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『昔話の扉をひらこう』増刷のお知らせです!

2022年02月16日

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昔話研究の第一人者、小澤俊夫さんの著書『昔話の扉をひらこう』が、たくさんの方に好評いただき、この度、増刷の運びとなりました。

この本は、「不安なことの多い時代だからこそ、暮らしのなかで、生の声で語り合う時間を大切にしてほしい」と願いを込めて、小澤俊夫さんが昔話に見つけた大切なメッセージや、今伝えたい想いを、力強くもやさしい語り口でまとめた一冊です。
70年以上昔話の研究をつづける小澤さんは、昔話のほんとうの姿は、「語られている時間のあいだにだけ存在し、語り終えれば消えてしまう」と話します。
そして、「これから世の中へ出かけて行く子どもたちに、どうぞあなたの声でお話を聴かせてやって下さい」と願うのです。声は、目に見えないからこそ深く心に残り、子どもが安心して生きて行くことを支える力がある、と。

本を手にとってくださった方々からは、こんな声が届いています。
「著者の、子どもへのまなざしがあたたかい。読んでいると、やさしい心が伝わってくる」
「さっそく子どもに昔話を語ってみたら、案外よく聴いてくれた」
「昔話は、人の心を癒したり、コミュニケーションを育む力があることを知った」などなど。

後半には、とっておきの昔話を17話収録。子どもとおとなが一緒にたのしめます。
また、巻末の鼎談「子どもとことば」(小澤俊夫×小澤淳×小沢健二)も、読みごたえたっぷりと大好評! バイリンガルの子どもたちがことばを獲得していくエピソードや、「ことば」について、親子で語り合った貴重な記録です。

どうぞ扉をひらいて、そのゆたかな世界を感じてみてください。

◎詳しくは、暮しの手帖社オンラインストアをご覧ください。
◎「暮しの手帖」16号では、昔話研究者の小澤俊夫さんと作家の中脇初枝さんとの対談「昔話が教えてくれること」を特集しています。ぜひ、あわせてご覧いただけたらうれしいです。(担当:佐藤)

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裏表紙には、きつねが一匹、ひっそりと。秋山花さんが描いてくださいました。扉の絵の栞付き。
ブックデザインはL’espaceの若山嘉代子さん、印刷は長野県松本市に工場のある藤原印刷さんです。

暮らしもひとつのアートになる

2022年01月25日

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暮らしもひとつのアートになる
――編集長より、最新号発売のご挨拶

このところ、6時くらいに目覚めると東の空が明るく、気持ちまで晴れやかになります。寒さ厳しい日々ですが、確実に、季節は春に向かっているんですね。いかがお過ごしでしょうか。
今号の表紙を目にされたら、懐かしいような、切ないような気持ちで、胸がきゅっとなるかもしれません。絵本作家の酒井駒子さんによる、「いちご」。幼い子が、家族で食べようと洗って置いてあったいちごを、無心に食べています。自分も、わが子も、こんな時期があったのだなあ。いや、もしかしたら、いまちょうどこんな情景が身近な方もいらっしゃるかもしれませんね。
編集部員のなかにも働く親は多く、感染拡大によって、休園となる保育園も増えていると聞きます。先の見えない日々が続くと、心身がじわっと疲れてくるものですが、毎日のおだやかな暮らしが、私たちを支える「確かなもの」であってほしい。今号は、そんな思いを込めて編みました。

巻頭の記事は、写真家の茂木綾子さんの歩みを紹介する、「結んで、開いて、旅をする」。思えば、この記事の取材で淡路島を訪ねたのは、昨年の9月半ばのことでした。
神戸の舞子駅で電車を降りて高速バスに乗り換え、少し走ると、透明感のある海がひろがる景色が続きます。ああ、きれいだなあ。茂木さんは13年前、スイスから家族4人で淡路島に移住し、廃校を改装して「ノマド村」を開きました。ノマド、すなわち「遊牧民」に自身をなぞらえる茂木さんは、ここを地域の人びととアートを分かち合う場にしようと考えたのです。
ところで、コロナ禍となってから、「芸術は不要不急か」という議論があり、私たちはこれまでになく、アートが自分の人生にもたらす力について考えることとなりました。自分のことを振り返れば、自宅に一人こもって仕事をしていた時期、手もとにある絵や写真集を観ることで、心を遠くへ飛ばすことができました。気持ちがざわざわと落ち着かないときは、バッハの『無伴奏チェロ組曲』をずっとかけていたことも思い出します。11号の取材で、南桂子さんの銅版画をたっぷり観られたときのうれしさといったら。アートはけっして不要不急ではなく、やっぱり必要なんだと実感したと言えばいいでしょうか。
今回の記事を編むにあたり、私が茂木さんの話に耳を傾けながら考えたのは、「アートが地域にもたらすものって何だろう」ということでした。いっとき、バブルの頃までは、日本各地に立派な美術館などの「箱物」がつくられましたが、そこに「魂」がないと、つまり、いまを見つめてアートを生み出す人、よりよいかたちで提示できる人がいないと、それはただの「箱」になってしまいます。
茂木さんと夫のヴェルナーさんが築いた「ノマド村」は、立派な「箱物」ではなく、周囲の人たちと土壁を塗るなどしてつくり、手の跡や体温を感じさせる「居場所」でした。ここで暮らしながら、アートを分かち合うって、どういうことなのか。その答えは、「結んで、開いて、旅をする」というタイトルに込めましたので、ぜひ、お読みください。

