●なぜこんなに元気なの?
(6号「子どもの虐待を、「かわいそう」で終わらせない」)
最近、さまざまなところで耳にする「子どもの虐待」問題。
私自身、虐待の報道がある度に動揺し、「けれど何もできないし……」という無力感をずっと抱えていました。
虐待のことを知る努力をしようと思っても、実際の加害の様子をレポートした記事などは、辛くて読めない。
そんなへっぴり腰の私でも、この問題に関わる方法が、きっとあるはず。それを模索したのが、今回の企画です。
取材に応じてくださったのは、虐待当事者のケアを行っている高橋亜美さんと森田ゆりさん。
お会いする前は、「なぜこんなに大変な仕事をしているのですか?」と、お二人に問いたい気持ちでいっぱいでしたが、
その疑問はやがて、こう変わりました。
「二人とも、なぜこんなに元気なの?」
その答えは、取材を重ねるうちにふと空から降ってきました。
「あ、人って、人から元気をもらうんだ」
高橋さんと森田さんは、虐待の被害・加害者に深く関わり、寄り添います。
それは私の想像も及ばないほど大変なことだと思いますが、その一方で、それぞれの人が持つ「生きよう」とする力に、
とてつもないパワーをもらっている。お二人の話を聴くうちに、それが段々とわかってきたのです。
「支援者は与える側」という私の思い込みが、崩れ去りました。
深い関わりを持たなくても、例えば人と挨拶を交わし合うだけでも、人はちょっと元気になったりします。
人の持つ生命力が触れ合うからなのでしょうか。私はそんな簡単なことに、今まで気がつかなかったのです。
「虐待の問題に対して、何かできることはある?」という問いの答えも、その気づきの延長線上にありました。
膝を打つような画期的な答えではありませんが、だれにでも、今からでもできることを提案しています。
この企画では、もうお一人、まゆみさん(仮名)という方に取材しています。
子どもの頃の虐待の記憶を抱えながらも、今を生きるために、少しずつ歩んでいる様子を聴かせていただきました。
「読んでいる人たちに、何か少しでも伝わるものがあれば」と、取材に応じてくださいました。
ぜひ、多くの人にお読みいただきたいと思います。
(担当:田島)