盛りつけって、なんだろう?
(89号「長尾さんのおいしい盛りつけ」)
「盛りつけは、あなた自身なのよ」
料理家の長尾智子さんが、ある日の打ち合わせで口にした言葉に、思わずドキッとしました。
前の晩、慌てて作ってざざっと器に盛りつけた、わが家の晩ご飯が脳裏をかすめたのです。確かに、自分の慌てっぷりが盛りつけにも出ていたような……。
「盛りつけ」と聞くと、誰かをもてなすときのもの。いままでは、そんなイメージをどこかで抱いていました。
けれど、今日はトマトの切り方を変えてみようかな、いつもとは違う器に盛ってみようかな。ふだんの何気ないごはんでも、そんなふうに盛りつけについて思いをめぐらせると、料理をする時間、そして、食事をする時間も、なんだか楽しくなる。
この企画を通して、そのことに気がつきました。
長尾さんはいいます。
「こんがりした焼き色も、素材の切り方も、盛りつけの要素。素材の色や形をいかすことが、盛りつけには大切なんですよ」
そうして盛りつけられた料理のおいしそうなこと。
誌面では、スタイリストの高橋みどりさんに、器を選ぶときのポイントもうかがいました。特別な器ではなく、普通の器をどんなふうに使ったらいいか、とてもわかりやすく語ってくださっています。
盛りつけにはずっと苦手意識がありましたが、もう少しおおらかに、楽しんで盛りつけてみよう。長尾さんとみどりさんのお話をうかがううちに、そんな風に感じるようになりました(担当:井田)