落としブタで煮ものが変わる
(28号「ひと味違う 煮もののコツ」)
一昨年、23号「季節を味わう 和のおかず」の取材で、日本料理店「てのしま」の林亮平さんを訪ねたときのこと。紹介するメニューを相談しているうちに、木製の落としブタのことが話題にのぼりました。「持っていない場合は、アルミホイルで代用してもいいですか?」そんなふうに私が尋ねたのかもしれません。林さんの口調が一気に熱を帯びて、「木製の落としブタには適度な重さがあるから、煮崩れるのを防いだり、煮汁を対流させて味を均一に含ませることができる。木製の落としブタを使う理由があるんですよ」ときっぱり。それまで、なぜ煮ものに落としブタを使うのかを深く考えたこともなかった私は、衝撃を受けました。
そして、落としブタについて、煮ものについて、林さんにもっと詳しく教えてほしいと思ったことが、今回の企画の始まりになりました。
この企画では、落としブタのほかにも、煮ものをおいしく、見た目にも美しく作るためのコツをご紹介しています。カレイ、サワラ、カキ、イワシなどの魚介類、里いも、かぶ、れんこんなどの野菜を使ったいろいろな煮ものが、コツを実践することで驚くほど簡単においしく作れますので、ぜひお試しください。
木製の落としブタをお持ちでない方は、この機会にお求めいただくのはいかがでしょうか。お近くの金物屋さんや百貨店などで、1000円前後で購入できますよ。使ってみると、きっと林さんの言葉の意味を実感していただけると思います。(担当:田村)