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5つのコツで、お店のような焼き加減に

2022年11月28日

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5つのコツで、お店のような焼き加減に
(21号「ビストロ仕立てのステーキフリットはいかが?」)

「ステーキ・フリット」は、牛赤身肉のステーキにたっぷりのフリット(フライドポテト)を添えた、フレンチビストロの定番メニューです。
「ステーキ」というと、高級な肉を使って特別な日に……というイメージもありますが、東京・人形町のビストロのオーナーシェフ、島田哲也さんいわく、「ステーキフリットはフランスでは日常的に食べる国民食だから、使うのは手頃な肉で充分。コツさえ押さえればおいしく焼けますよ」。そんな島田シェフに、5つのコツを教えてもらいました。

撮影のあと、近所のスーパーで100gあたり499円の「国産牛もも肉ステーキ用」を購入。サーロインやリブロースなどの部位と比べて安く、国産牛でも手に取りやすい値段ですね。これまで自分でステーキを焼くと、火通りが気になって焼き過ぎてしまい、かたくなる……という残念な結末が多かったのですが、今回は違いました。表面はきれいな焦げ目、中はミディアムの焼き加減という最高のステーキが完成! フリットもカラッと揚がって、お店で食べるような大満足のひと皿ができました。 
島田シェフ直伝のコツはどれも簡単なのですが、実践すると「なるほど!」と思うことばかり。詳細は、ぜひ誌面でご確認ください。

あわせて、牛肉とは少し違うコツのあるポークソテーの焼き方もご紹介しています。こちらも、驚くほど柔らかくジューシーに仕上がりますので、ぜひお試しください。混ぜるだけのマスタードソースと、香ばしいごまナッツソースも絶品ですよ。(担当:田村)

思い通りにいかなくたって

2022年11月25日

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思い通りにいかなくたって
――編集長より、最新号発売のご挨拶

このところ、ベッドに入って眠ろうとすると、飼い猫が懐のあたりにするっともぐり込んできます。ぬくぬくと温かくて、ああ、幸せ。私はこれを「懐猫の季節」と呼んでいるのですが、つまりそれだけ寒くなってきたということですね。お元気でお過ごしでしょうか?
考えてみると、この猫(名前はア太郎と言います)がわが家にやってきたのは2年近く前で、9号の記事「看取りのために、飼い主ができること」がきっかけでした。監修してくださった獣医師の髙橋聡美先生の動物病院がわが家からほど近く、「近所で保護された子猫がいる」とご紹介いただいたのでした。「かわいそうな猫がいるならば、引き取ろうか」という、なんというか、いま思えば上から目線な気持ちで譲り受けたのですが、いざ一緒に暮らしてみると、愉快だったりハラハラさせられたりで、仕事に追われる一人の暮らしにおおいに起伏が生まれました。
こちらが世話をしているようでいて、じつは、いろんなものを受け取っている。そういうことは、人と動物の関係性にかかわらず、この世界にいろいろあるのだろうなあ……そんなことを考えます。
前置きが長くなりました、ごめんなさい。
今号の表紙は、香川在住の画家・山口一郎さんによる「Hello,Goodbye」。この絵が編集部に届いて開封したとき、まわりにいた人たちから歓声が上がりました。
「かわいい!」「スカーフにしたい!」
雪の降る夜、さまざまな人や動物、雪男のような親子たちなどが行き交っています。雪だるまが先導する4人組は、『アビイ・ロード』のビートルズでは?(「裸足のポールがいるから、間違いない」とコメントする人あり) ひと仕事終えたサンタがトナカイと連れ立って歩き、ツリーや門松が運ばれて、杖をついたおしゃれなカップルは手をつないで歩いている。
じっと見ると、いろんな発見があって、心がぽかぽか温もってくるよう。私はこの表紙の校正紙を、自宅の壁に飾っています。「どうか、よい年末年始を過ごせますように」。今号には、そんな思いを込めた記事を揃えました。

「年末年始、わが家の逸品」は、「この季節になると決まって食卓にのぼり、そして家族がよろこぶ料理があったものだなあ」と思い出して企画しました(ちなみに、水戸にあるわが実家のそれは「あんこう鍋」でした)。料理家の方が腕を振るう「逸品」のほか、スタイリストの高橋みどりさん、作家の小川糸さんがエッセイとレシピをお寄せくださいました。どれも意外なほどやさしく作れますので、ふだんの食卓にもぜひどうぞ。
「おじいちゃんのお菓子と型」は、明治生まれのある男性が愛用した、お菓子の型から始まる物語。お孫さんから「おじいちゃんのお菓子」の記憶を取材し、残された型からお菓子を再現した、たいへんな労作です。こちらのレシピはクリスマスにおすすめです。

