私にも、詠めるかも
(91号「奥村晃作さんのただごと歌」)
とつぜんですが、皆さん、「短歌」にはどんなイメージがありますか? 「高尚そう」? 「難しそう」? 「あれ、川柳や俳句となにが違うんだっけ」、なんて方も、いらっしゃるでしょうか。
なじみのない人にとっては、ちょっと遠いもののように感じられるかもしれませんが、歌人の奥村晃作さんは、「短歌は誰でも詠めるものですよ」と仰います。「人の心は常に動いています。大きな感動でなくても、小さな心でも、歌にすることはできるんですよ」。
現在81歳。奥村さんは、自分の作品を「ただごと歌」と呼び、身の周りにあるもの、日常に起きることを題材に、平易な言葉で短歌を作り続けています。本号の企画「奥村晃作さんのただごと歌」では、奥村さんに、短歌のおもしろさや奥深さ、ご自身の創作について伺いました。
ひとつ、ふたつ、奥村さんの作品を紹介してみましょうか。「ただごと歌」がどんなものか、お伝えするには、きっとそれが一番です。
まずは、私が大好きな歌を。
犬はいつもはつらつとしてよろこびにからだふるはす凄き生きもの
なんだか、とても可愛い歌だと思いませんか。ストレートな描写から、犬のさま(いつもニコニコしてこっちを見てる!)や手のひらに伝わる体温がまざまざと思い起こされますし、それを「凄き生きもの」として、奥村さんがいちもく置いている様子なのも、ほほえましく思えます。
もう一首。
海に来てわれは驚くなぜかくも大量の水ここに在るのかと
いくつのときに詠んだ歌なのかは、わかりません。でも、もちろん、大人になってから詠んだ歌のはずなんです。なのに、子どもみたいに、まるきり新鮮に海を受け止めている。この歌に接して、私は、「短歌というのはこういうふうに、目を見開いて、世界に感動することからはじまるのかもしれないな」と思いました。
奥村さんのように、まっさらな目で日常を眺め、小さなことも心に留めて、それを伝わる言葉で表現できたなら。きっと、すてきですよね。
ということで、今回の企画では、皆さんからも短歌を募集することにしました。特集をお読みになって、奥村さんの世界を堪能したら、ぜひ、皆さんもご自身の「ただごと歌」を模索してみてください。お題や投稿のルールなど、詳細については誌面でご確認を。個性あふれる作品を、楽しみにお待ちしています。(担当:島崎)