「怒られたっていいほどの空」って?
(94号「奥村晃作さんが選んだ「空」の短歌」
この空が理由だったら遅刻して怒られたっていいほどの空 小曽納康子
わあ、よいなあ!
空を言い訳に使うって、でかくて、よい。
ベランダに空は落ちててサンダルでわたしは空を歩いておりぬ 甘酢あんかけ
空を歩く!
校庭に走り出したる少年は空に向かいて「よっしゃ」と叫ぶ 山下正弘
いるいる、こういう少年!
……なんて。一回一回感動しています。
いい「空」、いろんな「空」、ちがった「空」が編集部にやってきたのです。
前々号で募集した、お題が「空」の短歌、これに自由題をふくめると、のべ1790首。今号では、出題者の奥村先生さんに選んでいただいた作品たちを一挙紹介しています。
ぎっしりとみんなの「空」が拡がる号。
テレビなどで五・七・五の俳句流行りの昨今ですが、これにたった十四文字が加わると、一気に「私」や「あなた」、「愛」「感情」「笑い」が加わるのが短歌です(百人一首の恋歌を読めば明らかですね)。
「空、空」と母、手を振ってぼくを呼ぶ ぼくはツヨシでソラは犬だが 松田弘子
がら空きの仕事仕事始めの始発バス缶コーヒーを運転手くれ 佐々木延美
「空」は「SKY」とは限らないのです。
短歌=縁遠い、という方も、実はこんなに身近で面白い表現があるんだってことをぜひ知ってください。奥村先生の寸評、対談もお楽しみに。(澤田)