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「わたしの手帖」にこのたびご登場くださったのは、画家のささめやゆきさん。絵本や本の挿画で目にするささめやさんの絵は、なんとも言えない郷愁と感傷を誘われ、ほんの少し官能的でもあって、いったいどんな方なのだろう? と想像をめぐらせていました。一緒に本づくりをされたことのある翻訳家の伏見操さんにご紹介いただき、いざ、鎌倉の丘の上に建つご自宅へ。ささめやさんはウッドデッキに腰を下ろして、チャリティー企画に出すという「招き猫」に絵を描いておられました。
大学を卒業後、大手出版社で臨時社員をしていたという、ささめやさん。「臨時」と言っても文学全集を編み、たっぷり残業もして、正社員となんら変わらない仕事をしているのに、待遇はまったく違う。それに異議を唱える労働争議にかかわると、会社から肩たたきにあい、辞めることになります。わずかな退職金を手に、パリへ、ニューヨークへ。放浪暮らしのなか、まったくの独学で絵を描き、画家として歩み始めたのでした。
「できないってことは、べつにマイナスじゃない」とささめやさんはおっしゃいます。描きたいもの、描くべきものが見えているわけではなく、描いては考え、間違えたら、そこからまた考えて描いて……としているうちに、思いもよらない面白い絵ができている。間違いは、神様からの贈りものなんだ。
お話を聞くうちに、それは絵だけのことではなく、ささめやさんの人生全般に通じる話なのだと思えてきました。できなくてもいい、間違えてもいい。思い通りにいかなくたって、それはそれでいい。
アトリエでの取材中、妻のあやさんが大きなお盆を持って現れ、ハーブティーとパンを出してくださいました。このパンが、いい香りで、もちっとした食感で、とてもおいしい。聞けば、あるお寺の和尚さんから譲り受けた天然酵母を使って、ささめやさんが焼き続けているとのこと。ハーブティーは庭のハーブをブレンドしたもの、服や帽子はあやさんのお手製、家の土壁や窓ガラスもDIYで。そんな調子で、手を動かす暮らしがしっくりと身についているお二人なのでした。
ほんとうの豊かさとは、満足して生きるとは、どういうことなのだろう。ささめやさんにお会いしてから、そんなことを時折考えます。年末が近くなると、この一年の出来事をおのずと振り返りますし、同時に、これから先のことにも自然に思いが向いていくものですね。
「わたしの手帖」のほかにも、今号は心を動かされる読み物が充実しています。料理を作ったり、編み物をしたりするあいまに、どうぞゆっくりとお楽しみください。あすから、記事を担当した編集部員が一つずつ内容をご紹介します。

最後に。ちょっと早いのですが、今年も『暮しの手帖』をお読みくださり、ほんとうにありがとうございます。広告のない『暮しの手帖』は、購読料のみで支えられていますが、来秋には創刊75周年を迎えます。そのことに社員一同が驚き、奇跡のようだと感じ、そして深い感謝の気持ちをおぼえています。来年も、こころざしを持ち、精いっぱいに、暮らしに寄り添う誌面づくりを続けていきたいと考えています。
どうかみなさま、心身を休めながら、よい年末年始をお過ごしくださいませ。

◎昨年の冬号でご好評いただいた付録カレンダー、今年も同じサイズで制作しました。題して、「ちいさな物語カレンダー」。
画家の植田真さんの描き下ろしの絵が12カ月分、少年とキツネが登場し、めくるたびに物語が浮かびます。最後のページには、物語を締めくくるような美しい絵がいっぱいに。どうぞお楽しみください。

『暮しの手帖』編集長 北川史織

・イギリス・フランス・ドイツ宛ての定期購読発送について 重要なお知らせ

2022年11月24日

日頃より『暮しの手帖』をご愛読いただきまして、誠にありがとうございます。

このたびのウクライナ情勢の影響から、現在、イギリス・フランス・ドイツ宛ての「印刷物」航空便の引き受けが停止されております。

2022年3月以降、種別を「印刷物」から「定形外郵便」に変更し、送料の差額は小社負担にて、発送を続けてまいりました。11月25日発行の『暮しの手帖』5世紀21号(2022年12月-2023年1月号)にはカレンダーの特別付録が入り、封筒を含む重量が500gを超えております。「定形外郵便」の規定では、「1㎏まで」の送料が「500gまで」のおよそ倍の2060円になることから、情勢が戻るまでの間、発送を保留にさせていただくことといたしました。