そのほか今号は、「『手前味噌』は楽しい」「ハーブの香る暮らし」「アイロンがけのおさらい」「こてらみやさんのDIY」など、暮らしのなかで手を動かす楽しみをたくさん提案しています。
ともすれば、暮らしは繰り返すうちに、マンネリ化して澱んでしまったりするものですが、そこに新たな風を吹き込み、まっさらな目で見つめて、自分の手を動かして楽しんでみる。それができたなら、暮らしもひとつのアートになるのではないかと思うのです。
みなさまの大切な暮らしのなかで、この一冊が少しでも心を潤し、お役に立つものでありますように。どうかお身体を大切にお過ごしください。

『暮しの手帖』編集長 北川史織

昔話研究の第一人者、小澤俊夫 著『昔話の扉をひらこう』いよいよ発売!

2022年01月19日

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この本は、昔話の研究を70年以上続けられる小澤俊夫さんが、
「不安なことの多い今だからこそ、毎日の暮らしのなかで、生の声でお話をしあう時間を大切にしてほしい」と願い、昔話に秘められる大切なことを初めての方にもわかりやすく紡いだ一冊です。
わたしたちの祖先が何世代にもわたって語りついできた昔話は、名もない庶民みんなで作ってきた、かけがえのない伝承文化財です。つましい暮らしのなかわたしたちの民族がどんなことを思い、生きてきたのか、お話の形でしみこんでいて、語りかけてくれるのです。

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今回の本を作るにあたって、たくさんの時間を小澤さんと話し合いました。手にとってくださった方に、すぐにお話に親しんでもらえるよう、「小さなお話集」も収録しています。
打ち合わせの時に小澤さんが、「このお話、おもしろいんだよ」と、小さな昔話を語ってくださることもあったのですが、そのあたたかい声と素朴で味わい深いお話は、忙しさでバタバタしていたわたしの心をすーっと癒して、やわらかい気持ちにしてくれました。昔話の不思議な力を感じた体験でした。

91歳の小澤俊夫さんが、これまでどんなふうに歩まれてきたか、そこで見つけたメッセージも編んでいます。2人の息子さんとの鼎談(長男 小澤淳さん、次男 小沢健二さん)も収録。
大切なことをぎゅっと詰めて、森ときつねの表紙カバーで包みました。装画は秋山花さん、ブックデザインはレスパースの若山嘉代子さんです。
どうぞ、お手にとってご覧いただけるとうれしいです。(担当:佐藤)

◎詳しくは暮しの手帖社オンラインストアをご覧ください。
◎小澤俊夫さんのあたたかい声は、ラジオ「昔話へのご招待」(FM FUKUOKA)で聴くことができます。

暮しの手帖別冊『お金の手帖』が発売になりました

2021年11月26日

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お金と暮らしは切っても切り離せないもの。
とても身近な存在なのに、どうしてお金との付き合いは、
こんなに難しいのでしょうか?

「将来が心配で、お金を使うのがこわい」
「お金についてわからないこと、迷うことが多すぎる」
「お金のことを語るのは卑しいという気持ちがあり、家族と話し合えない」
事前に行ったお金についてのアンケートでは、こんな声が並びました。

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そこで私たちは、この本を
お金についての不安な気持ちに寄り添うものにしよう、と決めました。
「なんのためにいくら貯めたら安心なのか、よくわからない」
「家計簿をつけるべきですか? 続ける自信がありません」
「税金が高過ぎる。吸い取られている感じで、つらいです」
みなさんから届いた正直な声を、家計や経済の専門家に投げかけ、
そのやりとりから一冊を作りました。
気になるところだけを拾い読みできる、
Q&A形式にもこだわりました。

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家計の整え方だけでなく、日本経済が抱える課題についても、
かわいいイラストとやさしい文章で、わかりやすく解説しています。
今の日本の状況がわかれば、家計の中で必要な備えが、
自然に浮かび上がってくるからです。

