食を、暮らしを、自分の手の中に。

2020年05月25日

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食を、暮らしを、自分の手の中に。
(6号「有元葉子の旬菜」)

料理家の有元葉子さんの新連載が始まりました。1年間6回の短期掲載です。
その季節ならではの食材を生かした、シンプルな料理をご紹介します。
第一回は、初夏の時季にしか味わえない新にんにくや新れんこん、新ごぼう、そしてぬか漬けのお話です。有元さんのふだんの食卓や、子どもの頃の食のエピソードを交えて、それぞれの料理をご紹介します。
まさに今が旬という食材の料理ですから、実は去年のちょうど今ごろ撮影をして原稿を書いた記事で、足かけ1年でお届けする頁です。
この連載のきっかけは、こんなことからでした。
あるとき、有元さんの撮影のあとに試食をしながら、皆でこんなことを話したのです。

「今は、スーパーに行けば、お惣菜、インスタント食品、『料理の素』や合わせ調味料……実に多種多様で便利なものがあふれている。でも、その多くは気が利きすぎていないだろうか」「人それぞれに『おいしい』という好みの感覚は違うはずなのに。家庭ごとの『うちの味』もなくなりそう」と。

忙しい毎日のなかでは、便利な食材を活用することも必要です。
でも、そればかりだとどうなるしょうか。
「すべて手作りしましょう」という話ではありません。家庭料理って、手間をかければよいというものではありませんから。でも、メーカーが作る商品はあくまでも「商品」です。それは、食べる人の身体や健康のことを第一に考えて作られたものとは限りません。
工場で一度に大量に作られたものと、家庭で自分や家族のために作るものは、違うのです。
有元さんは、「私は、納得して安心できる、おいしいものをきちんと選びたい」とおっしゃいます。素材をきちんと選ぶのは、安心のため、自分が納得するおいしさのため。そして、有元さんのふだんの食卓には、そんな素材を生かしたシンプルな料理が並びます。

いま私たちは、未曾有の経験をしています。
一時期、スーパーの棚から、インスタントやレトルト食品が、真っ先になくなりました。
そんなときでも、シンプルに素材を料理する力があれば、そうそう困らないはずです。たとえば、ぬか床があれば、それだけでもずいぶん豊かな食卓になるのです。
しっかりと自分の手で食べるには、生きるには、どんなことを感じて手を動かせばいいか。そのヒントになる有元さんのお話と料理をお伝えします。(担当:宇津木)


暮しの手帖社 今日の編集部