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十人十色の“まるとしかく”をご覧ください

2018年03月30日

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十人十色の“まるとしかく”をご覧ください
(93号「まるとしかくの作品がたくさん届きました」)
昨年発売の90号で、読者のみなさんから募った「かぎ針編みのまるとしかくをつなげて」のオリジナル作品を、いよいよ発表できることになりました。
どの作品も、驚くほどの熱意と愛が込められていて、編集部一同、じっくりとお手紙を読ませていただきました。
すべての作品をご紹介したかったのですが、誌面の都合で叶わなかったので、
誌面に載せられなかった作品の一部を、Facebookのアルバムでご紹介させていただくことになりました。
募集は終わりましたが、これからも、自分で発案し、手を動かして作ったものを愛用する喜びを、みな様に味わっていただけたらうれしいです。(担当:平田)

※本誌に掲載できなかった作品の一部はFacebookのアルバムでご覧いただけます。どうぞみなさま、アイデアをシェアしていただけましたら嬉しいです。
Facebookのアルバムはこちらのリンクよりご覧ください。

チーズっておいしい!

2018年03月29日

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チーズっておいしい!
(93号「チーズを味わうチーズケーキ」)

試作のチーズケーキを口にした途端、スタッフの目がまん丸になりました。
「なにこれ、おいしい!」
その顔は、わたしがカオリーヌ菓子店のチーズケーキを初めて食べたときと同じ顔でした。あまりのおいしさに、「これっ、どちらのものですか?」とすぐに出してくださった方にうかがったのでした。

カオリーヌ菓子店は、料理研究家のかのうかおりさんが主宰する、通信販売のみの菓子店です。普段販売されているのは、「バスクのチーズケーキ」と「ブルーチーズのチーズケーキ」。
チーズアドバイザーの資格を持つかのうさんは、「チーズのおいしさを伝えたくて」、チーズケーキを作り始めました。
販売されているケーキは、チーズの銘柄にもこだわって、チーズ以外の材料も各チーズに合わせた配合で熟考されているので、家庭でその味を出すことはかんたんではなさそうでした。

そこで無理を承知でおねがいしてみました。
「手に入りやすいチーズで、わっとおどろくようなおいしいチーズケーキを作れませんか」と。それも、「一度のふたつのチーズを味わえるケーキ」と注文までつけました。
かのうさんが、試作に試作を重ねて考案してくださったのが、今回ご紹介する5つのチーズケーキです。
ベースの生地にはクリームチーズを加え、そこに、カマンベール、ブルーチーズ、グリエール、ミモレット、パルミジャーノ・レッジャーノをそれぞれ加えます。いずれも個性的な味わいで、信じられないくらいおいしいのです。
使うチーズも、手に入りやすいお手頃な価格なものでOK。どちらかというと熟成の進んでいない若いチーズのほうが向いているそうなので、気負わずに作っていただけます。

しかも、作り方はとっても簡単。ボールで材料を順に混ぜたら、あとは型に流して焼くだけ。手を動かす時間は10分ほどでしょうか。
12cmの型を使った小さめサイズというのも、手土産にぴったり。それに冷凍保存(1ヵ月)もできるのです。こんないいことだらけのお菓子、ほかにあったでしょうか!
……と、鼻息あらくなってしまいましたが、それほどおすすめのチーズケーキです。
あ、そして、すべて「グルテンフリー」なんですよ。
(担当:小林)

平日も、かたまり肉を活用しよう!

2018年03月28日

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平日も、かたまり肉を活用しよう!
(93号「塩豚のおそうざい」)

