1. ホーム
  2. > Blog手帖通信

・低気圧の影響による定期購読配達遅延のお知らせ

2021年01月20日

日頃より『暮しの手帖』をご愛読いただきまして、誠にありがとうございます。
                                                                
1月25日発売の『暮しの手帖』10号の定期購読につきまして、
降雪の影響により、一部エリアで到着が遅延する可能性がございます。
詳しくは「日本郵便ホームページ」をご覧ください。
https://www.post.japanpost.jp/newsrelease/
※新しい情報は、上記「日本郵便ホームページ」内「お知らせ」欄に掲示される「低気圧の影響について」にて、随時更新されます。
※ご不明な点は、暮しの手帖社 03-5259-6008 までお問い合わせ下さい。

あらかじめ、ご理解、ご容赦賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

寒さ厳しき折から、どうかご自愛の上お過ごし下さい。

・新型コロナウイルス感染症に対する緊急事態宣言を受けまして

2021年01月12日

新型コロナウイルス感染症に対する緊急事態宣言再発出により、
当社はシフト勤務態勢を実施しております。

従いまして、時間帯によりましては、電話に応対できないことがございます。
みなさまにはご不便、ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解をいただけますようお願い申し上げます。

なお、出版物に関する緊急のお問い合わせにつきましては、
下記メールアドレスか、ファックス番号でも対応させていただきます。

メール:eigyo2@kurashi-no-techo.co.jp
ファックス:03-5259-6004

ご用件とご連絡先(お名前・電話番号・FAX番号・メールアドレス)をご記入いただきましたら、
いずれかの方法にて、こちらから折り返しご連絡さしあげます。
少々お時間を要する場合もございますが、どうぞご了承ください。

暮しの手帖だよりVol.24 winter 2020-21

2020年12月30日

dayori23

絵 きくちちき

身体をいたわり、心にしみいる、
「冬の贈り物」のような一冊を。
そんな思いを込めて編んだ、
特大号をお届けします。

文・北川史織(『暮しの手帖』編集長)

 

このところ、気温がぐっと下がったせいでしょうか、街のあちこちで燃えるような紅葉を目にします。土地によっては、もう初雪を見たという方もいらっしゃるかもしれませんね。
最新号の表紙は、降りしきる雪の中を踊るように駆け回る、3頭の鹿が描かれています。作者は、絵本作家のきくちちきさん。2012年にデビューしてから20冊以上の絵本を手がけ、19年の秋には、武蔵野市立吉祥寺美術館で「きくちちき絵本展 しろとくろ」が催されました。私も伺いましたが、のびやかな線で紙いっぱいに描かれた動物たちの絵を、子どもも大人も魅入られたように見つめていました。一人で静かに、目を輝かせて観ている女性が多いのも印象的でした。
会場には、ちきさんがご自身で製本された、いわゆる「手製本」も何冊か展示されていました。やわらかそうな紙に描かれた、優しい色合いの小さな絵本。手に取ることはできませんでしたが、めくってみたいなあと見つめました。

 

*

 

それから1カ月後、5号の記事「ぼくらが家について考えたこと」の取材で、ちきさんを訪ねました。アトリエはお住まいの2階にあり、机の前の大きな窓には、里山の風景がゆったりと広がっています。絵を描くとき、ちきさんは机に紙を置き、立って筆を走らせるそうです。
取材をひと通り終えた頃、一緒にいた編集部の上野さんが、「ちきさん、よろしかったら、あの手製本を見せていただけませんか?」と頼みました。彼女もやっぱり、あの絵本が気になっていたんですね。4冊ほど拝見したなかで、私たちがたいへん心惹かれたのが、『しろいみつばち』という作品でした。
物語の舞台は、さまざまな虫や花々が息づく原っぱ。主人公の「みつばち」と「のばな」は仲良しですが、あるとき、のばなはみつばちにこう言うのです。「みつばちは いいわね わたしは どこへもいけない」。そして、自分の真っ赤な花びらに飽きてしまった、純白になりたいと話します。みつばちは、その願いをかなえたくて、思いをめぐらせる。すると、季節はずれの雪が降ってきて……。
9号は、この『しろいみつばち』を綴じ込みの特別付録とした特大号です。と言っても、手製本をそっくり掲載したのではなく、ちきさんが物語を練り直し、まったく違ったタッチの絵で描き下ろしてくださいました。
制作の打ち合わせを始めたのは、3月初旬。私たちはすでにマスク姿でした。世の中の状況はめまぐるしく変わって、編集部も4月から在宅勤務を始めたのですが、家に閉じこもって孤独に仕事をする日々、ちきさんから届く生命力あふれる絵には、ずいぶんと心をなぐさめられました。物語を貫くのは、誰かを真っ直ぐに想う優しさと、せつなさ。ぜひ、じっくりとお読みください。