さっそくの発送をご希望の方には、送料の差額として1000円をご負担いただきましたら、「定形外郵便」にて21号をお送りいたします。
詳細は営業部(teiki@kurashi-no-techo.co.jp)までお問い合わせください。

お届けが遅れますこと、心よりお詫び申し上げます。
どうかご理解いただけますよう、お願いいたします。

下ごしらえで、時間がおいしくしてくれるのです

2022年10月26日

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「料理上手」ってどんなイメージでしょう。たとえば、仕事から帰って台所に立ち、冷蔵庫から材料を選び出して、さっと2、3品の料理を作ってしまう。そういう方なら、この本は必要ないかもしれませんね。でも、誰もがそうはいきません。
いま発売中の『新装保存版 これで よゆうの晩ごはん』は、朝に「かんたん下ごしらえ」をしておくことで、夕方にはパパッと手早くごはんが作れるという、忙しい毎日に役立つ料理の提案です。
でも、それは単に「簡単・時短」という料理ではないのです。
この本を作るときに一番大切にしたのは、下ごしらえで「よりいっそうおいしくなる」ということ。夕飯時にさっと作れるシンプルな料理は世にいくつもあるでしょう。でもやっぱり「手早く、そしておいしく」という両立って意外にむずかしいものですよね。
5人の料理家の先生に教えていただいたのは、朝に下ごしらえしておくことで、夕方までの「時間がおいしくしてくれる」レシピです。
材料をマリネしておく、下味をつけて重ねておく、混ぜておく。そうすることで、材料に味がよくしみ込んだり、肉や魚は柔らかくなったり、ジューシーに仕上がったり。それが一番の要点。この本の主菜レシピにはすべて、「下ごしらえでおいしくなる理由」が載っています。必ずよりいっそうおいしく仕上がるのです。また、すでに適切に味つけしてあるから、失敗せずに味が決まる! それは大きなポイントですね。(担当:宇津木)

切り方を少し変えるだけで

2022年10月11日

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切り方を少し変えるだけで
(20号「爪のケアのおさらい」)

私は長いこと、自分の爪に自信がありませんでした。小さくて丸い、いわゆる「貝爪」で、乾燥しやすく、いつもカサカサ。でも爪の形は一生変わらないのだし、仕方ないよねと、半ばあきらめていました。

この企画は、当初は「自宅でできる大人のネイルアート」を取り上げようと考えていました。でも周りに話を聞いていくうちに、まずその手前の「日々の爪のケア」で悩んでいる人が多いと気づいたのです。そこで、男女問わず、ためになる日々のケアを紹介しようと方向転換したのでした。

教えていただいたのは、爪を美しく育てるためのケアを専門にされている、ネイリストの寺木智子さん。
「爪を切る時にやすりではなくて、爪切りを使ってもいいの?」
「足の親指の爪が巻き爪になりがち。予防できる切り方は?」
など、小さな、でも大切な疑問に答えていただきました。
(実際に、巻き爪で困っていた私の家族も、切り方を変えたら痛みがなくなったようです)

自信のなかった自分の爪も、ケアを変えたら少し形が変わってきたような……。爪のケアは日々のコツコツとした積み重ねで、確実に変わると実感しました。毎日視界に入る手の爪がきれいになると、気分も少し上がります。難しいことはありませんから、ぜひ試してみてください。(担当:小林)

気軽に編めるマフラーをおしゃれのポイントに

2022年10月07日

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気軽に編めるマフラーをおしゃれのポイントに
(20号「橋本靖代さん 色を楽しむマフラーのおしゃれ」)

日に日に肌寒くなり、秋冬のおしゃれを楽しめる季節がやってきました。

「おしゃれとは、おでかけのために気合いを入れることだけではありません。
家で過ごす日でも、自分自身が気分よくいられるためのものだと思っています」
そう話すのは、eleven 2ndデザイナーの橋本靖代さんです。

橋本さんのinstagramを拝見すると、シンプルなニットやパンツに、マフラーなどを合わせたコーディネイトがとてもすてきで、ベーシックカラーとポイントカラーのバランスが絶妙です。
「センスのいい人は、自然にできるからいいよね」と思われるかもしれませんが、
実は橋本さん、何度も何度も服の組み合わせを試して、納得いくバランスを探しているんです。

