何でもない料理の豊かさ
(24号「名前のつかない わが家のおかず」)
どなたにも、「わが家といえば、これ」「だけど、とくに名前はないな」という料理があるのではないでしょうか。
台所のやりくりに役立つおかずや、気がつけば作り続けてきた定番の料理。
この企画では5名の方々に、そんな料理をエピソードとともに教えていただきました。
文筆家の平松洋子さんにとっては、「豆腐の衣」がその代表格。
豆腐をスプーンなどで混ぜてなめらかにした「衣」は、たとえばミニトマトやキムチなど、何にでもぴったりです。
平松さんによる巻頭エッセイで、「名前のつかないおかず」の豊かさに触れてみてください。
本誌初登場のムラヨシマサユキさんには、修業時代にまかないとして思いついた、フライパンで作る蒸し料理を教わりました。
切り干し大根とエビのカレーしょう油など、食材の組み合わせや、新鮮な味わいにもご注目を。どれもさっと作れて、ご飯が進むおかずです。
飛田和緒さんには、これが楽しみだったという、家族の料理を。
日曜日の朝、湯気の立つ大鍋には、じっくり炊いたお粥やスープが入っていたそうです。シンプルながら、おかわりしたくなるおいしさです。「お粥のおとも」がまたよい仕事をしますので、ぜひご一緒にどうぞ。
実家の定番である酢のもののほか、茶碗蒸し、「うちのカレー」を紹介してくださったのは、エッセイストで料理家の寿木けいさん。
酢のものは色々な食材をたっぷりと使った、ごちそうふうです。ダシ酢を吸った炒り玉子がおいしくて、酢のものに玉子はアリだな、と新鮮な発見でした。
若山曜子さんも、家族や旅先での思い出にまつわる料理です。
どれも飽きのこない、ほっとする味わいの3品。なかでも、「青じそのスパゲティ」はさらりとした食べ心地が和のおかずにもよく合い、献立に取り入れやすいですよ。
何気ない料理にこそ、それぞれの家庭の味や記憶がつまっているものですね。
ふむふむと読みながら、日々のレパートリーとして、どんどん作っていただけたら嬉しいです。
(担当:佐々木)