 

**

 

せっかくなので、今回はちきさんに、制作についてお話を伺いました。
——この物語はどのように着想したのでしょうか?
 「あるとき、自転車に乗って近所へ出かけたら、顔の横を何匹かの雪虫が飛んでいきました。その瞬間、〈雪の降るなか虫が飛んでいくような絵〉がふわっと見えて、雪とみつばちの物語を描こうと思いました。物語を想像していると、のばなも自然と登場しました」
——絵本に寄せるメッセージを、ぜひ。
 「この絵本は、何気ない日常からふと浮かんだものですが、現実にはあり得ない物語です。なぜ思いついたのか不思議でしたが、いま思うと、北海道で育ったぼくが雪の降らない遠い土地で暮らすなか、雪虫を見た瞬間、懐かしさと安心感のようなものを覚えたのかもしれません。みつばちと自分を重ねて、雪のなかで喜びを感じたかったのでしょうか。でも、ちょっと悲しいお話でもあるので、その頃、さびしかったんでしょうかね……。みなさんには、温もりや優しさを少しでも感じていただけたら嬉しいです」

 

***

 

この一年、おそらく多くのみなさんが、不安や孤独、胸苦しさを感じながら、息を詰めるようにして過ごしてきたのではないでしょうか。最新号は、ちきさんが絵本に寄せた想いのように、温もりや優しさ、いたわりを込めた記事をそろえました。一部をご紹介します。
○蒸籠を使ってみませんか?
身体に優しい蒸し料理のご提案です。朝夕と蒸籠を活用している料理家のワタナベマキさんに、手間なく失敗なく、2品を同時に熱々で仕上げる「献立術」を教わりました。満足感のある主菜のほか、スープなどの副菜、常備菜まで。台所を汚さず、洗い物も少なくて済む蒸籠は、忙しい人にこそおすすめの道具です。選び方や使い方のコツも解説しています。
○3皿のご馳走
「フランスでは、前菜、主菜、デザートの3皿が献立の基本で、それは特別な日も同じ。品数より大切なのは、心ゆくまでおしゃべりして、楽しい時間を過ごすことなんです」。そう語る料理家の上田淳子さんに、気張らずにつくれる前菜、主菜を計7種教わりました。デザートは無理をせず、お店で求めてはいかがでしょう。お好みの料理で3皿のコースを組み立て、大切な人とお楽しみください。
○ぬくもりのアイピロー
在宅ワークで目や肩が疲れたとき、このアイピローで温めると、心までほっとほぐれるのを感じます。中身は小豆とラベンダー。電子レンジで温めて使い、カバーを外して洗えるつくりです。手縫いでも3時間あればつくれますので、まずは自分用に、そして贈り物にもどうぞ。
○贈り物をすてきに包めたら
ハンカチや手袋、お菓子やワインなど。贈る相手の顔を思い浮かべながら、自分の手で心を込めて包んだら、気持ちがぐっと伝わります。身近な素材を生かして遊び心をプラスした、さりげなく洒落たラッピングを丁寧にお伝えします。 
○愛しめでたし、張り子の正月飾り
張り子は、新聞紙と和紙、油粘土などを材料に、誰でも手軽につくることができます。ご紹介するのは、干支の丑、富士山、招き猫、だるまといった縁起物の張り子。大掃除を終えたら、しめ縄に飾りつけて、来る年に福を招きましょう。

 

****

 

変わらぬ日常がありがたく、愛おしい。そうしみじみと感じる一年でした。私たちが編んだ「冬の贈り物」の一冊をめくりながら、心からくつろいでお過ごしいただけたらうれしいです。みなさんに、穏やかな年末年始が訪れますように。

 

下記の見開きページの画像をクリックすると、拡大画面でご覧いただけます。

 

