『今日も編み地、明日も編み地――風工房の編み物スタイル』
風工房 服田洋子 著 グラフィック社
1,500円+税 装釘 関 宙明 (mr. universe)
1972年から編み物を仕事にしているニットデザイナー、風工房こと服田洋子(はったようこ)さんの初エッセイ集です。風工房の作品は、色合わせ、表編み裏編みによる凹凸模様ともにお洒落で、見るたびに魅了されます。これまでに風工房単独の作品集だけでも28冊出ています。
この本は、「1章 風工房ができるまで」「2章 デザインすること、編むこと」「3章 編み物でつながる旅と人」の3つに分かれています。
1章では、服田さんが自分の着たい服に(あるいは、着たくない服に)こだわりがあり、母親が小学校の入学式用に編んだセーターが気に入らず、「私の服は作らなくていい」といい続けて育った話が出てきます。現在なら、好みの服を買ってもらえば済むのですが、昭和30年ごろはまだ既製服が少なかった時代。32年生まれの私でも、商店が少ない土地だったこともあり、小学校入学前の写真では、ほとんど母が縫ったり編んだりした服を身に着けています。その頃は、子どもが服を自分の好きなように整えるのには、強い意志があったのだと思います。
そんな服田さんは10歳くらいからエプロンを、高校生からはスカートなどの洋服を作るようになります。ニットのウエアを初めて編んだのは高校生。外国の雑誌を見て好きなものを探し、本を読んでは作り方を試行錯誤して、お洒落な服を独学で作っていきます。美大を中退し、編み物が仕事になり、京都に移り住み、ペルーで編み物指導をするといった様々な経験も、いつも自らが決断して行動。書名の通り、ご自身の意志のままに突っ走ってきた様が淡々とした文体でつづられています。
他の2つの章では、世界の伝統的な編み物を訪ねる旅行記や、編み物をする上での配色のヒント、愛用の道具、出来栄えをアップするちょっとした工夫に加えて、作品4点の編み方と編み図も掲載されています。
編み物好きの方が読まれれば、発見が多いのはもちろんですが、いつもと同じ日常に疲れを感じている方は、服田さんの生き方に、背中を叩いてはっぱをかけられる思いがするでしょう。昨年の秋、風工房のワークショップに参加しました。服田さんは、クールで自然体、とても魅力的な方でした。(高野)