『暮しの手帖』は、来たる9月に創刊75周年を迎えます。
戦後間もない時代に産声をあげた小誌が、広告をとらずにここまで刊行を続けてこられましたのは、読者のみなさまの温かい支えのおかげにほかなりません。
心より感謝申し上げます。
このたび、創刊75周年を記念してロゴを作成しました。配したのは、初代編集長の花森安治が描いた「ランプ」の絵です。
「暮らしに、ちいさな、かすかな灯りをともすことができたら」
そんな創刊時の理念を胸に、一号一号に思いを込めて、まっとうな本づくりを続けてまいります。
今後とも、ご愛読、ご支援のほど、なにとぞよろしくお願い申し上げます。
『暮しの手帖』は創刊75周年を迎えます
寝間着についてお聞かせください
暮しの手帖編集部は現在、5月25日発売予定の24号に掲載する特集「寝間着をきちんと選んでいますか?(仮題)」の準備を進めています。誌面作りのために、「寝間着」にまつわるアンケートを設けました。
回答の締め切りは2月27日(月)です。皆さまのお答えを心よりお待ちしております。
▼アンケートのご回答はこちらから
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSekpRmzwi0W88EVx0z3sF_1EGXP-0XBD211Dc5dygQ-n8iZ_Q/viewform
知ればきっと近くなる
知ればきっと近くなる
(22号「アフガニスタンから来たバブリさん」)
私の家のベランダには今、吊り下げ式の干しアミが、ぶらぶらと風に揺れています。作っているのは魚の干物ではなく、「ドライチーズ」。アフガニスタンの保存食で、簡単に言えば、塩で味をととのえたヨーグルトをカチカチになるまで乾かしたものなのですが、これがなかなかおいしいのです。
作り方を教えてくれたのは、アフガン出身のバブリ・アシュラフさん、40歳。15年前に来日し、千葉県松戸市で母国のドライフルーツなどを輸入・販売する店を営みながら、日本人の妻、まだ幼いふたりの子どもとともに暮らしています。「日本では、アフガンのことがあまり知られていないのが寂しい」。そう話すバブリさんは、現地の食文化や生活様式、自然の豊かさ、そして母国への思いを一生懸命に語ってくれました。
正直、バブリさんに出会うまで、私がアフガンについて抱いていたイメージは貧弱で、「戦争」「内戦」「タリバン」といったものばかり。それが今ではだいぶ詳しくなり、親しみを持つようになって、さらには保存食を作るまでに……。つくづく、知ることは近づくことですね。「アフガニスタンは遠い国だ」「なんだか怖い」。そんなふうに思っておられる方に、ぜひお読みいただけたらと願っています。(担当:島﨑)
食卓がぱっと華やぎます
食卓がぱっと華やぎます
(22号「冬の魚介でイタリアン」)
みなさんがよく作る魚料理といえば、焼き魚や鍋ものなど和食が多いでしょうか。魚介がおいしくなるこの時季、目先を変えて、イタリアンで味わってみませんか?
今回ご指導くださったのは、日髙良実シェフ。日本におけるイタリア料理の先駆者で、南青山の「リストランテ アクアパッツァ」のオーナーシェフです。日髙シェフは、イタリアでの修業の際に魚介料理のおいしさに感銘を受け、以降、日本の魚介を生かして数々のイタリア料理を考案してきました。
今号では、ブリ、タラ、カキなど、この時季に旬を迎える魚介を使った5品をご紹介いただきました。材料や作り方はシンプルですが、日髙シェフならではの工夫が随所に散りばめられています。
ふだんはお刺身でいただくブリを使ったおしゃれなサラダや、カキのパックの塩水をソースに使うパスタ、濃厚なクリームにレモンの香りがさわやかなホタテのパスタは、手軽にできます。「タラのムニエル」は、淡泊なタラをたっぷりのバターで焼き、アンチョビとケイパーが効いたソースがリッチで、まるでお店の味! いつもの食卓が華やぎますよ。(担当:平田)
伊平屋島に見つけた喜び
伊平屋島に見つけた喜び
(22号「是枝麻紗美さんとクバの葉の民具」)
伊平屋島(いへやじま)を知っていますか?
沖縄本島北部から船で約80分、県最北端にある有人離島です。ここは、ヤシ科の植物、クバ(ビロウ)が3種類自生し、美しい海と緑の山々、伝統文化が息づいています。
クバの葉で水汲みやトレーなどをつくる民具作家の是枝麻紗美(これえだ・まさみ)さんにとって、ここは素材の宝庫。クバの葉に導かれるように、この島に移住しました。
「種水土花(しゅみどか)」というブランドを主催し、民具を作り、一人娘を育て、島の人と深く繋がりながら暮らす是枝さん。前職はスタイリストで、東京で忙しく働いていたと話します。
是枝さんが、伊平屋島で生きると決めた理由とは……?
