ハンセン病療養所で歌う思いは
(28号「そこにはいつも歌があった」)
みなさんは、ハンセン病について、どれほどご存じでしょうか。
私は10年くらい前、ひょんなことから沖縄は名護にある療養所「愛楽園」の資料館を訪ねるまで、ほとんどなんの知識も持ち合わせていませんでした。知っていたのは、「かつて大変に差別された伝染病だな」というくらい。
特効薬ができるまで、患者の方がどれほど苦しんだか。戦後に「治る病気」と判明してからも、どれだけ苛烈な差別に晒されたのか。正直に言えば、今回、この特集を編むまで、きちんとは理解できていなかったでしょう。
沢知恵(ともえ)さんは、そのハンセン病の療養所に、幼いころから通い続けている人です。最初は見舞い客として。長じて歌手になってからは、園内でコンサートを行ない、また、岡山大学の大学院で、かつて園内で歌われた「園歌」の研究も行なってきました。
沢さんは、「入所者を『単なるかわいそうな被害者』として語りたくない」と言います。彼らが負った影の部分だけでなく、その人生において経験した光の部分も語り継ぎたいと。
この特集では、沢さんの、静かながら熱い思いを伺うとともに、昨秋、岡山県にある療養所・長島愛生園で行われたコンサートの様子もお伝えしています。沢さんの歌は、CDやサブスクリプションで聴くことができます。ぜひ、『消印のない手紙』や『愛生園挽歌』などの療養所にまつわる歌に耳を傾けながら、記事を読んでいただけたらと思います。(担当:島崎)