『とと姉ちゃん』の三姉妹が編集部にいらっしゃいました。とある番組の企画です。
小橋家の常子と鞠子と美子……朝、ついさっきまでテレビの中にいた三人が、時空を超えて、現代の『暮しの手帖』にあらわる。
とてもまぶしい、不思議な感覚です。
暮しの手帖社の三姉妹──大橋家の鎭子と晴子と芳子──も、かつてこうして仲よく並んで立ち、みんなをにこにこと眺めたのでしょうね。
「編集部ではお昼休みの12時45分、みんなでドラマをわいわい見てるんですよ」と言うと、三人は「うれしい! ありがとうございます」って。
「やったー」って、杉咲花さん(美子役)、若い。
今回の企画は、うちの編集部員とともに、本誌の検証作業をするというもの。『暮しの手帖』名物、試作・試食と試用であります。
課題は、制作中だった84号の中の「秋刀魚料理」と、「ダーニング」というお裁縫、それから家電品の接続コードを整理する道具のチェックなどなど。
三人はさすがのチームワークで愉しげに器用に次々とこなしていきました。
『とと姉ちゃん』はすでにクランクアップで、三人の若い女優さん──高畑充希さん、相楽樹さん、杉咲花さん……は、秋の到来とともに、それぞれ別々の新しいお仕事がはじまっています。
それはかなりさびしいなあ。
けれど、「がんばれえ」でもあります。
編集長の私は決して彼女たちとそんなに会ったわけでもないのですが、なんだかいっしょにひとつの人生を歩んだかのような、家族のような存在となっているなあ、と思いました。
このドラマのおかげで、わたしたちの作っている今の『暮しの手帖』を手にとってくださる方が増えました。
編集長として、そのことにまずは感謝申し上げたいと思います。
新しい読者には、母が買っていたという方、久しぶりに読んでくださった方、初めての方、誰かに贈ってもらってという方。女性も男性も、年輩の方も若い方も。
たくさんの感想のお便りもいただきました。
「いい雑誌ですね」っておほめをいただいたのが本当にうれしいです。
部数が伸びたこともありがたいかぎり。わたしたちの雑誌は広告を載せず、書店での一冊一冊の売れ行きだけで成り立っているものだからです。
そして、しずこさんこと大橋鎭子はもとより、花森安治を知らなかった人も多かったことと思います。
みじめな敗戦を経て、戦後をたくましくやさしくクリエイティブに生きぬいた彼らに改めて光があたったことにも感謝をしたい。
わたしたちにとっても、まもなく創刊七十年を迎える本誌を再び見直す、よい機会でもありました(たくさんのアーカイブを掘り起こして、触れることができました)。
さて。
『とと姉ちゃん』三姉妹には心から「おつかれさま」の言葉をお送りし、わたしたち『暮しの手帖』の旅は今も、これからもつづきます。
きょうあしたには最新号が書店に!
第4世紀84号、2016年秋号です。
いつもと変わらず、ていねいに作りました。
ひきつづきお楽しみ、そして応援いただけますよう、お願い申し上げます。
ご感想もお待ち申し上げております。
編集長・澤田康彦