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『小さな思いつき集 エプロンメモ』刊行のお知らせ

2023年02月27日

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1954年から続く長期人気連載「エプロンメモ」の最新刊ができました。
「エプロンメモ」は、家庭でのちょっとした思いつきや工夫を読者からお寄せいただき、簡潔な「メモ」にしてまとめている連載です。
その内容は、食べもの、着るもの、おしゃれ、住まい、子どものこと、人とのお付き合い、身体のことなど、身のまわりすべてに及びます。
たとえばこんなふうです。

●保冷剤
ゆで玉子などを冷ますとき、何度も水を替えずに、保冷剤をたくさん入れた水で冷やせば、水の節約になります。保冷剤は繰り返し使えるので、ケーキなどに付いてきたら、冷凍庫に入れて取っておくようにしています。

●ガムを取る方法
服や床についてしまったチューインガムをきれいに取るには、氷を布に包んで、ガムのついているところにあてます。ガムが冷やされて固まり、簡単に取ることができます。

●バゲットの袋
バゲットが包まれていた縦長の袋は、細長い野菜を入れるのにぴったりです。紙袋には、泥つきのごぼうややまいもを、保存用のポリ袋には、セロリや長ねぎなど水気の多い野菜を入れて、冷蔵庫で保存しています。

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私たちは、誰かのひとかけらの工夫がきっかけになって、明るい光が差したり、思いがけぬほど力づけられたりするものではないでしょうか。「エプロンメモ」が長く愛されている理由は、ここにあると思っています。
本書は、すぐに役に立つ628編を、早春、春、初夏、夏、秋、冬の季節に分けて収録しました。読者と編集部が一緒に作り上げた、まさに暮らしの知恵袋です。
歳時記のようにも、小さなお話としてもお楽しみいただけます。
どれかひとつでも、ふたつでも、あなたのお役に立ちますように。(担当:村上)

※詳細はこちらからご覧いただけます。

普通をしっかりやっていく

2023年01月25日

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普通をしっかりやっていく
――編集長より、最新号発売のご挨拶

こんにちは、北川です。
この冬いちばんの寒気が列島に流れ込んでいるとのことで、大雪に見舞われた地域では、いろいろお困りの方もいらっしゃるでしょうか。路面凍結もこわいですから、みなさま、どうぞご安全にお過ごしください。
今号の表紙画は、イラストレーターの水沢そらさんによる「春よ、こい」。草むらに花々が咲き乱れ、蝶やイモムシが生を謳歌している――そんな絵で、ひと足早い「春爛漫」をお届けします。函館市出身の水沢さんは、子ども時代、この時季は春を待ち焦がれていて、これはそんなときに思い描いていた春の表現だそうです。
水沢さんが絵に寄せてくださった言葉(169頁)より。
〈そういえば今は亡き父も毎年飽きもせずに言っていました。「はやく春、来ねえかなぁ。寒いの飽きたなぁ」って〉