そこで今号では、橋本さんに、着こなしにおける色合わせのヒントと、おしゃれのポイントになるマフラーの編み方を教わりました。

マフラーは、3本取りの毛糸と太めの針でざっくりと編みます。
試作では、橋本さんと同じく、ローズレッド、ベージュ、ホワイトの毛糸をミックスして編んでみました。
シンプルな編み地でぐんぐんと編み進められ、糸の色合わせがかわいいので編んでいて楽しい!
ミックスカラーだと編み目が目立ちにくいので、少しくらい編み目が揃っていなくても気になりません。
選ぶ色糸によって雰囲気が変わるので、次に編むときは糸選びから楽しんでみようと思います。

編み物初心者の方はもちろん、久しぶりに何か編んでみようかという方にとっても、とてもおすすめですよ。(担当:平田)

●橋本さんセレクトの「『気軽に編めて、さっと巻けるマフラー』キット」の予約販売が行われています。
10月15日(土)まで予約を受け付けておられるので、詳しくはギャラリーfèveのホームページをご覧ください。
また、10月29日(土)東京・吉祥寺のギャラリーfèveにて、橋本さんのサロンが開催予定です。
橋本さんが編んだマフラーをご覧いただきながら、配色のご相談などをお受けします。
ニットの販売も少しですが予定しています。(予約不要・12時から18時まで)

そこにしかない風景を求めて

2022年10月06日

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そこにしかない風景を求めて
(20号「描きたくなる旅 富山編」)

絵を描き、時に文章を書き、ふらっと旅に出る。
そんな画家の牧野伊三夫さんから、「秋に行われる催しの準備を兼ねて、富山の友人に会いに行くんです」と聞き、一緒に新幹線で富山へ向かったのは、6月半ばのことでした。

牧野さんの旅は、いっぷう変わっています。旅先では必ず友人を訪ね、銭湯でひと風呂浴びてから、友人行きつけの店で飲んで食べて、おおいに語らう。
もちろん絵も描くのですが、何を描くかは決めていません。
心動かされる風景に出合うと、たとえ人が行き交う広場の真ん中でも、お店の前の通りでも、スケッチブックと絵の具を広げ、筆を走らせます。

牧野さんは、富山のどんなところに惹かれ、どんなものを描きたいと感じるのか。
以前から、富山の人と土地の魅力を牧野さんから聞いてはいたものの、地元の飲食店や銭湯、紙漉きの工房や酒蔵などを巡るうちに、ここにしかない「何か」が見えてきました。

記事の1ページ目にある少し変わったカレーも、今回の旅の目的のひとつ。
一体どんなカレーなのか、ぜひ本編を楽しんでいただけたらと思います。(担当:井田)

おいしいものには手が掛かる

2022年10月05日

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おいしいものには手が掛かる
(20号「チーズの保存手帖」)

専門店でおいしいナチュラルチーズを手に入れても、しばらく自宅の冷蔵庫で保存するうちに、風味が抜けて、パサついてしまった——。
そんな残念な体験談を編集部内で聞きました。
食品、輸入品の価格が高騰するなか、チーズもそのあおりを受けています。
せっかく買い求めたのだから、最後までおいしくいただきたい。
このような思いから、今回の企画を立ち上げました。

教えてくださったのは、全国で展開する専門店「チーズ王国」の宮田さつきさん。
「発酵食品であるチーズは常に変化しています。保存にはちょっとした気配りが必要」と宮田さんはおっしゃいます。
チーズには主に、白カビ、青カビ、ハード、セミハード、シェーヴル、ウォッシュなどの異なるタイプがあります。それぞれのタイプに共通する保存方法もあれば、異なるものもあり、まずは違いを理解することから始まるのだそうです。

そうして詳しい保存方法を学ぶうち、おいしいものを食べるには、少しだけ手間が掛かり、またその手間もなかなか楽しいものであることに気づかされます。
チーズは大きければ大きいほど劣化しにくいとのこと。この機会にぜひ、普段よりも少し大きめのサイズを購入してみませんか。上手に保存しながらじっくりと味わう。
これが本当の贅沢なのだなと感じます。(担当:中村)

苦悩をくぐりぬけた明るさ

2022年10月04日

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苦悩をくぐりぬけた明るさ
(20号「鈴木信太郎とその仕事」)

鈴木信太郎という名を聞いて、あなたは何を思い浮かべますか。
美術に興味がおありなら、きっとすぐに、あの独特な童画風のタッチで描かれた、愛らしい洋画を思うことでしょう。
もし東京や長崎にお住まいの方なら、絵画よりもむしろ、こけし屋、マッターホーン、長崎銘菓クルスといった、彼が手がけた商品パッケージの方に親しんでおられるかもしれませんね。
では、その彼が、本の装釘、挿絵の世界でもすぐれた作品を残していることまでご存じの方は、どれくらいいるでしょうか。