この企画は、ひとりの編集部員の声から生まれました。
「ふだんは子どもに、うす切り肉やひき肉を使った料理ばかりを食べさせているけれど、
“かたまり肉”を使って、食べごたえがあり、手早くできるおかずを作ってあげたい」
そんな切実な願いを聞いたわたしは、
食べ盛りの男の子を持つ母である、料理家のワタナベマキさんにご相談しました。
「日常的に買うかたまり肉は、豚肉が多いですね。
塩をまぶして“塩豚”にしておくと、余計な手間をかけずに、
すぐにおいしいおかずができますよ」と心強いお言葉。
息子さんは、塩豚を切って焼いてご飯にのせただけのシンプルな丼が大好物、と聞いてうれしくなり、
「そういう、ふだんのレシピを教えてください!」とリクエストしました。
あれもこれも、と次々に出てくる豊富な料理のバリエーションの秘訣は、「切り方」にあり。
これから旬を迎える春野菜をたっぷり使った、
シンプルな主菜、副菜、主食など15品を教えていただきました。
今回のレシピをヒントに、冷蔵庫にある食材や、旬の食材と組み合わせて、
あなたらしく塩豚を活用いただけたら幸いです。(担当:平田)

春の洋裁に、エプロンはいかがですか

2018年03月27日

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春の洋裁に、エプロンはいかがですか
(93号「ワンピースみたいなエプロン」)

みなさんはエプロンを何枚お持ちですか?
私は3枚を使いまわしていますが、今号の洋裁企画「ワンピースみたいなエプロン」を監修していただいた柘植貴予(つげ・たかよ)さんは、エプロンが大好きで、数えきれないくらいのエプロンをお持ちだそうです。
さまざまなエプロンに触れてきた柘植さんならではの、使いやすく愛らしいエプロンの作り方を、特別に教えていただきました。

柘植さんが作るエプロンは、たっぷりのギャザーと細い紐がとてもかわいらしく、結び方によって3通りに着られます。
紐やベルトだけ布の色を変えたり、胸あてとスカート部分をバイカラーにしたりと、その組みあわせを選ぶ楽しさもあります。
作って楽しい、着て楽しい、普段着にもまといたいくらいすてきなエプロンです。
作り方はとてもシンプルですが、細部の処理がとても美しいのも柘植さんのエプロンの特徴です。そんな工夫も細かくご紹介しています。

このエプロン、販売なさっているのに、こんなに詳しく教えてくださって大丈夫…? と心配になるほど。でも柘植さんは、
「ひとりで作っているので、作れる数は限られてしまうのです。
ですから、みなさんがご自分の好みにあったものを作られて、いろいろなエプロンができあがったらうれしいです」と仰ってくださいました。
たくさんの方が柘植さんのエプロンをまとって、幸せな気持ちを感じてもらえたらと思います。(担当:小林)

イカの世界は深くて広い

2018年03月26日

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イカの世界は深くて広い
(93号「世界一周 イカ七変化」)

とつぜんですが、クイズです。日本人の食卓に、サケに次いで多く登場する海産物は、なんでしょう? 上記の企画タイトルにもその名がありますから、答えはもう、お分かりですね。そう、イカです。
日本人って、イカが好きなんですね。日本近海で1年中獲れますから、そういう意味でも身近な食材なのでしょう。
けれど、イカ料理のレパートリーって、案外と少なくありませんか?
定番は、「里いもとイカの煮っころがし」「イカのしょうが焼き」。あとは、「イカ納豆」「イカそうめん」? 「イカとっくり」……を日常的に作っている人は、あんまりいませんよね。
「私たちは、イカを好んで消費しているわりに、あんまり料理法を知らないでいるのではないか。イカをもっとおいしく食べたい。堪能したい!」。今回の企画は、そんな編集部員の深いイカ愛からスタートしました。
調べてみると、イカは意外にも、日本だけではなく世界中で消費されていることがわかりました。諸外国では、イカはどんなふうに食べられているのでしょう? 世界のイカ料理、知りたい! そう考えた私たちは、世界の料理にくわしい料理家・荻野恭子さんを訪ねました。
これまで50カ国以上の国に赴き、現地で家庭料理を学んできた荻野さん。編集部のリクエストに応えて、7カ国のイカ料理を教えてくださいました。
「イカの肉詰め煮」「イカのカリー」「イカのフリット」「イカのセビーチェ」「イカのパジョン」「イカとトマトのパスタ」「イカのスパイシー炒め」。それぞれどこの国のイカ料理か、おわかりになるでしょうか。ぜひ、誌面で確かめてみてくださいね。(担当:島崎)

