをつまびらかにしていきます。そして、それらは、川の水が流れるようにスムーズにつながり、一冊として形をなしていきます。ちなみに、この本の見出しと目次のあり方はとてもユニークで、おもしろいアイデアが機能しています。街角には地名が表示されておらず、目次が地図になっている、といったイメージでしょうか。それもお楽しみにしてください。たしかに、流れるように読めるのです。

 物事をきちんと考えること、深く思考することって、得意な人と不得意な人がいると思います。頭の中を整理して、答えを追い詰めていくような作業は、けっこう骨の折れる仕事だったりします。正直私は、それほど得意ではありません。途中で、とっ散らかってしまうことしばしば。でも、吉田さんは、とても整理された思考を進めていきます。そして、「本当にそうか?」と、当たり前と決めつけられた答えや分かりやすい答えには飛びつかず、考えを進め、広げていきます。
 考えを広げるということは、ひとつの答えに縛られないということ。すなわち、自分の気持ちに自由な幅をもたらしてくれることでしょう。思考や想像の世界って、限りなく広いわけですから。
 この本に書かれているのは、そうして得られる豊かな想像の世界。それは、とても楽しい思考のプロセスです。そして、整然としながらやさしく語り掛けるような、吉田さんの書く作品がすてきな理由が垣間見られるのです。巻末には、うれしいおまけのように本編とつながる掌編小説もあります。(宇津木)

その情熱は伝播する

バッタを倒しにアフリカへ
『バッタを倒しにアフリカへ』 前野 ウルド 浩太郎 著
光文社 920円+税 装釘 アラン・チャン

 著者の前野 ウルド 浩太郎さんは、幼い頃に読んだ『ファーブル昆虫記』に魅せられ、自らも昆虫博士になるべく、虫の道に足を踏み入れた青年です。1980年生まれ、今年で37歳。「青年」と呼ぶにはちょっと年嵩過ぎるかもしれませんが、そう呼びたくなるくらい、若々しい情熱に溢れているのです。
 虫の研究をして博士号をとったはいいけれど、就職先にあぶれ、しかしこの道で生きる夢を捨てられずにいた前野さん。なにがしか、大きな研究成果を出して活路を見出そうと、2011年に単身、アフリカはモーリタニアに向かいます。前野さんが専門とするのはバッタ。かの地ではバッタが大量発生して農作物に深刻な被害をもたらしており、その対策を研究の対象にしようと考えたのです。
 慣れない土地、知らない言語、次々に出合うカルチャーショック。日々のハプニングを、やけくそのような明るさとユーモアで乗り越えてゆく前野さんですが、時には、将来(と目減りしていく研究資金)の不安が頭をもたげ、ホームシックになって心ふさぐこともあります。おまけに、モーリタニアに渡ったその年は、なんと、例を見ないくらいにバッタが不漁(?)の年であり、研究対象にも事欠く事態に陥って……。
 本書を読みながら、私は、2016年にノーベル医学・生理学賞を受賞した大隅良典さんの言葉を思い出していました。「『役に立つ』という言葉はとても社会をダメにしていると思っています」。これは、事業化を研究の第一目的としていては、学問がやせ細ってしまう、と懸念して仰った言葉です。
 果たして、前野さんはどうでしょう。将来のために成果を上げねばという野心こそあれど、「バッタが好きだ」「バッタについて知りたい」と燃えるその探究心はどこまでも純粋で、むしろ心配になってしまうほど。好きなものを求めて、猛進していく人の姿は、傍目にも面白い! その情熱は読む者にもいつしか伝播し、不思議な感動が湧いてくるのです。(島崎)


暮しの手帖社 今日の編集部