子どもたちの原風景を育む場所
(2号「日土小学校を訪ねて」)
愛媛県・八幡浜市の山あいにある「日土(ひづち)小学校」を始めて訪れたのは、2年ほど前のことです。
薄緑とピンク色が印象的な外観に心躍らせながら足を踏み入れると、なんともいえない心地よさに包まれたことを、今でもよく覚えています。
廊下にいても、教室にいても、風が本当によく抜けて、教室の両面からはたっぷりと光が入る。窓の外に目を向けると、一面のみかん畑が見える。
本棚にもなり、座ったりくつろいだりできるベンチがある廊下、ゆっくり歩きたくなるゆるやかな段差の階段……。
この学校には、子どもがこの土地の風土を感じ、遊び、学べる仕掛けがあちらこちらに隠されていたのです。
優れた建築物としてだけではなく、今もなお現役で使われているこの校舎のあり方を、そして、ここで過ごしている生徒や先生の声を伝えたい。
そう思い、今年の7月、再び日土小学校を訪れました。
印象的だったのは、力強く挨拶をしてくれたり、のびのびと過ごす子どもたちの姿です。その姿から、あぁ、この場所が好きなんだな。そんな風に感じました。
学校という場所は、安全であり、機能的であることが大前提だけれど、
それと同じくらい、居心地のよい場所であること、また、変わらずにあり続けることも大切だと思います。
なぜなら、そこで育まれた原風景は、きっと子どもたちの今後を支えてくれるものだから。
山あいにある小さな校舎を通して、学び舎のあり方について思いを馳せていただけたらうれしいです。(担当:井田)