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お腹だけでなく、心まで満たされる味わい

2018年03月24日

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お腹だけでなく、心まで満たされる味わい
(93号「しみじみおいしい和のお弁当」)
「凛として美しい、和のお弁当をつくる人がいる」
そんな噂を聞きつけ、おいしいものに目がない副編集長が、撮影のお昼休憩にスタッフみんなで食べるお弁当を依頼したことが、料理人の後藤しおりさんとの出会いでした。
多いときは、一日に100個以上のお弁当をつくるという後藤さん。
それなのに、そのお弁当をひとたび口にすると、まるでお母さんが自分のためにつくってくれたかのような、なんともほっとする味わいが、心に深く残りました。
特に、しっとり柔らかな玉子焼き、そして、野菜の甘味を含んだおから炊きのおいしかったこと……!
後日、その感動をご本人に伝えると、後藤さんはこの2つのおかずをお弁当の「軸」だと考えていらっしゃること、そして、そういったおかずをていねいにつくることが、特別なおいしさにつながるのだと教えてくださいました。
誌面では、そんな玉子焼きやおから炊きを詰めた「きほんのお弁当」のほか、さっとゆでた青菜をたっぷり混ぜ込んだ「菜飯弁当」、滋味深いおいしさが詰まった「おにぎり弁当」、そして見た目も美しい「行楽弁当」など、4つのお弁当のレシピをご紹介しています。
食べ終えると、お腹だけでなく、心までもが満たされる。
そんな後藤しおりさんの和のお弁当を、ぜひつくってみていただけたらと思います。(担当:井田)

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はるのうた はるのごう

2018年03月23日

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はるのうた はるのごう
──サワダ編集長より最新号発売のご挨拶

10年ほど前、娘が生まれて、なりゆきで主夫をやっていた頃。
父として以前に、親として何をすればよいか、何もわからず、おろおろあたふたの連続で、さしあたってしていたことと言えば、おむつのとりかえと、何か食べさせること、そして寝かしつけることでした。
0歳のときも1歳も2歳も3歳も……なかなか寝つかない、義母が言うには「目がかたい子」だった娘とふとんで、不器用なとうさんはただ歌っていましたっけ。
思い出すと、春の歌が多かったなあ。
明るい感じがよろしいのと、どっか眠たくなる要素があるんだよね。そしてこっちも眠くなる。
12月、冬生まれの娘だったから、誕生日のあとに、じわじわとめぐってくる新しい春の陽ざしがとてもうれしかった、そんな記憶が濃く残っています。

「どこかでは〜るぅが」「はるはなのみの かぜのさむさや」「は〜るよこい は〜やくこい」「は〜るのおがわは」「は〜るがきた は〜るがきた」「さいた さいた チューリップのはなが」「は〜るのうら〜ら〜の」「なないろのたにをこえて〜」「なのは〜なばたけ〜に」「あわきひかりたつ に〜わかあめ」
(みなさんはそれぞれの正式タイトル、言えますか? 答えはうしろに)

「つぎはあれ、うたって!」なんて、ぼくのへたくそな歌を次々聴きたがってくれるのは、世界で娘ひとりだったことでしょう。
彼女は今は11歳で、もうそんなことは言ってくれないから、あれはとても貴重な日々だったと思います。
こないだ寝るときには、4歳の弟に、彼女が「は〜るよこい」って歌ってやっていましたっけ。なんか、うれしくって、にやにやしちゃいましたよ。

って、すみません。わたくしごとの、前置きが長くなりました。
まためぐってきた、春!
最新の『暮しの手帖』春号をお届けします。
仲條正義さんの表紙絵がこんなに明るいのは、例年以上に寒く厳しかったこの冬のせいでしょうか? 鮮やかな黄色のカバーの一冊、ぜひ店頭でお手にとってごらんください。
巻頭のお弁当特集から、ワンピースみたいなエプロン、塩豚料理、イカ料理……たっぷりの「げんきの元」を用意しました。
今日からしばらく、編集部員たちの報告がはじまります。
どうぞお楽しみに。
どなたさまにも、よい春のたよりが舞いこみますように。

