ケヤキを見上げ、平和の尊さを想う
(25号「表参道・山の手大空襲を語り継ぐ」)
学生のころ、美しくて自由な空気を感じる表参道にひかれて、この街でアルバイトをし、毎日のように通っていました。初めて就職した会社も表参道沿いにあり、長い時間を過ごした私は、この街に育ててもらったように感じています。
ファッションやアートなど文化の発信地でもあり、多くの方にとって楽しく華やかな街のイメージ。
そんな、ケヤキ並木の美しい表参道が、1945年5月、B29による大空襲によって火の海となったことをご存じでしょうか。
この空襲は「山の手大空襲」と呼ばれました。多くの尊い命が失われ、201本あったケヤキは13本を残してすべて焼失したといわれています。
いま、1本1本のケヤキを見ながら通りを歩くと、表参道ヒルズの近くや原宿方面に、幹の太い大木がいくつかあることに気づくかと思います。それは、空襲で焼け残り、歴史を見てきた貴重なケヤキなのです。
二度と戦争を起こしてはいけないということ、そして平和の尊さについて、改めて読者の方と一緒に考えたいと願い、当時この地に住んでおられた3人の方と、老舗の「山陽堂書店」店主にお話を伺いました。つらい思いを乗り越えて語られたことばをここに残します。記事を読んでくださったら、あなたの気持ち、考えを、どうか周りの人に話してみてください。胸のつぶれるような惨事を風化させないためには、まずは知ることから始まると思うのです。(担当:佐藤)
今回の記事のきっかけになった本。山陽堂書店の遠山秀子さんに教えていただきました。
私自身、表参道の空襲について知人から聞いたことはありましたが、これほどの惨事があったことに驚き、涙なくしては読めませんでした。一人でも多くの方に読んでいただきたいと思います。
『表参道が燃えた日 ―山の手大空襲の体験記―[増補版]』
『続 表参道が燃えた日 ―山の手大空襲の体験記―』
(ともに、「表参道が燃えた日」編集委員会編集・刊行)
こちらの2冊は一般書店では流通していませんが、山陽堂書店(03-3401-1309)にてご注文いただけます。