自分自身の葛藤を素直に綴る。

本屋さん_学校へ行けなかった私が
『学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで』 岡田麿里 著 
文藝春秋 1,400円+税  装釘 永井 翔

 「ひきこもりのじんたんが近所の目を気にするのは私の経験です」本書の帯に、にこやかに微笑む岡田さんの写真とこの一文。じんたんとは、岡田さんが脚本を書いた作品の中心人物で登校拒否児。柔らかい笑顔の女性と登校拒否という言葉が似合わなくって、どんな子ども時代を送ったんだろう。と、興味を持って読み始めました。

 岡田さんは小学生の頃から登校拒否を繰り返し、高校卒業までを過ごします。本書では、自宅からほとんど出ない生活の中で、同居している母親との関係や思春期の複雑な思いが綴られています。

 学校で仲間といるときの自分のキャラクター設定や、人間関係を分析する様子などから「なんと冷静で、大人びた子どもなのだろう」と感心しつつ、彼女が直面してきた悩みや疑問は、私が日常生活で抱いている問題と少し似た部分があることに気がつきます。読み進めることで自分を見直す機会を与えられているようでした。
そんな彼女が、学生の頃に出会った数少ない人との関わり合いから学んでいく様子や、大人になり社会に出て脚本家として物語を生み出すことに真正面から立ち向かう姿に、強く励まされました。

 子どもの頃の辛い経験を素直な言葉で綴り、仕事に対して前向きな岡田さん、今後の彼女の活躍に期待が高まります。(山崎)


暮しの手帖社 今日の編集部