◎リーフレット「暮しの手帖だより」は、一部書店店頭にて配布しています。
印刷される場合は、下記のトンボ付きPDFをダウンロードし、A3で両面カラー印刷されると四つ折りリーフレットが作れます。

・暮しの手帖だよりVol.24 PDFをダウンロード

暮しの手帖だよりVol.23 autumn 2020

2020年12月29日

dayori23

絵 nakaban

不安の多い日々だからこそ、
自分の手を動かし、工夫して、
小さな希望を見いだしてみたい。
そんな思いを込めた一冊です。

文・北川史織(『暮しの手帖』編集長)

 

このところ、朝晩はひんやりとした風が心地よく、酷暑に耐えてきた身体がほっと緩むようです。お元気でお過ごしでしょうか?
この季節になると、私は決まって「しずこさん」のことを思い出します。しずこさんとは、暮しの手帖社の創業者で、長らく社長を務めた大橋鎭子のこと。私たち社員はみな、「鎭子さん」と呼んでいました。2016年のNHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」では、彼女と『暮しの手帖』が物語のモチーフになりましたから、「ああ、あの人か」と、主演の高畑充希さんのはつらつとした姿を思い浮かべる方もいらっしゃるでしょう。
実際の鎭子さんも、在りし日は元気はつらつ、そしてなかなかに華のある人でした。1946年の創業時、彼女はまだ26歳。その頃の写真を見ると、たいていは大きく口を開けた笑顔で、目がきらっきらとしています。ウエストをきゅっとしぼったワンピース姿のことが多く、颯爽としてお洒落。ああ、なるほど、この若さと目力、「当たって砕けろ」の精神でもって、身ひとつで会社を起こし、川端康成や元皇族から原稿をいただいたりして目玉記事をつくったんだな……と、妙に納得してしまうのです。
私が入社したのは10年前のいま時分で、まず驚いたのが、当時90歳だった鎭子さんが出社していることでした。その頃の社屋は小さな3階建てのビルで、鎭子さんのいる顧問室は1階、編集部は3階。エレベーターはなく、外階段がついているだけなのですが、彼女は毎朝10時くらいになると、その外階段をローヒールの靴でカツカツと上ってきて編集部に顔を出すのです。
「ねえ、何か面白いことはない?」がお決まりのセリフ。「雑誌のためになる、面白い企画を考えなさいよ」って、みなにはっぱをかけているわけですね。
私がお弁当のおかずにポークソテーなどを入れていくと、お肉好きの鎭子さんに、「あら、おいしそうね。あなた、お料理が好き?」と話しかけられたこともありました。そんなとき、その目はやっぱりキラキラしている。いまでも、ちょっと低めのあの声が耳によみがえることがあります。

 

*

 

考えてみれば、今年は鎭子さんの生誕100年にあたる年。そして9月は、『暮しの手帖』の創刊月でもあります。そこでこの秋号では、以前からひそかに温めていた企画を実現することにしました。題して、「しずこさんの家を訪ねて」。
生涯独身だった鎭子さんですが、母や妹2人との絆は強く、晩年までずっと一つ屋根の下で暮らしていました。同じく独身だった末妹の芳子さんはもちろん、結婚して2人の子どもを授かった長妹の晴子さんも一緒です。8人がともに暮らした住まいは、玄関、リビング・ダイニング、キッチンと、いずれもゆったりとしていて、古き良き時代の大家族の家そのものです。
鎭子さんの家づくりは、戦後間もなく建てた、小さなバラックみたいな平屋から始まりました。やがて、『暮しの手帖』の撮影スタジオを兼ねた家がほしいと、建築家の清水一さんに設計を依頼して、1953年に二階屋に建て替えます。さらに5年後の1958年、大掛かりに改築して完成したのがいまの家です。
今回の記事では、建築家の中村好文さんと、施工に携わった元棟梁の阿部好男さんに取材にご協力いただき、間取りから垣間見える家族の関係性や、建設中のエピソードなどを盛り込みつつ、鎭子さんが家づくりに寄せた夢や希望、家族への思いをひも解きました。

 

**

 

