自分の「好き」を大切に
(10号「布のかけら、花の途中」)
「このアップリケ、気になりませんか?」と、ライターの渡辺さんからいただいた写真に、一目で心奪われてしまいました。
植物や蝶をモチーフにしたそのアップリケからは、とても純粋な、作り手の想いが伝わってきました。
どんな方が作っているんだろう。細かいところはどうなっているんだろう。実際に見てみたい……!
そうしてはじまったこの企画。作者の則武有里(のりたけ・ゆり)さんにお話を伺うと、
「誰に見せるつもりもなく、自分だけの楽しみとして、10年間少しずつ作りためたものなんです。
だから今でも、人に見られるのが不思議」と、はにかみます。
古い布が大好きで、どんな小さなはぎれも捨てられないという有里さん。
家族が家を留守にして、一人きりになるような時間に、はぎれでアップリケを作ります。
それは彼女にとって、忙しい日々の中で、自分に向き合う大事な時間です。
有里さんのアップリケを見ていると、私も、どうしても捨てられない紙きれや、はぎれを思い浮かべました。
こんな役に立たないもの、いつまで持ってるんだ、と自分に呆れていたけれど、
自分の好きなものや、その気持ちを、ずっと大事にしていいんだ。そんなふうに、背中を押してもらったように感じました。
そして、他人の目は気にせず、自分自身のためだけに何かを作りたい、と胸がたぎるのです。
ほかにも、有里さんのお話には、はっとすることがたくさん。
アップリケの大きな写真を載せていますので、よーく目をこらして、有里さんの宝物を眺めてみてくださいね。(担当:平田)