今回、沖縄在住の編集者・川口美保さんが島を訪ね、是枝さんの生き方、そして作り出す作品を取材しました。是枝さんとクバの葉の物語を、どうぞお楽しみください。
島の風を感じるような、力づよく美しい写真は、大城 亘(わたる)さんの撮影です。(担当:佐藤)
心に残るサンドイッチです
心に残るサンドイッチです
(22号「市場の朝ごはん」)
「朝ごはんがとびきりおいしいお店がある」「どうやら市場のど真ん中にあるらしい」
そんな噂を聞き、どうしても食べたくなって電車とバスを乗り継いで訪れたのが、川崎市の中央卸売市場北部市場(ほくぶしじょう)にある軽食と西洋骨董の店「調理室池田」でした。
精肉店や調理器具店などと軒を並べ、朝7時に開店、昼過ぎに閉店するユニークなお店です。
早朝から市場で働く人たちのために、温かい朝ごはんを提供しています。
今回の記事は、店主の池田宏実さんの朝の時間に密着するルポルタージュ。
暗いうちからシャッターを開け、分刻みで開店準備をする池田さんの仕事の様子や、オープンに至ったいきさつ、常連さんとのやりとりなどをご紹介しています。
また、お店の看板メニューで、市場のマグロを使ったサンドイッチ「ツナメルト」を、家庭向けにアレンジしたレシピも特別に教えていただきました。
これは何度か試作をしましたが、本当においしいです。手頃な価格のマグロで作れますので、ぜひお試しください。(担当:中村)
※一般のお客さんが市場に入場できるのは午前8時からです。
国と文化をつないで
国と文化をつないで
(22号「わたしがポジャギと出会った日」)
800年前の高麗の時代から続く、韓国の伝統工芸「ポジャギ」。ハギレをつないで作る、ステンドグラスのような「チョガッポ」が有名です。韓国のドラマや映画にしばしば登場するので、意識せずとも、目にしたことがある方はきっと多くいるはずです。
奈良県在住の吉本潤さんは、韓国で展覧会を開くほどの腕前のポジャギ作家。けれど韓国にルーツを持つわけではなく、日本の「ふつうの主婦」でいながら、師を見つけてこの道に入りました。
吉本さんはいかにポジャギに魅了され、技術を学ぶようになったのでしょう。「手芸としてではなく、文化として」。ポジャギを日本で伝え続ける思いを伺いました。
企画の最後には、ポジャギならではと言われる布のはぎ合わせ方もご紹介しています。緻密な作業ではありますが、仕組みはシンプル。手仕事がお好きな方はきっと楽しんでいただけると思います。(担当:島﨑)
まるで井戸端会議のように
まるで井戸端会議のように
(22号「憲法を語ろう」)
ここ最近、国政選挙での各党の訴えを見てみると、憲法改正の是非が争点の一つになっています。
私は「賛成」「反対」両派の意見を耳にするたびに、なんだか自分が置いてけぼりになっているような気がしていました。
日本国憲法が大切なのはわかるけど、どう自分とつながっているのか、いま一つ理解できていなかったからです。
文筆家でイラストレーターの金井真紀さんも同じようにもやもやとした思いを抱いていました。
「憲法は何条まであるのだろうか」、まずはそこからのスタートだったとおっしゃいます。
この企画では、憲法へのさまざまな疑問を、金井さんが専門家2人と語り合っていただきました。
ご登場いただいたのは、市民に向けて「憲法カフェ」を主催する弁護士の竪十萌子さん、多数の著書がある法学者の谷口真由美さん。
ジェンダーや人権などの話題を中心に、井戸端会議のように伸びやかに展開しています。
「ああ、そういうことなのか」と私は肩の力が抜けました。みなさんも、憲法について身近な人と語り合ってみませんか。(担当:中村)
ストレスのケア、できていますか?
ストレスのケア、できていますか?
(22号「ストレスと上手に付き合うセルフケア」)
「ストレスがたまっている」「ストレス発散しよう」、私たちは「ストレス」という言葉をよく使っています。
でも、じゃあストレスっていったい何なのか。どうしたら振り回されずにいられるの?