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思えば、巻頭記事「湯宿さか本 坂本菜の花さん 普通をしっかりやっていく」の取材撮影で能登半島にある石川県珠洲市を訪れたのは、昨年の11月半ば、紅葉真っ盛りの時季でした。いまはすっかり雪景色だと聞きます。
「湯宿さか本」がどんな宿か、もしかしたらご存じの方もいらっしゃるかもしれません。宿をつくった坂本新一郎さんが自ら掲げたキャッチコピーは、「いたらない、つくせない宿」。いわゆる観光地にあるわけでもなく、温泉が湧いているわけでもない。客室には、鍵もテレビもトイレもなく、客は囲炉裏のある広間にいちどきに集まって、夕食・朝食をとります。
客の都合に合わせてくれるホテルなどに慣れていると、ちょっと面食らうかもしれませんが、これがとても心地よく、「叶うならば、あと一日いたいなあ」と思うのです。なぜでしょう?
一つは、坂本さん家族が手分けしてつくる、心尽くしのお料理。そばがき、鰤大根、焼きおにぎりなど、素朴に見える料理が、なんて洗練されていておいしいことか。もう一つは、一家の人柄と暮らしぶりでしょうか。新一郎さん、妻の美穂子さん、娘の菜の花さん。早朝から、炭に火をおこしたり薪をくべたりと、とにかく一日中、ほとんど休む間もなく働いているご家族ですが、自分たちの「まかない」はつどつどきちんとつくり、楽しみを忘れず、暮らしをおざなりにしていません。言葉を交わすと、ユーモアに満ちていてあったかく、人との会話ってこうありたいなあと思うのです。
説明が長くなりましたが、今回の記事の主役は、新一郎さんから宿の経営を引き継いだ菜の花さん、23歳。私が菜の花さんを知ったはじまりは、編集部の人に誘われて観たドキュメンタリー映画『ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記』でした。
映画は、沖縄のフリースクール「珊瑚舎スコーレ」に通う菜の花さんが、この学校の夜間部に通う地元のおじい・おばあ(戦争中に学べなかった方たちです)と触れ合い、やがて沖縄に横たわる基地問題に目を向けて学校の仲間たちと取材をしたり、新聞にコラムを書いたりする姿が描かれます。外からやってきた十代の菜の花さんだからこそ見えるもの。他者を思いやりながらも、恐れずに、素直に語られる言葉。「この人にお会いしてみたいなあ」と思い、はじめて「さか本」を訪ねたのは2020年の11月でした。
その頃の菜の花さんは、実家に戻り、宿の仕事を始めて2年ばかり。毎日の仕事と暮らしを自分の手で回していく大変さに向き合い、そんな中で、社会とどうかかわっていけばいいのか、悩み、もがいている……ように見えました。そう、私たちには一人ひとりに「守るべき暮らし」があるがゆえに、日々は本当に忙しく、よくないとわかっていても、社会の問題をスルーしてしまうことがあるんじゃないでしょうか。
それから2年、久しぶりにお会いした菜の花さんは、なんだか顔つきがすっかり「大人」になっていました。所作はいっそうきびきびとして無駄がなく、「覚悟を持って働いていると、人はこういうふうに変わっていくのだなあ」と思ったものです。
普通をしっかりやっていく。
この記事のタイトルとしたのは、菜の花さんがふと漏らした言葉です。「普通」を「日常」と置き換えるなら、いま、「普通」を大切にすることはむずかしくなっている、そう思うのは私だけでしょうか。どんな人も、自分の生き方を否定されずに、のびやかに生きていくこと。どんな子どもも充分に食事をとれて、学びたい道があれば、不自由なく進める。そうしたことが、本当に「普通」になることを望みます。
そのためにはどうしたらいいのか、未来のために何を選んでいけばいいのか、自分の暮らし、すなわち足元から考えていきたい。そう願って、この記事を編みました。お読みいただき、ご自身の暮らしに重ね合わせながら考えていただけたらうれしいです。

そのほかにも、沖縄の離島を舞台にした「伊平屋島に生きる理由 是枝麻紗美さんとクバの葉の民具」、「アフガニスタンから来たバブリさん」、「憲法を語ろう」などの読み物、旬の魚介やレモンを楽しむ料理記事、韓国の手仕事「ポジャギ」の記事などを揃えました。あすから、担当者が一つずつご紹介します。
年が明けてはや1カ月が経とうとしていますが、今年も私たちがこの手を動かして、精いっぱい暮らしを楽しんでいけますように。寒さ厳しい日々が続きます、どうぞご自愛ください。

『暮しの手帖』編集長 北川史織

思い通りにいかなくたって

2022年11月25日

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思い通りにいかなくたって
――編集長より、最新号発売のご挨拶