見どころの一つは、約8畳の広々としたキッチン。本誌の23回にわたる連載「キッチンの研究」の集大成としてつくられたこのキッチンは、細やかな収納の工夫や、無駄のない作業スペースなど、いまでも十分参考になるつくりです。
取材で伝わってきたのは、鎭子さんのいい意味での「公私混同ぶり」。わが家をスタジオとして活用し、連載の集大成としてのキッチンをこしらえ、誌面で紹介する。ああ、鎭子さんは『暮しの手帖』が大好きだったんだな。そして、一生涯、一所懸命だったんだ。そう思ったら、胸がじんわり熱くなりました。
「ねえ、何か面白いことはない?」
あの声が聞こえた気がして、日々いろいろあるけれども、私たちも元気を出して頑張らなきゃと思った次第です。

 

***

 

それでは、最新号の記事から、いくつかを選りすぐってご紹介します。
○どんなときも、絵本を開けば
東京・原宿、ビルの地下街にある「シーモアグラス」は、絵本を愛する店主の坂本織衣さんが24年前にオープンした小さな喫茶店です。開店からコロナ禍の現在まで、坂本さんの心を照らしてきた4冊の絵本について、ご本人に綴っていただきました。あなたの人生のかたわらにも、そんな絵本はありますか?
○献立練習帖
料理をおいしくつくる以上に、「献立」をととのえるのは、なんてむずかしいのか。そんな声をよく聞きます。味つけがかぶらないようにする、箸が進むように彩りよく、育ち盛りの子どもも満足するボリュームに……。今回ご指導してくださった大原千鶴さんは、「毎日完ぺきを目指さなくていい。ほどほどでいいんですよ」と話します。では、いったいどんな点を押さえれば、「ほどほど」でも満足のゆく献立になるのでしょう? 大原さんの「献立例」には、参考になるコツがいくつも盛り込まれています。どうぞ実際にお試しください。
○秋のちいさな甘いもの
秋の夜長、食後にもう少しおしゃべりして過ごしたい。そんなときにぴったりな、旬の果物やドライフルーツを使った手軽なデザートをご紹介します。「ぶどうのキャラメリゼ」「紅玉のオーブン焼き」「干し柿の山椒ホワイトチョコ」など、全6種。つくりたての、ほんのり温かな状態で味わいます。果物の香りと風味がふんわりと広がりますよ。
○からだと病気のABC「新型コロナウイルスの感染リスクと不安を減らそう」
連載を8頁に拡大し、新型コロナウイルスの感染予防策を中心にわかりやすくまとめました。予防ワクチンも特効薬もまだ生み出されていない現在は、予防策を日々の習慣にし、不確かな情報に飛びつかないのが一番です。世の中に流布する、「これが効く」といった情報についてもコラムで解説しています。
○紙と布のフォトフレームづくり
写真を飾りたいけれど、しっくりくるフレームと出合えないなら、手づくりしてみてはいかがでしょう。主な材料は、厚紙(色紙)、はぎれ(または包装紙など)、木工用ボンド。使う道具はカッターくらいと手軽ですが、なんとも洒落たデザインのフレームが出来上がります。お気に入りのはぎれがたくさんある、という方、ぜひお試しください。

 

****

 

いまの私たちは、先の見えない不安があり、それぞれに胸苦しさを感じつつ、それでも懸命に日々を歩んでいるように思えます。この号は何か、そんな暮らしにごく小さな希望を灯せるような内容にできたら……と思って、読み物や手づくりの記事をそろえました。暮らしというのは、地味で地道なことのくり返しですが、自分の手を動かして工夫することで、思いがけないほどの喜びや幸せを感じることができる。そしてそれは胸のうちを明るく照らしてくれる。そう思うのです。
夏の疲れが知らず知らず出てくる季節です。どうぞみなさま、心身をいたわりながら、実りの秋をじっくりと味わってお過ごしください。

 

下記の見開きページの画像をクリックすると、拡大画面でご覧いただけます。

 

◎リーフレット「暮しの手帖だより」は、一部書店店頭にて配布しています。
印刷される場合は、下記のトンボ付きPDFをダウンロードし、A3で両面カラー印刷されると四つ折りリーフレットが作れます。