編集長・澤田康彦

答●「どこかで春が」(作詞:百田宗治/作曲:草川信)●「早春賦」(作詞:吉丸一昌/作曲:中田章)●「春よ来い」(作詞:相馬御風/作曲:弘田龍太郎)●「春の小川」(作詞:高野辰之/作曲:岡野貞一)●「春が来た」(作詞:高野辰之/作曲:岡野貞一)●「チューリップ」(作詞:近藤宮子/作曲:井上武士)●「花」(作詞:武島羽衣/作曲:滝廉太郎)●「花の街」(作詞:江間章子/作曲:團伊久磨)●「朧月夜」(作詞:高野辰之/作曲:岡野貞一)●「春よ、来い」(作詞・作曲:松任谷由実)

かけがえのない人生って?

『光の犬』
『光の犬』 松家仁之 著 新潮社 2,000円+税 装釘 新潮社装幀室

 年始めの旅行中、この長編小説を電車で読んでいたら、涙している自分に気づき、あわててゴシゴシと目元をこすりました。しずかな語り口による、深閑とした物語の運びに身をゆだねるうち、最後になるにつれて、ひどく気持ちが昂ってしまったのです。
 明治から現代までの100年にわたる時間のなかで、北海道に根ざしたある家族と、彼らを取りかこむ人びとの人生を描いた小説です。彼らはみな、この世に生を受け、さまざまな性格の持ち主に育ち、ある人は、老い衰えて自分を失くして命を終え、ある人は、若くしてバッサリと生を断たれ……と、ひとしく死んでゆきます。
 なんて端的にまとめると、味気なく、退屈に思われるかもしれませんが、これがじつに滋味深いのです。なぜなのでしょう?

 たとえば、助産婦である祖母に取り上げられて生まれ、聡明でやさしい少女に育つ、添島歩の物語。彼女は思春期になると、牧師の息子であり、母を亡くしている同級生の少年、工藤一惟と恋に落ちます。たがいに必要とし、理解しあっていても、かたく抱きしめあっても、なぜか埋められない空洞がある二人。
 やがて二人の道は分かれますが、天文学者となった歩は、30代前半で難病に侵されていることがわかります。病床についた歩が、牧師となった一惟に手紙で託した、最期の願いとは――。
 私たちは、思春期の彼女が、名づけられない、名づけたくない強い感情にとらわれて、愛犬とともに涙を流している場面を見ています。天文学者となって、宇宙の星々を観察する日々を送りながら、「どうして自分がいまここにこうしているのか」を考える姿も見ています。だからこそ、彼女が生をまっとうする姿に、強く強く胸をしめつけられる。まるで、自分や、自分の身近な人の人生を目の当たりにするかのように。
 そして、一惟には牧師となるまでの人生の物語があり、祖母の添島よねには助産婦となるまでの、歩の弟の添島始には北海道に帰るまでの物語が、暮らしの手ざわりや体温、家族どうしの軋轢などをまじえて描かれます。そこに私たちは目を凝らし、かけがえのない人生とは、自分の人生とは何なのだろうと、ふかぶかと考えたくなるのです。

ああ、小説を読むことは、自分以外の誰かの人生を体験することなんだなあ。最後の頁から目を上げたとき、そんなことをあらためて思いました。ひと口では語れそうになく、しばらくは整理せずにおいておきたい――そんな感情が、胸に熱くじんわりとひろがって――それは、すばらしい体験でした。(北川)

美しい編み地はこだわりから生まれる

『美しい編み地はこだわりから生まれる』
『今日も編み地、明日も編み地――風工房の編み物スタイル』
風工房 服田洋子 著 グラフィック社
1,500円+税 装釘 関 宙明 (mr. universe)

