へんてことは、真っ当であること。
(暮しの手帖90号「へんてこな工務店」)
へんてこな工務店こと、大喜工務店の藤田喜代次(きよじ)さんに会いに行ったのは、梅雨が明けそうな7月半ばのこと。
「この前ね、姫路城に行ったんやけど、うちで揃えられない材木は、2本しかなかったですよ」
「名古屋城の復元工事が始まったら、きっと、うちと名古屋市で材木の取り合いになるやろな」
「比べる相手がお城なの???」と内心思いつつ、会ってから止まらない材木の話に耳を傾けます。
そして、溢れる材木愛のお話は、家づくりのあり方まで、どんどん広がっていくのでした。
私たちが、なぜ彼らを“へんてこ”と呼ぶのか。
ひとつは、ヒノキへの深い深い愛情。
「香りも艶も最高で、かんなくずに頭を突っ込みたいくらいやね」と言うほど。
次に、自分の家を建てるかのごとく、妥協なき熱量で施主と向き合う姿。
そのために、施主も働き手として巻き込む、驚きのオリジナルスキームを構築!(ちなみに、見積りと請求書の作成といった事務仕事は、なんと施主の仕事なのです)
さらに、施主には現場に顔を出すことを半ば義務づけます。家づくりのプロセスをオープンにできるからこそ、成せること。施主が望めば、可能な限りその場で変更にも対応します(大工を信頼しなければできないことです)。
書き出してみれば、今の家づくりの常識とは真逆をいく話が、どんどん出てくる。
そんな話を包み隠さず、結果4日間、延べ30時間、しゃべり倒した藤田さん。さぞかし疲れただろうと思いきや、別れ際、「あ~、楽しかった!」とひと言。
やっぱりへんてこな工務店なのだと確信するのでした。(矢野)