『暮しの手帖』の創刊者である大橋鎭子と花森安治。
二人がはじめて手掛けた雑誌は、
女性のためのファッション誌『スタイルブック』でした。
衣食住、すべてが足りない戦後の暮らしのなかで、
タンスに眠る古い着物をほどいて作れる
「直線裁ちの服」を提案し、
全国から本の注文が殺到したそうです。
この本の始まりに、こんな一文があります。
かなしい明け暮れを過してゐるときこそ
きよらかな おしやれ心に灯を點けよう
戦後と今の暮らしを比べることはできませんが、
長いステイホーム期間を経て、
この言葉がじんわりと沁みてきます。
「たとえ人に会う機会がなくても、
自分を保つために、前を向くために、
おしゃれは必要なことなんだ」
そう感じたことから、今回の別冊
『おしゃれと暮らし』の制作が始まりました。
なかでもお読みいただきたいのが、
「配色レッスン 2022年版」という特集です。
これは『スタイルブック1946秋』にあった
「たのしい配色表」という企画に触発されて生まれたもの。
当時の誌面は、今回の本の表紙にも使われています。
ズラリと並んだ配色案を眺めるだけで、
おしゃれしたい気持ちがウズウズしてくるはず。
お気に入りの配色を見つけて、手持ちの服で
“一人ファッションショー”をしてみてはいかがでしょうか?
『スタイルブック』の意思を引き継ぐ企画がもう一つ。
「石徹白のはかまパンツ」という、直線裁ちで作る日常着の特集です。
教えてくださったのは、
岐阜県の石徹白という集落に住む平野馨生里さん。
平野さんは、地元の人々が作り続けてきた衣服を
現代ふうのデザインに作り直し、今に伝えています。
布の無駄が出ず、動きやすさも抜群の「はかまパンツ」、
ぜひお好きな布で、作ってみてくださいね。(担当:田島)