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前編は「経済を通じて社会を知ろう」と題し、
年金、少子化、貧困、働き方、税金など、今の日本を知るための
重要なトピックスを揃えました。

後編は「家計の不安を取りのぞこう」と題し、
基本的な家計の整え方から、住宅費用、教育費、老後資金、
保険、投資に至るまで、充実の内容。
特別ふろくとして、ズボラさんでも記入できる
家計の「年間決算シート」「定年後の収入見える化シート」もついています。

また「新しい窓を開ける」というインタビュー集では、
従来のお金の価値にとらわれない
ヤマザキマリさん、松村圭一郎さん、植本一子さん、伊藤洋志さんが、
家計・経済についての新しい視点を語ります。

読むうちに、「今も未来も、きっと大丈夫」。
そんなふうに気持ちが変わっていくはずですよ。(担当:田島)

心しずかに暮らしを見つめるために

2021年11月25日

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心しずかに暮らしを見つめるために
――編集長より、最新号発売のご挨拶

在宅ワークをしていると、飼い猫が腕にぴったりとくっついて、からまってきます。夜寝るときも同じで、こちらはぬくぬくと幸せです。暖冬といっても、寒くなったんだなあと思うこの頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。
いろいろあったこの一年、年末年始に、心しずかに暮らしを見つめる一冊をお届けしたい。今号は、そんな思いをこめて編みました。
表紙画は、デザイナーの皆川明さんによる「北の森の朝」。
依頼を差し上げたときの手紙を読み返すと、「先行きに不安を感じる人が多いいま、『心の安堵』や『深い幸せ』をテーマに描いていただきたい」とあります。そののちのやり取りで、「冬の澄んだ空気を深呼吸するような」というイメージが浮かび、やがて受けとったのがこの絵。ちいさな花々が寄り添って息づく様子は、なんだか私たち人のようだと思いませんか。

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巻頭記事は「わたしの手帖 オリジナルでいこう」。
今回、取材にお伺いしたのは、介護施設で働く森岡素直(もとなお)さんと、絵を描く仕事をする中井敦子さん。お二人の間には昨年末、待望の赤ちゃん、満生(まを)さんがやってきました。
じつは、素直さんは女性として生まれついた人で、ゆえにお二人は婚姻関係を結ぶことができせん。たがいに心ひかれ、寄り添って暮らし、新しいいのちを育てていく、という点では、ごくふつうのカップルであるにもかかわらず。
私がお二人とはじめてお会いしたのは昨年のいまごろで、中井さんのおなかには満生さんがいました。ざっくばらんにいろんな話をし、この方たちを記事としてご紹介したいなあと思ったものの、いったいどんな記事にしたらいいものか、しばらく考えあぐねました。
誰もが「家族」になれる社会に、少しずつでも変わっていけたらいい。満生さんの、そして、すべての子どもたちの未来のために。
そんなお二人の願いを受けとりながらも、うまく言えないのですが、このメッセージが「主義主張」として太字で記されるような記事ではなく、隣にいる人の「暮らしの物語」として受け止めてもらえる読み物にできたらいいな……そんな思いが浮かび、「わたしの手帖」がしっくりくるのではないかと考えました。
「わたしの手帖」は、「どんな人の胸にも、暮らしのなかで摑んだ、きらめく言葉が書かれた手帖がある。そんな言葉を見せていただき、読む人と分かち合いたい」というコンセプトで続けているシリーズ企画です。しぼった文字数と写真で構成された、いわば「余白」の多い記事ですが、読む方には、ご自分の暮らしと重ね合わせて何かを感じとり、ひととき足を止めて考えていただけたら、うれしい。今回の記事についても、そう願っています。

そのほか、『暮しの手帖』ともゆかりのある、物理学者で随筆家でもある中谷宇吉郎博士の横顔を娘さんたちが語る「雪の博士 中谷宇吉郎さんの家族アルバム」、版画家のわだときわさんの「ままならないから、豊か」という人生の物語を綴った連載「てと、てと。」など、人の生きざまが胸にしみいる読み物をそろえました。
年末年始の季節、腕を振るって分かち合いたい料理やケーキ、贈り物にもぴったりな「猪谷さんの靴下」など、「つくること」を楽しむ記事にも力を入れました。来週から、担当者が一つずつご紹介しますので、ぜひお読みください。