この企画では、誰もが大小抱えているストレスとの上手な付き合い方を、心理カウンセラーの伊藤絵美さんを監修にむかえ、あらためて見つめてみました。
鍵となるのは、「セルフケア」。
具体的には、自分のストレスを「よく知る」ことと、それに「対処する」ことです。
今回は専用のワークシートも使い、「書く」ことを通して、ストレスのモヤモヤを整理する方法を紹介しています。
本誌連載「みらいめがね」の著者・荻上チキさんの、実際のストレスを例にとっているので、そちらを見ながら書いてみてください。
自分のストレスが分かったら、「対処」も忘れずに。
すぐに試せる簡単なもの、ぜひ覚えていてほしいものを中心に、幅広く具体的な方法を掲載しました。
何をストレスと感じ、どのくらい辛いかは、人それぞれ。ときには理解されず、孤独を感じることもあるでしょう。
それでも、自分で自分を手当てできれば、この先きっと上手に付き合っていけます。
日々を健やかに送れるように、この頁を役立てていただけたらと願っています。(担当:佐々木)
※専用のワークシートは、こちらからもダウンロードできます。
書き方の詳細は誌面をご参照ください。
めがねをポジティブに楽しみたい
めがねをポジティブに楽しみたい
(22号「40代からのめがね選び」)
「めがねは歳をとってからの大事なファッションアイテム。顔のたるみやくすみを隠すだけじゃなく、生き生きした表情と個性を作ってくれる。そう思って選ぶといいわよ」
これは、本誌20号「すてきなあなたに」で掲載した、ニューヨーク在住の上野朝子さんの原稿の一節です。上野さんが「60代になって好きなスタイルの服が似合わなくなった」と、10歳年上の友人で“おしゃれ番長”のローラさんに伝えると、このようなアドバイスをくれたのだそう。
「何てことのない服装でもおしゃれに見えたり、見た目の印象を簡単に変えられることも、めがねの大きな魅力です」と話すのは、「眼鏡スタイリスト」として活動する藤裕美(とう・ひろみ)さん。「40代を過ぎると多くの人に老眼の症状が出始めて、めがねが必要になります。人生の半分は老眼ですから、めがねを選ぶ過程も含めて、ポジティブに楽しみましょう」と続けます。
めがねのおしゃれを楽しみたいと思っていても、いざお店に行くと、黒や茶色の無難なデザインばかり選んでしまったり、「これでいいか」と消去法で選んでしまったり……という経験がある人も多いのではないでしょうか。
かくいう私も、小学生からめがねを使っていますが、いまだに自分に似合うめがねがわからず、「これ」という1本に出会えないままです。
見た目も機能も満足できるめがねに出会うには、どうしたらいいのでしょうか。めがねを購入する際に知っておくと役立つ基礎知識を、藤さんに教えていただきました。
また、40~60代の男女4名が、藤さんセレクトのさまざまなデザインのめがねで変身する様子も、お楽しみください。
ちなみに本誌編集長の北川も、この記事を読んでめがねを2本購入しました。
読者の皆さんにも、お気に入りのめがねが見つかりますように。(担当:田村)
日々の食卓から生まれたヒント
日々の食卓から生まれたヒント
(22号「教えてください、献立のひと工夫」)
みなさんは、いつもどんなふうに献立を決めていらっしゃいますか?
朝ごはんを食べながら、家路を急ぎながら、どんな時でも頭の片隅には「今日の献立はどうしよう」という悩みが渦巻いている。そんな方も多いのではないでしょうか。
私も毎日の献立を考えるのが悩みです。これまでに何度か献立の本を購入し、そこに書かれているルールを実践しようと試みたことがあるのですが、なんだかうまくいかず、長続きしませんでした。日々の暮らしも冷蔵庫の中身もさまざまな中で、必要なのは「こうすべき」というルールではなかったのかもしれません。
この企画では、有元葉子さん、冷水希三子さん、本田明子さんという3人の料理家の方に、ルールではなく、それぞれの食卓から生まれた工夫を教えていただきました。
「クタクタで帰ってきた日でも、温かく、ほっとする味わいのものが食べられるように、冷凍庫にごはんのベースを入れておく」「慌ただしい平日は、2品の献立に」「煮ものさえ作っておけば、あとは肉や魚を焼くだけで充分」などの発想から生まれた献立は、とても作りやすいのに、満足感のあるものばかり。
自分の中に引き出しが増えたことで、以前よりもやわらかな気持ちで献立を考えられるようになったような気がします。「今日はあの方法でいこうかな」というように、みなさまにも日々の暮らしにまず一つでも取り入れてみてください。(担当:井田)
花との暮らしの楽しみ方
花との暮らしの楽しみ方
(22号「花束を思い出に」)
私の住まいの向かいには花屋さんがあり、お客さんとお店の方との会話が、毎日にぎやかに聞こえてきます。
「今日は母の誕生日なの。プレゼントしたいから、花束を作ってもらえる?」
「先日のお花、とっても喜ばれたわ。どうもありがとう」
花束は暮らしのいろいろな場面で、人と人をつないでくれたり、気持ちに寄り添ってくれる存在であることを日々感じます。
みなさんは花束を贈られたら、どのように楽しんでいますか?
生けて楽しむのはもちろん、大切な思い出の花束を、何かの形で手元に長く残すことができたら……と、思ったことはありませんか?
今回、大きな花瓶に生けたあとに、だんだんと小さな花瓶へ変えていったり、花束の一部をとり分けて、ドライフラワーや押し花を作って楽しむ知恵を、「北中(きたなか)植物商店」の小野木彩香(おのぎ・あやか)さんに教えていただきました。
小さなお子さまにもあっという間に作れるほど簡単な、ドライフラワーをつないだモビールや、色鮮やかな押し花の作り方もご紹介しています。
教えていただいた方法で、ラナンキュラスの押し花を作ってみたのですが、白い花びらが少し透明に変化した姿や、その繊細な美しさにハッとして見入ってしまいました。
ぜひ、花束を思い出の形にして、暮らしの中で長く楽しんでみてください。
きっと、見るたびに大切な人との思い出がよみがえり、力をもらえることでしょう。(担当:佐藤)