別冊『花と暮らし』発売です

2024年03月14日

別冊『花と暮らし』発売です。
――別冊編集長より、新刊発売のご挨拶

自宅に花を飾るというのが、実は少し苦手でした。花はとても魅力的で部屋の中を明るくしてくれます。ただ、それだけに照れてしまうというか、「飾る」という特別感に気後れしてしまうというか……。そこで、少しだけ視点を変えてみました。
春になると、桜は空を染め、菜の花は畑を覆い、新緑は山を笑顔にします。その美しさを作っているのは一輪の花や、一枚の葉なのです。しかも色も形も微妙に違っていて、一つとして同じものはありません。花の色や形、葉の付き方、茎の曲がり具合……。それらを丁寧に見ていると、愛おしさが生まれてきます。いかに美しく花を飾るかも大切ですが、一本の花や一枚の葉と向き合う時間こそが、「暮らしに花を飾る」ことなのではないではないか、と考えたのです。

この本で紹介している、押し花やいけばな、ボタニカルアートなどは、じっくりと花を観察し、一本一本の特徴を把握することが大切です。もちろん美しい作品のためには技術や経験が必要ですが、真剣に花と向き合うことは誰にでも可能です。そして、花と向き合った時間は、暮らしの中で、とても貴重だと思います。
「人がいて、花をいけたいという思いがあって、手元に数本の花があれば、その花をいけることで表現が生まれます。いけばなは遠い存在ではなく、暮らしのすぐ近くにあるものなのです」
草月流第四代家元・勅使川原茜さんは、いけばなについてそう言います。

そしてもう一つ、茜さんは大切なことを教えてくれました。
「花をいけるとは『相手を思う』ことなのです。(略)素直な気持ちで、相手を思いながらいければ、どこに、どんなふうにいけてもいいのです」
家元のインタビューのため、私たちが伺った部屋のテーブルには、取材陣のために茜さんがいけた花が飾られていました。暮らしに花をいけるという取材の趣旨に合わせて、誰もが持っているようなワイングラスに、なじみ深いチューリップやスイートピーなどの花。それに茜さんが好きな真っ赤なグロリオーサ……。
まさに茜さんの言葉を表すような花でした。

別冊編集長 古庄修

本の概要はこちらからご覧いただけます。


暮しの手帖社 今日の編集部