本企画では、それぞれの分野に残された、鈴木信太郎の主だった作品を掲載するとともに、晩年をともに暮らした孫・鈴木敏彦さんに思い出話を伺いました。順風満帆とは言い難い人生を送りながら、生涯にわたり、明るい絵を描き続けた画家。その足跡と人となりに触れてください。(担当:島崎)

はじめての上海家庭料理

2022年10月03日

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はじめての上海家庭料理
(20号「広岡今日子さんの上海家庭料理」)

今の上海というと、煌びやかな高層ビルが立ち並ぶ大都会のイメージでしょうか。1980年代、上海に留学していた広岡今日子さんは、当時の上海が忘れられないと言います。
「欧米の租界地だった上海には、イギリス、アメリカ、フランスなどの文化を色濃く受けた独特の文化が栄えていました。アールデコの街並みや調度品にはとくに感動しましたね。街には、里弄(リーロン)と呼ばれる集合住宅がひしめいており、私はそこで、現地の友人たちから家庭料理を習ったものです」

それらの料理を、今でもくり返し作り続けているという広岡さん。上海の家庭料理の特徴は、にんにくなどの香味野菜をほとんど使わないやさしい味で、青菜をたっぷり使うこと。私の知っている中国料理とはほど遠く、驚きました。今号では、里いも、れんこん、栗など、秋の味覚を楽しめる6品の上海料理を教えていただきました。

そのなかで、私がとくに気に入ったのは「里いものねぎ油炒め」です。材料は、里いも、細ねぎ、油と塩、砂糖のみ。たったこれだけなのですが、じっくり炒めたねぎの香ばしさと少しかための里いもの食感が、手が止まらなくなるおいしさなのです。(里いも2袋、ペロリと食べてしまうので、注意! です)

それぞれのレシピは、広岡さんの思い出とともにご紹介しています。古き良き上海に想いを馳せながら、作っていただけるとうれしいです。(担当:小林)

とりどりの人生に、とりどりの魅力

2022年09月30日

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とりどりの人生に、とりどりの魅力
(20号「日記本のすすめ」)

皆さんは、「日記本」と呼ばれるジャンルの本を読んだことがありますか?
誰かの日記をそのまま本にしたもので、書かれているのは著者のごく私的な出来事なのに、読めばなぜだか惹かれる。
フィクション作品とはまた違った魅力があります。

この企画では、書き手の方々に、おすすめの日記本の読みどころや、日記を読む/書くことの妙味についてご寄稿いただきました。
斎藤美奈子さん、くどうれいんさん、林 望さん、牟田都子さん、滝口悠生さん、岸本佐知子さん、奈良美智さん、武田花さん、いしいしんじさんの9名です。

選ばれたのは、日々の何気ないひとこまを綴ったものから、蒸発を繰り返す父親の姿を撮り、書き留めた写真集、敗戦により人生が一変した若者が、スケッチも交えて心情を吐露した本まで、とりどりの9冊。
中には、「これはどこまでが本当……?」と不思議な世界に迷い込んだかのような、虚実の入り混じる「偽日記」なんてものもあります。

いずれも、見えてくるのはその人生のありようそのもの。
捉えられた、人生の一瞬の豊かさに驚かされます。
選者の個性が光るラインナップは、ぜひ誌面にてお確かめください。(担当:佐々木)

大切な人を見守り、支えるには

2022年09月29日

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大切な人を見守り、支えるには
(20号「うつ病の家族に寄り添うために」)

「うつ病の人に『頑張って』と言ってはいけない」。
そんな話を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。
身近にうつ病を患っている人がいない私も、取材の下調べをするまではそのくらいの知識しか持っていませんでした。

ところが、うつ病の過程においては、背中を押したり、言葉を掛けたりする方が患者の力になり、回復を助ける時期もあるのだそうです。
とはいえ、適切な時期を知らなければ、逆に回復を妨げてしまう可能性も。
患者を支える周囲の人にも、知識が必要なのです。

この記事では、うつ病の症状の変化や、患者の周囲の人が心がけたいことなどについて、
品川駅前メンタルクリニックの有馬秀晃先生に解説していただきました。

うつ病は、いつ誰がなっても不思議ではない病気です。コロナ下の不安やストレスの影響もあり、患者さんは増えているそうです。
もし家族がうつ病になったら、自分はどんなふうに寄り添えばいいのだろう。
今はこの記事が必要ない方も、そんなことを想像しながらお読みいただけたら幸いです。(担当:田村)


暮しの手帖社 今日の編集部