ついにチューブ入り練り歯みがきの製造に成功し、大喜びした常子。
ああ、それなのに、まさか……「ポンッ! ポンッ!」って……。思わず目を覆ってしまいました。
実は、このエピソード、大橋鎭子が14歳のときに作った「オーシー歯みがき」がもとになっています。
大橋の母は、歯の悪い人でした。あるとき、診ていただいていた歯科医の先生が、満州に派遣されることになって、自分がいなくなっても作れるようにと処方を教えてくださったのが、きっかけでした。
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『とと姉ちゃん』。俳優のみなさん、どなたもさすがの芸達者で毎シーン見ほれてしまいます。先日の片岡鶴太郎さんの酔っ払い芸は、一部ネットでも話題になっていましたね。確かに「よっ、つるちゃん!」とテレビ画面に向かって声かけたくなる味わいです。
個人的に魅せられはじめているのは、主演・高畑充希さんの演技です。“間合い”“呼吸”が抜群。絶妙のタイミングで瞳をかっと開いて、つっこんだり、ぼけたり、先回りしたり、黙りこんだり。天性のコメディエンヌなんだなと思います。
当初は控えめだったアクション、リアクションが、主人公の成長とともに次第に目立ってきて頼もしい。今は将来の雑誌作りに向けて経験値を積み重ねていく時期、まだまだ抑え気味だと思いますが、この先の常子がどれくらいエネルギッシュに、面白く振るまってくれるのか、目が離せません。
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さっき、とある雑誌から編集長の私に取材依頼が来ました。
「電話でもいいのですが」と先方。
「え、会いましょうよ!」と私。「直接会ってお話しましょう!」と言いつつ、あ、これって『とと姉ちゃん』第一話の冒頭の高畑充希さんのセリフみたいだ! って気づいたのです。
常子「え、電話!? 電話でお願いしたの?」
編集者「ええ」
常子「それじゃ駄目よ! 人に何か頼むときは直接会わなきゃ!」
そうだ、そうです。われわれ『暮しの手帖』はいまだにこの精神でやっております。
さて。やっと始まりましたね、『とと姉ちゃん』。
編集部では、これから半年間、みなさんと一緒にワクワクどきどき、番組を見守っていきたいと思っているのです。時折このブログの場を借りて、ドラマで発見したことをお伝えしますね。
第一話は編集部のシーンから。『暮しの手帖』ではなく、『あなたの暮し』編集部。でもこの言葉は、『暮しの手帖』本誌をめくるとすぐに見つかります。
この中の どれか 一つ二つは
すぐ今日 あなたの暮しに役立ち
という部分。マニフェストの一節ですね。
ドラマの最初では、ベビーカーを押した女性たちが「いってきます」と編集部を出発する。
ああ! これは1960年秋、1世紀56号34ページからの有名企画「ベビーカーをテストする」ではないですか。
当時のキャプションにはこうあります。
《このテストでは、百キロのいろんな道を、赤ちゃんに似た重さをのせて、実際に押してみました。写真は、そのときのスナップです》
各ページの見出しはこんな文言が続きます。
《テストしたのは7種類》 《無神経な作り方》 《押している時の騒音は大型バスなみ》 《3輪車式がいちばん倒れやすい》 《押して具合のよいのはアオバ》 《百キロ押すうちになにがおこったか》 《以上の結果をとりまとめてみると》
14ページ、ストロングスタイルの記事です。まだ戦後15年。現代の、優れたものが手に入れやすい価格でたくさん溢れている時代と違って、物資が乏しく、ひとつひとつの生活品を買うのも大冒険に近かった時のことです。
花森編集長やしずこさんが行ったのは、徹底して人の暮らしをよくする商品を庶民を代表して検査、示したのが初期の『暮しの手帖』でありました。
このへんのことは、きっと編集長を演じるという唐沢寿明さんが登場してからたっぷり出てくるはず。今から楽しみにしております。
(編集長・澤田康彦)