隣に暮らすあの人は
(32号「クルドのお母さんと糸のふちかざり」)
皆さんは、オヤというトルコに伝わる手仕事をご存じでしょうか。スカーフなどの布製品の縁を飾る、糸編みの技術です。ある時、私はオヤのアクセサリーに出会い、その美しさに魅了されて、川口市で開かれていたオヤ教室に参加しました。出迎えてくれたのは、教室を主宰する中島直美さんと、クルド人の女性Wさん。「あれ、トルコの方じゃないんだなあ」。素朴な疑問を抱いた私はWさんに、オヤについて、また、生い立ちや来日の経緯などについて、お話を伺いました。
今、川口市周辺には、2000人ほどのクルドの人々が暮らしています。クルド人の方々いわく、「近隣の日本人とは付かず離れず」。悪感情を向けられることもないけれど、仲良く交わることもないと言います。昨今、近所付き合いは日本人同士でもそんなもの。言葉が通じない者同士となれば、無理もないのかもしれません。
一方でこのところ、在日外国人に対するヘイトデモがしばしば報じられています。隣に暮らす人はあの人は、一体どんな人なのか。なぜ、ここにいるのか。もしかすると、Wさんのお話が想像の一助になるかもしれません。クルドの女性たちにお借りして撮影した、スカーフを縁取る見事なオヤの写真の数々もお楽しみください。(担当:島﨑)