1972年から編み物を仕事にしているニットデザイナー、風工房こと服田洋子(はったようこ)さんの初エッセイ集です。風工房の作品は、色合わせ、表編み裏編みによる凹凸模様ともにお洒落で、見るたびに魅了されます。これまでに風工房単独の作品集だけでも28冊出ています。
この本は、「1章 風工房ができるまで」「2章 デザインすること、編むこと」「3章 編み物でつながる旅と人」の3つに分かれています。
1章では、服田さんが自分の着たい服に(あるいは、着たくない服に)こだわりがあり、母親が小学校の入学式用に編んだセーターが気に入らず、「私の服は作らなくていい」といい続けて育った話が出てきます。現在なら、好みの服を買ってもらえば済むのですが、昭和30年ごろはまだ既製服が少なかった時代。32年生まれの私でも、商店が少ない土地だったこともあり、小学校入学前の写真では、ほとんど母が縫ったり編んだりした服を身に着けています。その頃は、子どもが服を自分の好きなように整えるのには、強い意志があったのだと思います。
そんな服田さんは10歳くらいからエプロンを、高校生からはスカートなどの洋服を作るようになります。ニットのウエアを初めて編んだのは高校生。外国の雑誌を見て好きなものを探し、本を読んでは作り方を試行錯誤して、お洒落な服を独学で作っていきます。美大を中退し、編み物が仕事になり、京都に移り住み、ペルーで編み物指導をするといった様々な経験も、いつも自らが決断して行動。書名の通り、ご自身の意志のままに突っ走ってきた様が淡々とした文体でつづられています。
他の2つの章では、世界の伝統的な編み物を訪ねる旅行記や、編み物をする上での配色のヒント、愛用の道具、出来栄えをアップするちょっとした工夫に加えて、作品4点の編み方と編み図も掲載されています。
編み物好きの方が読まれれば、発見が多いのはもちろんですが、いつもと同じ日常に疲れを感じている方は、服田さんの生き方に、背中を叩いてはっぱをかけられる思いがするでしょう。昨年の秋、風工房のワークショップに参加しました。服田さんは、クールで自然体、とても魅力的な方でした。(高野)

最新刊『暮しの手帖のおべんとうのおかず196』

2018年03月09日

おべんとう196

春といえば、お花見? ピクニック?
あたたかな陽気に誘われて、お弁当を持って、外で過ごすのが心地よい季節です。
そして、春は新学期、新生活もスタートします。
「春からは、お弁当作りを続けるぞ、始めるぞ」
そう意気込む人は、少なくないでしょう。
とはいえ、「おかずがマンネリ化しがち」「献立を考えるのにひと苦労」と、お弁当作りへの悩みは次々と出てきます。

そんなお弁当作りが楽しくなるレシピやアイデアを集めて刊行した別冊『おべんとうのおかず196』(2014年)を、内容はそのままで単行本化しました。

料理は、瀬尾幸子さんに「多彩な定番おかず」、脇雅世さんに「作り置きおかず」、そして松田美智子さんに「カロリーオフおかず」と、家庭料理に定評のある3人の料理家に、合わせて196品のレシピをご提案いただきました。
多種多彩なレシピを「メインおかず」「サブおかず」「付け合わせ」に分けて単品ごとに紹介。また、料理の素材からおかずを選べるように、「素材別さくいん」があるなど、お弁当作りのさまざまなニーズに合わせて、ご活用いただける内容になっています。

お弁当作りに気負わず取り組める一冊として、ぜひ書店でお手にとってご覧ください。
詳しい内容は、下記のリンクより。(担当:矢野)
https://www.kurashi-no-techo.co.jp/books/b_1181.html

価値観に風穴をあけてくれる存在

『パリのすてきなおじさん』
『パリのすてきなおじさん』 金井真紀 文と絵 広岡裕児 案内
柏書房 1,600円+税 装釘 寄藤文平 + 吉田考宏(文平銀座)