このところ、ベッドに入って眠ろうとすると、飼い猫が懐のあたりにするっともぐり込んできます。ぬくぬくと温かくて、ああ、幸せ。私はこれを「懐猫の季節」と呼んでいるのですが、つまりそれだけ寒くなってきたということですね。お元気でお過ごしでしょうか?
考えてみると、この猫(名前はア太郎と言います)がわが家にやってきたのは2年近く前で、9号の記事「看取りのために、飼い主ができること」がきっかけでした。監修してくださった獣医師の髙橋聡美先生の動物病院がわが家からほど近く、「近所で保護された子猫がいる」とご紹介いただいたのでした。「かわいそうな猫がいるならば、引き取ろうか」という、なんというか、いま思えば上から目線な気持ちで譲り受けたのですが、いざ一緒に暮らしてみると、愉快だったりハラハラさせられたりで、仕事に追われる一人の暮らしにおおいに起伏が生まれました。
こちらが世話をしているようでいて、じつは、いろんなものを受け取っている。そういうことは、人と動物の関係性にかかわらず、この世界にいろいろあるのだろうなあ……そんなことを考えます。
前置きが長くなりました、ごめんなさい。
今号の表紙は、香川在住の画家・山口一郎さんによる「Hello,Goodbye」。この絵が編集部に届いて開封したとき、まわりにいた人たちから歓声が上がりました。
「かわいい!」「スカーフにしたい!」
雪の降る夜、さまざまな人や動物、雪男のような親子たちなどが行き交っています。雪だるまが先導する4人組は、『アビイ・ロード』のビートルズでは?(「裸足のポールがいるから、間違いない」とコメントする人あり) ひと仕事終えたサンタがトナカイと連れ立って歩き、ツリーや門松が運ばれて、杖をついたおしゃれなカップルは手をつないで歩いている。
じっと見ると、いろんな発見があって、心がぽかぽか温もってくるよう。私はこの表紙の校正紙を、自宅の壁に飾っています。「どうか、よい年末年始を過ごせますように」。今号には、そんな思いを込めた記事を揃えました。

「年末年始、わが家の逸品」は、「この季節になると決まって食卓にのぼり、そして家族がよろこぶ料理があったものだなあ」と思い出して企画しました(ちなみに、水戸にあるわが実家のそれは「あんこう鍋」でした)。料理家の方が腕を振るう「逸品」のほか、スタイリストの高橋みどりさん、作家の小川糸さんがエッセイとレシピをお寄せくださいました。どれも意外なほどやさしく作れますので、ふだんの食卓にもぜひどうぞ。
「おじいちゃんのお菓子と型」は、明治生まれのある男性が愛用した、お菓子の型から始まる物語。お孫さんから「おじいちゃんのお菓子」の記憶を取材し、残された型からお菓子を再現した、たいへんな労作です。こちらのレシピはクリスマスにおすすめです。

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「わたしの手帖」にこのたびご登場くださったのは、画家のささめやゆきさん。絵本や本の挿画で目にするささめやさんの絵は、なんとも言えない郷愁と感傷を誘われ、ほんの少し官能的でもあって、いったいどんな方なのだろう? と想像をめぐらせていました。一緒に本づくりをされたことのある翻訳家の伏見操さんにご紹介いただき、いざ、鎌倉の丘の上に建つご自宅へ。ささめやさんはウッドデッキに腰を下ろして、チャリティー企画に出すという「招き猫」に絵を描いておられました。
大学を卒業後、大手出版社で臨時社員をしていたという、ささめやさん。「臨時」と言っても文学全集を編み、たっぷり残業もして、正社員となんら変わらない仕事をしているのに、待遇はまったく違う。それに異議を唱える労働争議にかかわると、会社から肩たたきにあい、辞めることになります。わずかな退職金を手に、パリへ、ニューヨークへ。放浪暮らしのなか、まったくの独学で絵を描き、画家として歩み始めたのでした。
「できないってことは、べつにマイナスじゃない」とささめやさんはおっしゃいます。描きたいもの、描くべきものが見えているわけではなく、描いては考え、間違えたら、そこからまた考えて描いて……としているうちに、思いもよらない面白い絵ができている。間違いは、神様からの贈りものなんだ。
お話を聞くうちに、それは絵だけのことではなく、ささめやさんの人生全般に通じる話なのだと思えてきました。できなくてもいい、間違えてもいい。思い通りにいかなくたって、それはそれでいい。
アトリエでの取材中、妻のあやさんが大きなお盆を持って現れ、ハーブティーとパンを出してくださいました。このパンが、いい香りで、もちっとした食感で、とてもおいしい。聞けば、あるお寺の和尚さんから譲り受けた天然酵母を使って、ささめやさんが焼き続けているとのこと。ハーブティーは庭のハーブをブレンドしたもの、服や帽子はあやさんのお手製、家の土壁や窓ガラスもDIYで。そんな調子で、手を動かす暮らしがしっくりと身についているお二人なのでした。
ほんとうの豊かさとは、満足して生きるとは、どういうことなのだろう。ささめやさんにお会いしてから、そんなことを時折考えます。年末が近くなると、この一年の出来事をおのずと振り返りますし、同時に、これから先のことにも自然に思いが向いていくものですね。
「わたしの手帖」のほかにも、今号は心を動かされる読み物が充実しています。料理を作ったり、編み物をしたりするあいまに、どうぞゆっくりとお楽しみください。あすから、記事を担当した編集部員が一つずつ内容をご紹介します。