・暮しの手帖だよりVol.23 PDFをダウンロード

年末に、来し方行く末を思う

2020年12月27日

_DSC7500

9月下旬に刊行した『いつもいいことさがし3』。小児科医、細谷亮太先生が『暮しの手帖』に1997年から昨年まで23年連載したエッセイから、後半8年の50編中37篇を選りすぐってまとめたもので、63〜71歳の思いが綴られています。
細谷先生は、臨床の現場を第一に、医師になりたての頃は不治の病であった小児がんの8割が完治するようになった現在まで、子どもたちに病気を告知し、一緒に病気と闘ってきました。
そんな先生も、年齢を重ねるにつれて、後輩を育てる仕事や、病を抱えた子どもたちと家族の居場所をつくる仕事などが増えてきました。医師に限らず、誰しも、若いころと仕事の仕方や内容が変わってくる時期がやってきます。
連載当初から担当をしていた私も、63歳になりました。入社してからずっと、この編集部で過ごしてきましたが、40年以上の間には、手書きがワープロ、パソコンへの入力になり、電卓、手書きのグラフからエクセルへ。編集部内でしていたレイアウトもデザイナーに依頼し、写真はフィルムからデジタルになりました。若いときには想像もしなかったことが、待っていると実感しています。でも、やってきたことの中には応用できるものもあるはず、人間は一人一人違い、得意不得意がある、助け合っていくことができるはず、そう考えて日々過ごしています。
本書の一節
——亡くなっていった子ども達、その家族が私に教えてくれたことはいっぱいあります。その一番目は、人生で大切なものは絶対に金銭や経済ではないのだということ。次に、その人が生きる上で拠り所としていたもの、子どもならばお母さんやお父さんの存在、おとなならばその人なりの哲学や思想の他に、宗教がとても大きな力を持つのだということ。そして人は生きてきたように死ぬのだということの三つです。——
宗教は、キリスト教や仏教、イスラム教などに限らず、何か祈りたくなる大きなもの、いつも見ていてくれると感じるものでありそうです。
コロナ禍で自宅にいる期間が増えた今、自らの来し方行く末や、拠り所となる大切なもののことを『いつもいいことさがし3』とともに、ゆっくり考えてみませんか。(担当:高野)

対話が暮らしを変えていく【『わが家の家事シェア』3章 いつだって、関係は変えられる。】

2020年12月26日

P120_DSC7838

暮しの手帖別冊『わが家の家事シェア』から、「3章 いつだって、関係は変えられる。」をご紹介します。
この章では、長年の勤めを終えて退職したり、病気を患ったり……、あることがきっかけで家事のバランスを見直した2つの家庭を取材しました。

1つ目の家庭は、山中とみこさん(66歳・服飾デザイナー)と山中利充さん(72歳・元会社員)。
利充さんは団塊世代の猛烈サラリーマンで、長年、一切の家事を妻に任せて働きました。一時期は月の残業が180時間を超え、「ほとんど家にいなかった」といいます。とみこさんは、専業主婦としてふたりの男児の子育てと家事をしていました。それでも「いつかは好きな仕事に就きたい」という気持ちを持ち続け、40代の終わり頃、少しずつ、洋服のデザインを始めました。それぞれの役割に懸命だった夫婦には、夫が家事をするという考えはありませんでした。ところが、利充さんが定年を迎える頃から、とみこさんの仕事が忙しくなり、夫は家に、妻は仕事に——とライフスタイルが逆転。自分の茶碗を洗うことから、1つずつ家事バランスを見直したというエピソードをご紹介します。

2つ目の家庭は柏木美紀子さん(73歳・主婦)と柏木 博さん(74歳・デザイン評論家)。
博さんは3年前に大学を定年退職後、妻に任せてきた家事に自然に関わるようになりました。「ルールを決めすぎると、家庭ではなくて工場のようになってしまう。その都度、想像力を働かせて手を動かせばいい」と博さん。そう考えた理由を、自身の病気と関連付けて話してくださいました。
「これから自由時間が増えるなと思っていた矢先、僕にがんが見つかりました。抗がん剤治療の副作用で足の痺れや冷えが今も続いています。その痛みは誰にもわかりようがないんです。誰かと衝突するのはたいがい、なぜ相手はわかってくれないのか、と思うから。でも、わかりあえないことっていくらでもあるし、何でもわかってもらえると思うのはわがままだ、ということを覚えておかないと。わからないことを前提に、相手の気持ちや立場を『読み取る』想像力を働かせるんです」。