また、今号には特別付録として、「山口一郎 暮らしのカレンダー」を綴じこみました。山口一郎さんは、今年1年間の目次絵を描いてくださった画家で、私もじつは大ファン。部屋には山口さんの抽象画を置いて日々眺めています。
小ぶりなカレンダーですが、山口さんの絵は実物以上に大きく見えるといいますか、のびやかで、心をふっと解放させてくれるような明るさがあります。カレンダーを入れた封筒と表紙には、来年の干支の寅が描かれています。封筒は、本誌を開いた真ん中(ノドと言います)のミシン目からきれいに切り取ることができますので、大掃除を終えたら、この寅の絵も飾っていただけたらうれしいです。
それぞれの人が、それぞれの持ち場で頑張り、踏ん張って、日々をまわしてきたような一年でした。自分の暮らしが、じつは多くの人によって支えられている、そのことにあらためて、感謝の思いも湧いてきます。
どうか、みなさまの年末年始が、心おだやかで、幸せなものでありますように。お身体を大切にお過ごしください。

『暮しの手帖』編集長 北川史織

揺るぎない暮らしのすがた

2021年09月25日

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揺るぎない暮らしのすがた
――編集長より、最新号発売のご挨拶

窓を開けて仕事をしていると、川辺のグラウンドから、野球少年たちの歓声が聞こえてきます。風が心地よく、見上げる青空は高い。ようやく、ひと息つける季節がめぐってきましたが、いかがお過ごしでしょうか。
今号の表紙画は、イラストレーターの秋山花さんによる、「on the wind」。黄金色の空を、紙飛行機に乗った2匹の犬がすーっと飛んでいきます。まさに、風まかせの気ままな旅。うらやましいな。
まだいろいろと不自由な状況ですが、せめて心はどこか遠くへ飛ばして、すがすがしい空気を胸いっぱいに吸い込みたい。今号は、そんな思いをこめた特集を組みました。

一つは、巻頭特集の「山の版画家 大谷一良さん」。青や緑を基調とした山々の風景画は、ひととき眺めていると、心が静まっていくようです。
大谷一良さん(1933~2014年)は学生時代、串田孫一さんが部長の山岳部で活動しつつ独学で版画を始め、卒業後は商社マンとして働きながら、文芸誌『アルプ』の表紙画や挿画などを手がけました。超多忙な日々、制作はもっぱら休日をあてて行っていたそうですが、いったいどうしたら、そんな二足の草鞋を履けるのだろうと思います。その作品世界は世事とは無縁、澄みきって見えます。
実在の山ではなく、「自分のなかにある山」を描き続けたという大谷さん。だからこそ、その「山」にはふしぎな抽象性があり、見る人がそれぞれに抱く「山」の記憶やイメージ、何か揺るぎないものを呼び覚ますのかもしれません。

もう一つの特集「手と足と、知恵を使って生きていく」の舞台は、新潟県の山あいにある小さな集落、「中ノ俣」です。著者は、ここに20年来通い続ける写真家の佐藤秀明さん。棚田が広がる山村の四季折々の風景と、そこで暮らすお年寄りたちの日々を撮った写真には、「まだ日本にもこんな暮らしが残っていたのだなあ」と思わされる、驚きと懐かしさがあります。
親しく交流するお年寄りたちは、たとえ足が弱ってきても田畑を懸命に耕す働き者ばかりで、藁細工でも山菜料理でも、ささっと器用にこしらえてしまう。大きな笑顔がすてきで、厳しい自然とともに生きながらも、暮らしをめいっぱい楽しんでいるのです。
佐藤さんは、仲ノ俣に着くと棚田のてっぺんに向かい、そこで集落を見下ろして、流れる空気を感じながらしばし過ごすといいます。
「天日干しされた稲の香りを含んだ風が吹いてくる、秋の昼下がりがたまらなくいい。その甘さを含んだ風は、肺の中に入ってきて体全体に広がってゆく」
ああ、そんな空気を吸い込んでみたいなあ、と思わされる、実感のこもった一節です。

制作中、初校を読みながら気づいたのですが、この特集2本はどちらも、文中の肝となる部分で「揺るがず」「揺るがない」という言葉が使われていました。もしかしたら、いまそうしたものを、私たちが求めているということでしょうか。
自粛生活も1年半になると、外に楽しみを求められないぶん、本当の意味で「暮らしを楽しむ」って何だろうと、よく考えるようになりました。一つにそれは、ともすればただ流れていく一日一日のなかで、誰もが行う日常茶飯にどう工夫して「楽しみ」を見いだせるかな、という「能動的な自分」が必要な気がします。
新米が手に入ったら、おいしく炊いて、シンプルなおかずで味わってみる。手もとにある余った毛糸で、家事に役立つ愛らしい小ものを編んでみる。いまだからこそ、「公助」って何なのか、考えてみる。
今号も、暮らしを能動的に楽しみ、しっかり向き合って考える、そんな特集記事をそろえました。お茶でも淹れて、ゆっくりと読んでいただけたらうれしいです。どうぞ、健やかな日々をお過ごしください。

