住まいに「自然」を呼び込んでみたら
(18号「自然翻訳家の生活術」)
こんにちは、編集長の北川です。
昨秋のことですが、マンションの玄関ドアの前に、真っ赤なカエデの葉がぽつんと落ちていました。おそらく、お隣さんが丹精している植木鉢から飛んできたのかな、と拾い上げて推理しつつ、なにか妙に心ひかれて、ガラス瓶に挿してみました。ああ、きれいだなあ。
みなさんも、散歩の途中や旅先で、美しい落ち葉や石、流木などに目が留まると、思わず持ち帰って飾ってみたくなりませんか? 何に役立つというわけでもないのに、なぜなのでしょうね。
この記事の主人公、蜂須賀公之(はちすか・まさゆき)さんの職業は自然レンジャー。日頃、東京都内の大きな自然公園を管理し、人々が自然とつながるためのガイドをされています。
その住まいは、おもに仕事を通して見つけた「自然のかけらたち」でいっぱいです。壁のそちこちに飾られているのは、なだらかなアーチを描く間伐材の枝。棚に並ぶ大きな広口瓶の中には、ふわふわの綿毛や乾燥キノコ、木片など。照明にはユーカリなどの草木が吊るされていて、灯りをともすと浮かび上がる陰影がなんとも美しい。
毎日、自然に囲まれて仕事をしながら、なぜ、蜂須賀さんは住まいをこのような「自然のかけらたち」で満たしているのだろう? それにはきちんと理由があり、確かな「効用」もあるのでした。
なお、掲載した写真はすべて、蜂須賀さんがこれまでの暮らしで撮りためてきたベストショットです。テーブルの上に転がるように現れる木漏れ日や、いっせいに開いたノボロギクの綿毛……。私たちの日常はきっと、こんな「またとない瞬間」の連続なんですね。(担当:北川)