家事分担の在り方のみならず、「人と共に生きるってどういうこと?」ということを考えさせられるエピソードが満載の本です。
年末年始、ぜひこの本を読みながら、あなたの家庭のこれまでとこれからについて話してみていただけたら嬉しいです。
(担当:長谷川)

この本詳細は下記のリンクよりご覧いただけます。
https://www.kurashi-no-techo.co.jp/life-style_survey_report/

今年もありがとうございました

2020年12月25日

アイピロー_2027
9号でご紹介した「ぬくもりのアイピロー」を、記事を担当した平田さんがプレゼントしてくれました。
仕事の合い間や寝る前のひととき、目のまわりやお腹を温めると、なんともほっとします。
平田さんは、遠くに暮らすお母さんにも贈ったのだそうです。

 

こんにちは、編集長の北川です。
年末もいよいよ押し迫ってきましたが、いかがお過ごしでしょうか。
今年を振り返ると、取材・撮影ができずに途方に暮れた時期もありましたが、そのぶん、人と会って話ができること、仕事ができることのありがたみを、しみじみと感じた一年でした。
在宅ワークの合間に出社すると、励ましの言葉が綴られたアンケートはがきやお便りが届いていて、
「ああ、こうして確かに受け止めてくれる人がいらっしゃるんだ」
と、胸にあたたかく灯りがともるようです。
いつもお読みになって支えてくださるみなさま、本当に、ありがとうございました。

弊社は、26日より来年1月4日まで、冬季休暇をいただきます。
同僚たちに休暇のプランを聞くと、
「今年は帰省するのを控えようと思う」
と悲しげな顔をする人もいて、なんとも言えない気持ちになります。
でも、そうして切ないほどに会いたい人がいるということは、
もしかしたら、とても幸せなことなのかもしれませんね。
来年も、何気ない暮らしのよろこびを、しっかりと深く味わえますように。
どうかみなさま、心穏やかな年末年始をお過ごしください。

『暮しの手帖』編集長 北川史織

・神戸ゆかりの美術館「花森安治『暮しの手帖』の絵と神戸」展開幕

2020年12月20日

『暮しの手帖』初代編集長である花森安治の展示が、12月19日に神戸ゆかりの美術館で開幕しました。花森が描いた『暮しの手帖』の表紙原画を、関西で初めてお目にかける展覧会です。
神戸・大阪にまつわる記事や、当地ゆかりの作家の直筆原稿も多数ご紹介しています。
これまでの展示とはまた違う切り口から、花森安治と『暮しの手帖』の活動に迫る、見ごたえある展覧会です。
お近くの方は、ぜひお運びください。

花森安治『暮しの手帖』の絵と神戸
会期:2020年12月19日(土)〜2021年3月14日(日)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は開館)、12月28日〜1月4日、1月12日
会場:神戸ゆかりの美術館
詳細は、下記の神戸ゆかりの美術館公式サイトにてご確認ください。
https://www.city.kobe.lg.jp/a45010/kanko/bunka/bunkashisetsu/yukarimuseum/tenrankai/index.html

神戸ゆかりの美術館「花森安治『暮しの手帖』の絵と神戸」展開幕

2020年12月20日

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

『暮しの手帖』初代編集長の花森安治の展示が、12月19日に神戸ゆかりの美術館で開幕しました。花森が描いた『暮しの手帖』の表紙原画を、関西で初めてお目にかける展覧会です。
神戸は花森が生まれ育った街でもあり、開放的な港町の気風や、旧居留地から入る外国文化は花森の美的感覚に大きな影響を与えています。

表紙原画の他に、花森が編集長だった当時の『暮しの手帖』より「日本紀行 神戸」、「ある日本人の暮し 特攻くずれ」(いずれも近刊『花森安治選集2』に収録)などの神戸・大阪にまつわる記事や、当地ゆかりの作家の直筆原稿も多数ご紹介しています。
これまでの展示とはまた違う切り口から、花森安治と『暮しの手帖』の活動に迫る、見ごたえある展覧会です。

会期は3月14日まで。館内のショップでは、暮しの手帖社の書籍や、花森関連グッズも販売しています。お近くの方は、ぜひお運びください。(担当:会田)