『暮しの手帖』編集長 北川史織

暮しの手帖別冊『気分を大事に 続ける料理』が発売になりました

2021年09月16日

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「料理するの、楽しい!」という日もあるし、「料理するの、しんどいなあ」という日もある。
「何を作ろうかな」とワクワクする日もあるし、「あ~もう、考えるのもいや」という日もある。
私たちは、日々、いろいろの気分を抱えながら、台所に立ち続けていますよね。

この本は、そういう自分の体と頭、心の状態と気分を大事にしながら、「よしよし、それなら今日はこんな方法で、自分に優しくしよう」と料理したり、食べることができるといいな、と考えて編みました。
頑張って気持ちを奮い立たせたりせず、あるがままの自分を受け止めて、無理のない方法を選んで料理するのです。
気分や合う方法は、人によってさまざまでしょうから、できるだけたくさんの個性豊かな方々にご指導いただきました。

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1章「考えないで作る料理」は、「考えて決める、それがしんどい……」という時に、
2章「時間を味方にする料理」は、「夜はバタバタ、時間があるうちに作っておきたい……」という時に、
3章「食べて養生する料理」は、「なんだか食欲すら落ちてきたみたい……」という時に、
4章「買ってひと手間、満足ごはん」は、「とにかく疲れた、すぐ食べたい……」という時に、
5章「夢中になって楽しむ料理」は、「料理って楽しい!」そう実感したい時に、役立つレシピです。

さらに特別取材「わたしの続ける気持ちと料理」では、タブラ奏者のU-zhaanさん、漫画家のよしながふみさん、モデル・女優の滝沢カレンさん、やり過ごし料理研究家のやまもとしまさんの4名に、台所に立つモチベーションをお聴きしています。

総勢15名の、やさしさが詰まったエピソードとレシピで、どんな日も減ってしまうお腹を温かく満たし、明日の元気につなぐことができますように。(担当:長谷川)

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荻上チキ×ヨシタケシンスケによる、本誌大人気連載の書籍化第2弾! 『みらいめがね2 苦手科目は「人生」です』刊行

2021年09月13日

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生きにくさを感じるのはなぜなのか。生き方を決めつけようとする「~らしく」「~すべき」という「呪いの言葉」がどこから来るのか。分かりやすく解き明かした、大好評の第1巻『みらいめがね それでは息がつまるので』から2年ぶりの新刊です。

2巻では、1巻で告白した荻上さんのうつ症状が緩和されたきっかけや、相手も自分も落とさない笑いとコミュニケーションのとり方、コロナ禍以前に出かけた香港と「雨傘運動」のことなど、ご自身の体験からあふれた言葉が綴られています。

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各話に呼応するヨシタケさんの7コマイラストに登場するのは、お祖母ちゃん、王子様、学生、熊、ロボットなど、実に様々。荻上さんの話を別の視点で眺めつつ、くすっと笑える距離感が絶妙です。

表紙のカバーを外すと、メガネとマスクが外れるしかけや、裏表紙にもご注目。本文のイラストページの配色など、大島依提亜さんによる凝った装釘も、この本の楽しみの一つです。ぜひお手に取ってご覧いただければと思います。

「人によってはギョッとしちゃうかも。それでも読後に、視界がちょっと広がっているかも。どっちに転ぶかわかりませんが、やっぱり、お眼鏡にかないますように」――荻上チキ・まえがきより。
「人間、歳を重ねれば重ねるほど、視野もピントも限られてきます。だからこそ、いろんな『めがね』が必要に、大事になってくるんですね」――ヨシタケシンスケ・あとがきより。(担当:高野)

◎10月29日にこの本の発売を記念した荻上チキさんのオンライントークショーがあります。
対象書店で『みらいめがね』シリーズをご購入した方限定でご参加いただけます。
荻上さんのお話を聴く貴重な機会、ぜひふるってご参加ください。

開催日時:2021年10月29日(金) 20~21時予定(約1時間)

参加条件:『みらいめがね それでは息がつまるので』(第1巻・既刊)、『みらいめがね2 苦手科目は「人生」です』(第2巻・最新刊)のいずれか1冊を下記対象書店でご購入された方(参加費なし、本代のみ)

参加方法:購入時に提供されるチラシ(もしくはレシート)に記載のイベント参加URL(もしくはQRコード)から参加登録

配信:Zoomウェビナー
(※一般参加者の顔は映りません。Zoomアプリがない場合でも、Webブラウザからご参加いただけます)

イベント問い合わせ:文化通信社オンラインイベント事務局(TEL:03-3812-7466)

対象書店リストや詳細については、下記をご覧ください。
・暮しの手帖社ホームページ
「荻上チキさんオンラインイベントのご案内」
http://www.kurashi-no-techo.co.jp/blog/information/20210913

暮らしを大切にするって、どんなこと?

