年末に、来し方行く末を思う

2020年12月27日

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9月下旬に刊行した『いつもいいことさがし3』。小児科医、細谷亮太先生が『暮しの手帖』に1997年から昨年まで23年連載したエッセイから、後半8年の50編中37篇を選りすぐってまとめたもので、63〜71歳の思いが綴られています。
細谷先生は、臨床の現場を第一に、医師になりたての頃は不治の病であった小児がんの8割が完治するようになった現在まで、子どもたちに病気を告知し、一緒に病気と闘ってきました。
そんな先生も、年齢を重ねるにつれて、後輩を育てる仕事や、病を抱えた子どもたちと家族の居場所をつくる仕事などが増えてきました。医師に限らず、誰しも、若いころと仕事の仕方や内容が変わってくる時期がやってきます。
連載当初から担当をしていた私も、63歳になりました。入社してからずっと、この編集部で過ごしてきましたが、40年以上の間には、手書きがワープロ、パソコンへの入力になり、電卓、手書きのグラフからエクセルへ。編集部内でしていたレイアウトもデザイナーに依頼し、写真はフィルムからデジタルになりました。若いときには想像もしなかったことが、待っていると実感しています。でも、やってきたことの中には応用できるものもあるはず、人間は一人一人違い、得意不得意がある、助け合っていくことができるはず、そう考えて日々過ごしています。
本書の一節
——亡くなっていった子ども達、その家族が私に教えてくれたことはいっぱいあります。その一番目は、人生で大切なものは絶対に金銭や経済ではないのだということ。次に、その人が生きる上で拠り所としていたもの、子どもならばお母さんやお父さんの存在、おとなならばその人なりの哲学や思想の他に、宗教がとても大きな力を持つのだということ。そして人は生きてきたように死ぬのだということの三つです。——
宗教は、キリスト教や仏教、イスラム教などに限らず、何か祈りたくなる大きなもの、いつも見ていてくれると感じるものでありそうです。
コロナ禍で自宅にいる期間が増えた今、自らの来し方行く末や、拠り所となる大切なもののことを『いつもいいことさがし3』とともに、ゆっくり考えてみませんか。(担当:高野)


暮しの手帖社 今日の編集部