花森安治『暮しの手帖』の絵と神戸
会期:2020年12月19日(土)〜2021年3月14日(日)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は開館)、12月28日〜1月4日、1月12日
会場:神戸ゆかりの美術館

詳細は、下記の神戸ゆかりの美術館公式サイトにてご確認ください。
https://www.city.kobe.lg.jp/a45010/kanko/bunka/bunkashisetsu/yukarimuseum/tenrankai/index.html

◎展示の様子は内覧会にて特別に許可をいただき撮影しています。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
会場となっている神戸ゆかりの美術館は透過する光が美しい『暮しの手帖』表紙の壁面展示(記念撮影可)

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
花森が脚本を手がけた宝塚歌劇の舞台資料

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
中央は花森が使っていた机

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
表紙原画展示風景

対話が暮らしを変えていく

2020年12月18日

P058_DSC7819

対話が暮らしを変えていく【『わが家の家事シェア』2章 一緒に居る、それぞれが生きる。】

暮しの手帖別冊『わが家の家事シェア』から、
「2章 一緒に居る、それぞれが生きる。」をご紹介します。
この章では、共に暮らして十年以上、暮らしの呼吸は合ってきた一方、仕事の責任は増してきて……という3つの家庭の仕事と暮らしのいい関係を取材しました。

たとえば、齊藤直子さん(47歳・社会学者)と岸政彦さん(53歳・社会学者)。おふたりはそれぞれ大阪市立大学と立命館大学大学院で教育に携わり、齊藤さんは部落問題や家族社会学、岸さんは生活史や沖縄の研究に向き合う忙しい日々を送ります。
「本人にとって合理的な理由があれば、家事をしないことも家事になる——」「人はみな、ひとりで生きる術を持てるといい」という岸さん。パートナーと暮らす人だけでなく、シングルマザー、一人暮らしの人、さまざまな形態で暮らす方にもぜひ読んでいただきたい内容です。

さらに、木村草太さん(40歳・憲法学者)とパートナー(42歳・一般事務)。木村さんは、平等原則、差別されない権利、子どもの権利などについて研究し、発信しています。
「僕は、もしも家事や育児を全くしなかったとして、そのうえで実現できる仕事の量や質が、自分の本当の実力だとは思いません。家事や育児をまずやって、残った時間の中で効率的に行った家事こそ、自分の実力です」という木村さん。どんなきっかけで、そう考え、実際にどう働き方や家事への関わり方を変えたのか? ワーク・ライフバランスに悩む人にも、ぜひ読んでいただきたい内容です。

この本で取材した家庭は、どのご家族も今現在、試行錯誤の最中で、変わることに前向きです。理想形として仰ぎ見るのではなく、友人の話を聞くように読み、数々のエピソードからあなたの暮らしに役立つヒントを見つけていただけたらと思います。
(担当:長谷川)

P046_DSC7813

この本の特設ページは下記のリンクよりご覧いただけます。
https://www.kurashi-no-techo.co.jp/life-style_survey_report/

対話が暮らしを変えていく【『わが家の家事シェア』1章 心地よい暮らしの形を模索中。】

2020年12月12日

P010_DSC7771

暮しの手帖別冊『わが家の家事シェア』から、「1章 心地よい暮らしの形を模索中。」をご紹介します。

この章では、共に暮らして数年、今まさに人と共同して生活することの面白さと難しさを実感する3つの家庭を取材しました。

たとえば、清田志織さん(36歳)と清田隆之さん(40歳)の家事シェア事情。
志織さんは、翻訳エージェントです。隆之さんは、朝日新聞で連載『悩みのるつぼ』で読者相談の回答者として活躍されているほか、『さよなら、俺たち』などの著作で、社会のなかで無意識に醸成されてきた「男らしさ」「女らしさ」に潜む違和感、ジェンダー(社会的的・文化的にに作られた性別)の問題について発信している文筆家。おふたりは昨年、双子のお子さんを家庭に迎え、子育てを始めました。今は、子どもたちの要求に向き合っていると一日が暮れていく……、仕事は子どもたちが寝ている合間に……という忙しい日々を送ります。
ふたりは、家事と育児を、お互いの状況や何となく漂う「そろそろ感」を察知して、「できるほうができるときに」バランスをとってやっているといいます。
実は一緒に暮らす前、互いに家事経験がほとんどなかったというふたり。どうして、互いに能動的に支え合うことができるようになったのでしょうか?
それぞれが家事の大切さを自覚するようなきっかけや、日々の対話の重ね方、互いの価値観の違いをすり合わせる様子を聞きました。

