どうして私たちは料理するの?

2019年07月25日

ちゃんと扉DSC_0100

●どうして私たちは料理するの?
(1号第1特集「ちゃんと食べてゆくために」)

 これまでいろいろな料理企画をお届けしてきた私たちですが、新世紀1号を目前としたとき、ふと、こんなふうに思ったのです。
 どうして料理企画は必要なのかしら? いや、そもそも、どうして私たちは料理をするのかな?
 「そんなの当たり前じゃないの、家族に食べさせなきゃならないもの」と思う方もいらっしゃるでしょう。でも、誤解を恐れずに言えば、外食や中食が発達したいまの世の中、料理をしなくたって暮らしていけます。そのほうが、限りある時間をいろんなことに使えるし、作るよりもむしろ、安上がりな場合だってあるかもしれません。

 そんなことを考えながら社会を見渡してみると、あらためて見えてきたものがあったのです。
 たとえば、私たち日本人の家族構成のうち、いま一番多いのは一人暮らしで、全体のおよそ35%。若者からお年寄りまで、「一人ごはん」をコンビニなどのお弁当やお惣菜に頼る人は増えていて、中食の市場が年々拡大しているのはご存知の通りです。
 今日は中華、明日は和食……と、一見よりどりみどりに思えるけれど、よく考えると、そのとき棚にある商品に、自分の食欲や味覚を合わせているだけ。そんな食生活を送るうちに、本当に食べたいものがわからなくなっていないかしら。自分の身体に「何を食べたい?」と問いかけずに暮らしていたら、そのうち身体はしんと押し黙って、健やかに生きられなくなるんじゃないかしら。
 一人でも、忙しくても、年老いても。ちゃんと食べてゆくために、健やかで自立した暮らしを送るために、どんな人にでも大切なのが「料理する力」なんだ。この1号では、そんな思いから出発した一大特集を組み、そのなかに入る、5本の企画を練り上げました。明日から、それぞれの担当者がご紹介します。(担当:北川)


暮しの手帖社 今日の編集部