最後に。ちょっと早いのですが、今年も『暮しの手帖』をお読みくださり、ほんとうにありがとうございます。広告のない『暮しの手帖』は、購読料のみで支えられていますが、来秋には創刊75周年を迎えます。そのことに社員一同が驚き、奇跡のようだと感じ、そして深い感謝の気持ちをおぼえています。来年も、こころざしを持ち、精いっぱいに、暮らしに寄り添う誌面づくりを続けていきたいと考えています。
どうかみなさま、心身を休めながら、よい年末年始をお過ごしくださいませ。

◎昨年の冬号でご好評いただいた付録カレンダー、今年も同じサイズで制作しました。題して、「ちいさな物語カレンダー」。
画家の植田真さんの描き下ろしの絵が12カ月分、少年とキツネが登場し、めくるたびに物語が浮かびます。最後のページには、物語を締めくくるような美しい絵がいっぱいに。どうぞお楽しみください。

『暮しの手帖』編集長 北川史織

誰かの言葉が力になる

2022年09月24日

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誰かの言葉が力になる
――編集長より、最新号発売のご挨拶

「列島を台風が駆け抜けると、トランプを裏返すように秋になりましたね」
つい先日、そんなふうに始まるメールをいただき、ひんやりとした空気を胸いっぱいに吸い込みました。お元気でお過ごしでしょうか。台風による被害に遭われた方にお見舞いを申し上げます。もとの暮らしが早く取り戻されますように。
夏の思い出といえば、7月末に香川県の善通寺図書館にお招きいただき、「暮しの手帖のつくりかた」と題した講演を行いました。およそ100名の方たちを前に、『暮しの手帖』の創刊の理念から現在の制作の様子まで話をさせていただいたのですが、こんなとき、「もっと話がうまかったらなあ」としみじみ思います。いや、ただ「うまい」というより、声に自分の感情がにじみ出て、相手の胸に流れ込むように話せたらいいのに、と。思い出したのは、今号の不定期連載「わたしの手帖」で取材にお伺いした、アナウンサーの山根基世さんの言葉です。
〈声には必ず、心がくっついています。
いつどんな瞬間に言葉を発しても、
人を傷つけない、下品にならない自分をつくることが、
アナウンサーの最終目標なのね〉
私たちの声は内面を映し出すものであり、「話す」とは人格をさらすことだと山根さんはおっしゃいます。「ついうっかり」発した言葉は、じつは心の奥底で考えていたことなのかもしれない。
そうした視点で、ふだんの会議や打ち合わせ、はたまた国会中継まで、「声」にじっと耳を傾けてみると、けっこういろんなことがわかるような気がしました。声に、言葉に、力がほしい。その場をごまかすとか、誰かを論破して打ち負かすとか、そうした力ではなくて、うわべではない「心」が伝わるような話し方がもっとできたなら、この世界は少しずつでも変わっていくのかもしれないな。そう感じています。

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さて、この「わたしの手帖」は、私が編集長を引き継いだ4号から始めた不定期連載ですが、裏テーマ(?)の一つは「人生の先輩の話を聞きに行く」です。自分たちよりやや年下の方のもとへ伺うこともありますが、人生の迷いや挫折、日々のちょっとした、でも確かな喜びや幸せなどを、格好つけずに話してくださる方たちに取材を受けていただいてきました。
山根さんには、放送人としてのこころざしが磨かれたいくつかの転機をお聞かせいただき、なかでも印象深かったのは、25年ほど前にNHKのドキュメンタリー番組『映像の世紀』のナレーションをされたときのお話です。当時、40代半ばを過ぎていた山根さんは、女性特有の体調不良もあり、十分な声が出ずにいましたが、「これを伝えるのが使命だ」という強い思いが「声」となったといいます。
考えてみれば、私は当時の山根さんとほぼ同年齢で、この一年ばかりは、これまでにない不調に悩まされてきました。若いときよりは少しばかり仕事の経験値が上がっているので、なんとかしのいでいますが、「いったいいつまで続けられるかなあ」などと弱気になることもあります。女性のなかには、頷いてくださる方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかしながら、山根さんのお話、「仕事は自分のためではなく、ある〈こころざし〉のために」を聞いたとき、胸にさっと光が差し込むような気がしました。「自分のために」だけでは力が出なくても、私も出版人の一人として、まだできること、やるべきことがあるんじゃないかな……と思えたのです。
ある人が思いを込めて話してくださった言葉は、きっと誰かの力になる。そう信じて、毎号、一つひとつの記事を編んでいます。今号のそのほかの読み物の特集は、お菓子のパッケージなどでおなじみの画家の生きざまを紹介する「鈴木信太郎とその仕事」、9名の方たちがとっておきについて綴る「日記本のすすめ」、画家の牧野伊三夫さんの「銭湯、酒場、ときどきカレー 描きたくなる旅 富山編」と、どれも読みごたえたっぷりです。秋ならではの滋味深いおいしさの料理もご紹介しておりますので、どうぞお試しください。心をうるおし、身体をほっと休めながら、よき日々を過ごせますように。