 パリには一度も行ったことがなく、当分その当てもない私ですが、ぱらぱらと本をめくると鮮やかで粋な「おじさん」のイラストが満載。それだけでも空想のパリ気分が味わえます。言い方はちょっと失礼かもしれないけれど、まるでおじさんカタログのようです。もくじを開くと、ざっくりとしたおじさんの分類によって構成されています。おしゃれ、アート、おいしい、あそぶ、はたらく、いまを生きるといった具合です。好みのイラストやそれぞれのおじさんの名言から選んで読むこともできます。
 気になる「おじさん」は何人もいますが、さて、どなたにしよう? 相当に迷いますがお一人だけ、大衆紙『パリジャン』の記者ニコラ・ジャカールさんをご紹介します。
 彼は、スイス国境近くのジュラ地方の生まれです。農村で育ち、おじいちゃんやお父さんから自然との調和や勤労精神、質素倹約といった農民的な価値観を教えられました。政治学を学んだあと、25歳で『パリジャン』の記者になります。『パリジャン』は地域密着型で、足を使った取材記事が売り。ニコラさんは難民をテーマにアルジェリアやギリシャへ行ったかと思えば、明日にはパリ市長にインタビューと、いろいろな現場を飛び回ってきました。なかでもニコラさんに大きな影響を与えたのが、2010年1月にカリブ海沿岸で起きたハイチ大地震でした。いち早く現地入りした彼は、取材に奔走します。「死体がゴミみたいに道に置き去りにされている。そのとなりに生きている人もゴミみたいにうずくまっている」。この光景を目の当たりにして、ニコラさんの仕事観や人生観は一変します。「細かいことにくよくよせず、いまを生きるしかない」そう思えるようになったのです。
 「ケツを振らなくても、まっすぐ歩ける」とはニコラさんのおじいちゃんやお父さんからの教え。「地に足をつけて生きろ」に近い意味なのだとか。力強いですね。
 この本の冒頭に、伊丹十三の言葉が引用されています。
 「少年である僕がいるとする。僕は両親が押しつけてくる価値観や物の考え方に閉じこめられている。(中略)ある日ふらっとやってきて、両親の価値観に風穴をあけてくれる存在、それがおじさんなんです」
 パリの街角は、多様なルーツからくる人種、言語、宗教、食も含めた文化が複雑に混ざり合っているのだと、おじさんたちの人生観に触れて分かってきました。風穴をあけてくれる味わい深いおじさんたちは、きっとこのパリ社会の風通しにも一役買っているに違いありません。
 頁と頁の合間には、案内役としてフリージャーナリスト・広岡裕児さんの<アルジェリアとフランス><フランスのイスラム教徒><移民・難民・そして子どもたち>などの解説文があって、その多様さを理解する大きな助けになりました。
 ところで、この本、おじさんの多様性を表現できたらとデザインにも工夫がなされていて、おじさん違いの帯が四種類もあり、選ぶのに迷います。ちなみに私は「食べるためにピアノを弾き、悲しみを癒すために絵を描く」イヴ・ロージンさんでした。(上野)

お弁当のよろこびを再確認

『あゆみ食堂のお弁当』
『あゆみ食堂のお弁当』 大塩あゆ美 著
文化出版局 1,500円+税 装釘 装釘 TAKAIYAMA inc.

みんなにごはんを作って、ワイワイと食べることが大好きな、「あゆみ食堂」の大塩あゆ美さん。真っ直ぐな瞳がまぶしい、チャーミングな方です。あゆみさんの彩りゆたかなおいしいごはんを食べると、元気がむくむく湧いてきます。
そんなあゆみさんが「自分の大切なお弁当の記憶をたどろう」と始めたプロジェクトが1冊の本になりました。
「あなたがお弁当を作りたい人は誰ですか?」
と募集を始めると、その問いかけに全国から200通以上のお便りが集まりました。そのお便りへのお返事が、あゆみさんが考えた23コのお弁当です。
社会人1年生の娘へ、新幹線通勤する妻へ、部活に励む息子へ、育児を頑張る娘のパートナーへ……。23コのお弁当とともに、23通りの物語があります。相手を思う気持ちがやさしくてまぶしくて、思わず目頭が熱くなります。
誰かのためのお弁当は、やっぱり食べてくれる人のことを考えながら作るもの。でも、毎日作っていると大変すぎて、そんな気持ちも薄らいでしまいがち。この本のあたたかいエピソードを読むと、作り始めたころの気持ちなんかを、思い出せるかもしれません。
もちろんそれぞれのお弁当のレシピはどれも秀逸。お弁当をあけた瞬間の、うれしそうな笑顔が目に浮かびました。(小林)


暮しの手帖社 今日の編集部