私たちをつなぐものは。

2025年03月24日

私たちをつなぐものは。

――新編集長より、最新号発売のご挨拶
早いもので3月も、もうすぐ終わり。日ごとに春めいて、桜も開花の準備をはじめているようです。
こんにちは、はじめまして。私は3月25日に発売する『暮しの手帖』35号より、編集長を務める島﨑奈央と申します。
35号は、小誌創刊77年目のリニューアル号です。より幅広く、多くの人の手に取ってもらえるようにとの思いから、表紙や誌面のデザインを一新しました。

小誌は、創業者の大橋鎭子(2016年には、NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』のモチーフにもなりました)が、戦中に防空壕で膝を抱えながら、「戦争が終わったら、女の人をしあわせにする雑誌をつくりたい」と考えて、初代編集長の花森安治と創刊した雑誌です。ですから、女の人のための雑誌、と言っても差し支えありません。実際のところ、読者の多くが40代〜60代の女性です。
けれども、時々、小誌が「女性誌」として紹介されたりすると、ちょっぴりモヤモヤもするのです。「いや、生活総合誌です」と言いたくて。「暮らすこと、生きることに、女も男もないですよね」と思って。私たちと読者の皆さんは性別や年齢によってではなく、「暮らしを愛すること」、その一点でつながっている。そう考え、「女性っぽさ」「女性誌らしさ」から自由になりたいと願って、このような誌面になりました。
……と(とうとうと)語りながら、皆さんにお尋ねしたいのです。お手に取って、どう思われたでしょうか? 考え抜いて作ったものの、スタッフ一同ドキドキしている、というのが偽らざるところです。

特集内容についても、少しだけご紹介させてください。東京は調布市国領にある人気餃子店「吉春」に皮の作り方から教わった「吉春さんの餃子がたべたい」。自分のために作る食事こそ大切にしたいと考えて企画した「10分間でひとりごはん」。春野菜に魚介やお肉を合わせ、ひと皿で栄養もお腹も満たされる「春を楽しむボリュームサラダ」など、本号は料理記事が大充実。
また手芸記事として、本物とみまごうような「花と木の実のコサージュ」の作り方も掲載しています。さらに、周囲との会話に悩む方にお届けしたい「楽しく、気楽に、自分らしく 会話のヒント」や、今から三十数年前、骨髄バンクの設立に奔走した女性のルポルタージュ「骨髄バンクと、あるお母さんのはなし」などなど。今後はいっそう、読み物や社会全体に関わる記事を充実させていきたいと考えています。

新連載も続々スタートします。毎号、市井の方々に「ハレの日」に着る服を見せていただく「ハレの衣(い)」。工夫とこだわりの詰まった住まいをご紹介する「住まいをたずねて」。各界でご活躍の方々に趣味についてお話しいただく「『趣味』の履歴書」(第1回は映画監督の周防正行さん。多趣味かつ個々への偏愛ぶりに呆然とすること間違いなし、必読です)。異国の生活のワンシーンを切り取る写真連載「ベルリンからの便り」。誰しもの人生にやってくる老いについて綴る、村瀨孝生さんの「介護を飛び越える」。それから、料理人・稲田俊輔さんが、旬の食材を生かして、さっと一汁三菜をととのえる術を伝える「新おそうざい十二カ月」。

皆さんの暮らしをよりよく、より豊かに。本号も心をこめて作りました。お読みいただいて、どんなことでも結構ですから、ご感想をお寄せいただけましたら幸いです。一同、お待ちしております。

『暮しの手帖』編集長 島﨑奈央

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