2021年07月21日

暮らしを大切にするって、どんなこと?
――編集長より、最新号発売のご挨拶

蟬がにぎやかに鳴いて梅雨明けとなり、いっきに、猛暑がやってきました。みなさま、お元気でお過ごしでしょうか。
前回、この「ご挨拶」を書いたのは、今号の表紙画を受け取りに京都へ向かう新幹線の車中でした。絵の作者は、佐々木マキさん。漫画家でイラストレーター、そしてたくさんの絵本を手がけてきた方です。イラストレーションのお仕事としては、『風の歌を聴け』ほか、村上春樹さんの小説のカバーが浮かぶ方も多いかもしれませんね。
はじめにお送りした手紙の写しを見返すと、
「ギスギスした空気の漂う昨今ですので、ユーモアがあって、心がほぐれるような絵を」
とあります。
佐々木マキさんはすぐに、「お受けします」とファクスをくださり(絵本や漫画でおなじみの可愛い字で)、とてもうれしかったのを思い出します。
今号を目にした方が、くすっと笑って、気持ちがふっとやわらぎますように。

さて、ときどき読者の方から、
「夏になると、『暮しの手帖』が戦争や平和の特集を組むのはなぜなのでしょうか」
というご質問をいただくことがあります。
ひと言でお答えすれば、それは1948年に『暮しの手帖』が創刊したときに掲げた、
「もう二度と戦争を起こさないために、一人ひとりが暮らしを大切にする世の中にしたい」
という理念を、くり返し胸に刻み、お伝えしたいと思ってのことです。
なぜ、暮らしを大切にしたら、戦争が起こらないの? と疑問に思われるかもしれませんが、初代編集長の花森安治はこんなふうに語ったと伝えられています。
「戦争は恐ろしい。(中略)国は軍国主義一色となり、誰もかれもが、なだれをうって戦争に突っ込んでいったのは、ひとりひとりが、自分の暮らしを大切にしなかったからだと思う。もしみんなに、あったかい家庭、守るに足る幸せな暮らしがあったなら、戦争にならなかった」
つまりは、自分たちの「大切な暮らし」をめちゃくちゃにするような大きな力に、一人ひとりが早くから全力で抗っていたなら、戦争は起こらなかった、ということでしょうか。
そんなに単純じゃない、と思われるかもしれません。けれども、「平和」を考えるとき、それはある日突然やぶられるものではなく、じわじわと、ゆっくりと何かに暮らしがからめとられ、気づけば身動きがとれなくなって奪われるものなのかもしれない。そう思うのです。
「一人ひとりが暮らしを大切に」とは、「自分の暮らしが守られれば、それでよい」という意味あいでは決してないと私は思います。自分に大切な暮らしがあるように、隣人にもそんな暮らしがあると想像し、尊ぶこと。一人ひとりの、それぞれに違った暮らしが守られるために、どんな世界にしたいかを考えて、小さな声をあげていくことをあきらめない。
……と、なんだかカタくなりましたが、たかだか「雑誌」でも、私たち自身が「小さな声」をあげる気持ちで、一冊一冊を編んでゆきたいなあと思います。せっかく、読んでくださる方がいらっしゃるのだから。

最後にひとつ、お知らせです。じつにアナログな私たちですが、このたび、公式Instagramを開設しました。
https://www.instagram.com/kurashinotecho

Facebookでは、おもに文章で誌面の内容をご紹介していますが、Instagramでは、スタッフの方たちの力作である、写真やイラストレーションを軸にご紹介します。ときどき、覗いていただけたらうれしいです。
それでは、暑さ厳しい日々が続きますが、みなさま、どうか健やかにお過ごしください。

『暮しの手帖』編集長 北川史織

暑い夏をおいしく、健やかに乗り切りましょう。

2021年06月11日

さあ、もうすぐ今年も暑い夏がやってきますね。
最近しきりに言われる「酷暑」なんていう日々がまた続くのでしょうか。
こう暑いと食欲も減退し、まず第一に台所に立つ気力も不足気味。
水分や冷たいものばかりを口にしたり、食事もカンタンなもので
済ませちゃおう、なんて日が続くこともありますよね。
でも、それではなおさら元気を蓄えられません。

夏は暑いばかりじゃないのです。
みずみずしい野菜がいっそうおいしい季節です。
トマトになす、オクラ、きゅうり、ピーマン、ズッキーニ……。
旬の味わいを生かすシンプルなレシピで、おいしく健やかな食卓を調えましょう。