1章では隆之さん・志織さんのほか、『暮しの手帖』本誌連載「よっちぼっち 家族四人の四つの人生」でおなじみの写真家・齋藤陽道さんと盛山まなみさんのご家庭、著作に『夫婦ってなんだ?』がある文筆家・トミヤマユキコさんとミュージシャン・オカモトMOBYタクヤさんのご家庭も取材しています。

とある家庭のエピソードは、他人から見れば、どこかユーモラス。
でもきっとこの本を読み終える頃には、あなた自身が、あなたの家庭の家事と暮らしについて話したり考えたりしたくなる、そんな1冊です。
(担当:長谷川)

P016_DSC7774

P018_DSC7776

※この本の詳細は下記の特設サイトをご覧ください。
アンケート結果のまとめもご覧いただけます。
https://www.kurashi-no-techo.co.jp/life-style_survey_report/

12月10日、暮しの手帖別冊『わが家の家事シェア』が発売になります。

2020年12月10日

G表紙_DSC7760

今年、私たちは「家で過ごすということ」について深く考えました。
そして「人と人との、心地よい距離」についても——。

私がこの本を作りたいと考えたのは、世の中がこんなふうになるなんて、想像もしていなかった2019年の夏のこと。前年に双子を出産し、1年間の育児休業から復職したばかりのころでした。
自分が納得する仕事をしたい。家をさっぱりと整えたい。子どもたちの成長に寄り添いたい。
そんな理想を持ちながら、現実には能力も時間も足りず、眠る時間を削ることでなんとか帳尻を合わせるような日々です。仕事、家事の効率を上げようと必死になりながら、一方で家人に対してはモヤモヤとしたものを抱えていました。
なぜ私だけが……。どうやったら一緒に家事を工夫していけるの? というか、世の人たちはどうしているんだろう?

2020年2月〜5月、小社WEBと誌上で「家事シェアに関する意識調査アンケート」を実施しました。回答してくださったのは784名の皆さんです。
緊急事態宣言下で家族が家で過ごす時間が長くなり、家事負担が増えたことを嘆く声、新たな家事バランスを模索する様子がうかがえる回答があるなかで、(詳しい結果は本日より、小社WEBサイトの特設ページで公開しますので、ぜひご覧いただきたいのですが)深く考えさせられたのは、「(現状の)家事バランスを変えたい」と考える人が75%いること、そして、それなのに、家事バランスを変えるために「話し合わない(話し合えない)」という人が50%、という結果でした。
家事の方法論より、むしろコミュニケーションの工夫に課題があるのかもしれない……。
私たちは家事の工夫だけでなく、互いの考えを伝え合い、すり合わせていく過程にまで踏み込んで、取材することにしました。

「1章 心地よい暮らしの形を模索中。」では、共に暮らして数年、今まさに人と共同して生活することの面白さと難しさを実感する3つの家庭を、
「2章 一緒に居る、それぞれが生きる。」では、共に暮らして十年以上、暮らしの呼吸は合ってきた一方、仕事の責任は増してきて……という3つの家庭を、
「3章 いつだって、関係は変えられる。」では、長年の勤めを終えて退職したり、病気を患ったり……。あることがきっかけで家事のバランスを見直した2つの家庭を取材しました。
共通していたのは、それぞれがよく話し、深い納得感を持って家事を担っていること。全ての家事が均等に分担されているわけではないし、日々、そのバランスは揺らぎますが、互いの暮らしを大切にしようと、何度も話し合い、試行錯誤しています。

対話が暮らしを変えていく。
そんな実感にあふれたエピソードの数々が、あなたの家庭の家事シェアを後押しし、家事を楽しくするヒントになればと思います。(担当 長谷川)

※この本の目次は下記のリンクよりご覧いただけます。
https://www.kurashi-no-techo.co.jp/bessatsu/e_2102.html

※特設ページは下記リンクよりご覧いただけます。
https://www.kurashi-no-techo.co.jp/life-style_survey_report/


暮しの手帖社 今日の編集部