そこでお役立ていただきたいのが、
暮しの手帖別冊の最新刊、『暮しの手帖の傑作レシピ 2021夏保存版』です。
料理をするのがおっくうに感じるときでも作りやすい
シンプルなレシピや、暑さに疲れた身体をととのえるレシピ、
もりもり食欲がアップするおかずなど、
ここ10年の暮しの手帖に掲載してきた数ある料理のなかから、
「傑作」としておすすめするレシピを選りすぐってご紹介します。

巻頭は今回新しく取材した「ワタナベマキさん 健やかに暮らす夏の食卓」。
いつもいきいきと麗かで、エネルギッシュな料理家のワタナベさんの暮らし方と、
夏の身体を元気に保つための食卓の工夫、レシピをうかがいます。

そして、本編でご紹介する選りすぐりの料理は122品。
らくらく簡単なシンプルレシピから、家時間を楽しむ本格料理、
「もうひと品」がうれしい副菜レシピ、そしてひんやりおいしい
夏のデザートまで、充実のラインナップです。


中とじには、「絶品カレー特選レシピ」を収録。
表紙の写真にもなっている高山なおみさんの「ごちそうチキンカレー」や、
昆布とかつおダシを使った、川津幸子さんの「和風カレー」など
カレールーで作るカレーから、
鶏肉とししとう、万願寺唐辛子などの野菜とクミンとコリアンダーなどで作る
長尾智子さんの「鶏肉と緑野菜のカレー」など
いま人気の本格スパイスカレーまで、暑い夏にぴったりの
珠玉のカレーレシピを集めて掲載しています。

すべて編集部で試作、試食を重ねているからこそ厳選できて、
自信を持っておすすめすることができる、「傑作」レシピです。
毎日をすこやかに暮らす元気のもとは、「おいしい」という笑顔です。
そのためにこの一冊をお役立ていただけますように。(担当:宇津木)

「あたらしさ」と出会いたい

2021年05月25日

「あたらしさ」と出会いたい
——編集長より、最新号発売のご挨拶

各地で梅雨入りし、むしむしする日が続きますね。お元気でお過ごしでしょうか?
この「ご挨拶」を書くのは、いつも発売の数日前なのですが、今日は雨のなか、京都へ向かう新幹線で書いています。新幹線に乗るのは、ほんとうに久しぶり。京都で暮らす、ある作家の方のもとへ、次号の表紙の原画を受け取りに伺うのですが、どんな絵なのか、とっても楽しみです。
いま、私の目の前には、できたてほやほやの最新号があります。表紙画を手がけてくださったのは、画家の今井麗さん。大きく豪快にカットされたメロンに、うっすらと透けた生ハムがのった食卓の情景は、鮮やかで、初夏のよろこびが生き生きと伝わってくるよう。
モチーフの「生ハムメロン」は、今井さんの幼少期の、ある思い出と結びついています。ちょっと意外で愉快なエピソードは、169頁に今井さんが寄せてくださった文章でお楽しみください。

今号の始まりの記事「わたしの手帖」には、「毎日があたらしいから」というタイトルをつけました。
主人公は、ピアニストの舘野泉さん。ご存じでしょうか、 20代でフィンランドに渡り、世界中でコンサートを開いて活躍。60代半ばに脳出血で倒れ、右手が使いにくくなるものの、左手だけでピアノを奏で、84歳のいまも現役でいらっしゃいます。
きっかけは、昨年11月10日に東京オペラシティで開かれた、演奏生活60周年のコンサートにお伺いしたことでした。プログラムを開くと、「苦海浄土」といった言葉のつく難解そうな曲名が並び、ほとんどの曲に、「※世界初演」と添えられています。自粛生活のなか、生の音楽に久しぶりに触れたくて足を運んだのですが、正直なところ、「理解して楽しめるかなあ」と不安がよぎりました。
ところが、いざ演奏が始まると、これがもう、とにかく素晴らしいのです。耳なじみのないメロディの流れに身をひたしていると、どこか知らない土地に運ばれて、シュールかつ美しい風景を目にするよう。「左手だけで弾いている」なんて、すぐに忘れて没頭していました。
ああ、音楽の力って、すごいな。84歳になっても、こんな「あたらしい曲」に挑める舘野さんって、どんな方なんだろう。
単純ですが、いつもだいたいそんなふうにして、記事は生まれていきます。

東京のご自宅でお会いした舘野さんは、飾らず、偉ぶらず、なんともチャーミングな方でした。脳出血で倒れ、リハビリを経て復活を遂げた話は、言葉を探しながら誠実に答えようとしてくださる。妻で声楽家のマリアさんとの馴れ初めや、日々の炊事の分担、ときどき勃発する夫婦喧嘩の話は、ユーモラスに。
とりわけ印象的だったのは、「脳出血で倒れたときよりも、コロナの影響でコンサートができない時期のほうが辛かったかな」とおっしゃったことでしょうか。音楽は、聴く人たちと心を通い合わせるように、会場が一体となって完成されるもの。コンサートのステージに立つと、自分でも知らなかった音が鳴り、「あたらしい自分」が生まれるのだと。

いまは、誰もが息苦しさを覚えつつ、それぞれの暮らしの小さなよろこびを心のよりどころにして、日々を歩んでいるのではとないかと思います。
舘野さんのように、毎日「あたらしい自分」であり続けるのは、とてもむつかしい。それでも、考えること、深く感動すること、自分の思いを言葉にすること、他者を思いやることを忘れずにいたい。そんなことを考えながらこの記事をつくり、一冊を編みました。
今号より、料理家の枝元なほみさんによる新連載「食べる、生きる、考える」が始まります。「台所の窓を開けて社会とつながりたい」と語る枝元さんが、社会のどんな部分に疑問を抱き、少しずつでも変えたいと願っているか、その柔らかな語りに耳を傾けて、ご一緒に考えていただけたらと思います。
そのほかの記事も、担当者が明日から一つずつご紹介していきますので、ぜひお読みください。

あっという間に、京都に到着です。どうか、みなさまの毎日が、健やかで、あたらしいよろこびに満たされますように。

『暮しの手帖』編集長 北川史織

おしゃれ心に、灯を点けよう

2021年03月25日

おしゃれ心に、灯を点けよう
——編集長より、最新号発売のご挨拶

東京は、いまが桜の見ごろですが、花を見上げて歩く人びとの顔は、皆ほころんで、うれしそうです。マスクをしていても目が笑っていて、うれしさがわかるものなのですね。
早いもので、私たちの在宅ワークでの制作も、もうすぐ1年になろうとしています。せわしい仕事と、炊事洗濯といった家のこと。両方が混じり合う日々を淡々と続けていく、倦まずに、健やかに。それはなんてむずかしいのだろうと、実感した1年でした。
さて、今号の冒頭には、こんな言葉を置きました。

「どんなに みじめな気持でいるときでも
つつましい おしゃれ心を失はないでいよう
かなしい明け暮れを過しているときこそ
きよらかな おしゃれ心に灯を点けよう」

これは、初代編集長の花森安治が、『暮しの手帖』の前身である『スタイルブック』に掲げた言葉です。この雑誌の刊行は1946年の夏。終戦から1年の物資に乏しい時分に、浴衣をほどいた生地でつくるワンピースなど、工夫を凝らした「おしゃれ」を提案しました。
いま、この薄い雑誌を手に取ると、苦しいなかでも生を謳歌しようという心、生きる喜びのようなものが、美しい色彩とともにどっと伝わってきて、圧倒されます。
苦しいときに、「生きる」を楽しむって、どういうことだろう。今号は、そんなことを考えながら編みました。
巻頭記事は、「生きることは、楽しいことばかり」。
86歳の編集者、田中和雄さんは、戦時中の少年時代に宮沢賢治の「雨ニモマケズ」に出合い、不惑を過ぎてから、絵本と詩集の編集に携わるようになります。「生きることは、楽しいことばかり」という言葉は、この状況下ではいささか呑気に響くかもしれません。しかし、そこにはどんな思いがあるのか、ぜひ感じ取ってみてください。
続く記事は、今号の表紙の作品を手がけた銅版画家、南桂子さんの生き方を追った、「夜中にとびたつ小鳥のように」。
南さんもまた、1953年、42歳でパリに渡って銅版画家となり、海外でいち早く認められた、遅咲きの人です。とりわけ女性であれば、人生に制約があっただろう時代に、南さんはなぜ、そうした生き方を選んだのか。淡々と地道に続けた制作には、どんな喜びがあったのか。知己の人びとを取材して、南さんの「おしゃれ」にも触れながら、ひとりの女性の像を浮き彫りにしました。
「手元の素材で、アクセサリーを」と「おとなのための帆布バッグ」は、自分の手を動かしておしゃれを楽しもうという手作り記事です。
随筆家の若松英輔さんによる「詩が悲しみに寄り添えるなら」は、大切な人や大切な場所を失ったとき、その経験と心静かに向き合うきっかけにしていただけたらと願って企画しました。

春は、顔を上げて、胸をひらいて大きく呼吸をして、軽やかに歩んでいきたい季節です。寒さで縮こまった心身をほどいて、暮らしにそれぞれの「楽しみ」を見いだせますように。明日から、担当者が一つひとつの記事についてご紹介しますので、ぜひお読みください。

『暮しの手帖』編集長 北川史織


暮しの手帖社 今日の編集部