『暮しの手帖』編集長 北川史織

武田砂鉄 『今日拾った言葉たち』発売のお知らせ

2022年09月16日

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ライターの武田砂鉄さんが、
世の中に溢れる言葉にふと立ち止まり、
その裏に隠れた本質に根気よく迫る人気連載、ついに待望の書籍化です。

2016年からはじまった「今日拾った言葉たち」は、
日々起こる出来事が、新聞、テレビ、ラジオ、書籍、雑誌、SNSなどで
さまざまに語られるなかで、
武田さんが出合った気になる「言葉」を取り上げ、考察をしているものです。
人々が発する言葉の意味や、
そこに映る「今」を見つめ続けてきました。

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武田さんの心の網にかかった言葉はじつに幅広く、
モリカケ、コロナ、オリンピック、戦争といった誰もが知る問題をはじめ、
政治、教育、スポーツ、芸能、文化といったジャンルの報道から、
はたまた、書店員さんや主婦がこぼした一言も。
さらには、武田さんを支える背もたれとなるようなあたたかい言葉たちも登場します。

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本書は、2016~2022年上半期分に、
大幅に加筆修正した、より分かりやすい解説と、
書き下ろしコラム、総論を収録。
近年、私たちを取り巻く状況下では、
どんなことが起きて、何が変わって、何が変わっていないのか。
今、私たちの生きるこの世の中をあらためて見渡し、
社会の構造がより見えてくる一冊となっています。
読み終える頃にはきっと、
自分とは無関係に思えるどんな社会問題も、
結局は自分とつながっているのだ、と実感していただけるはずです。

「あとがき」では、
安倍晋三元首相銃撃事件について触れられています。どうぞお見逃しなく。(担当:村上)

『今日拾った言葉たち』特設サイト

最新刊『新装保存版 これで よゆうの晩ごはん』発売のお知らせです

2022年09月02日

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仕事に家事に子育てに……誰もがとかく毎日忙しいものです。
特に、子育てしながら仕事に就いていると、毎日食事づくりはひと苦労。
「ごはんをもっと手早く、おいしく、楽しい心持ちで作りたい。けれど、忙しい日々に追われていると、心のよゆうをなくしてしまう……」
この本の始まりは、子育て中の編集担当者のこうした気持ちからでした。
「そんな悩みを少しでも軽くしたいという思いから、料理家の上田淳子さんに、かんたんな“下ごしらえ”をしておくだけで、夕方にはあっという間に仕上がるお料理のレシピを教えていただいたのです」

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「今日は何を作ろうか」と考え、仕事帰りに買い物をして、家に着いたら材料を切るところから始める。毎日それではとっても大変! ほかにもやることはたくさん押し寄せてくるのに、心のよゆうなど持てるはずもありませんね。
そんなとき、味方になってくれるのが、この本でご紹介する「かんたん下ごしらえ」です。
朝10分ほど、ひと手間かけておけば、夕方家に帰ったらパパっと手早く仕上がります。
その方法と工夫がたっぷり詰まったこの一冊。5人の料理家の方々が、それぞれご自身の暮らしのなかで工夫されているレシピばかり。メインのおかずからもうひと皿の副菜、あると便利な常備菜まで、献立まるごと活用していただける秀逸なレシピが満載です!
この本は、2018年に刊行しご好評をいただいた別冊『これで よゆうの晩ごはん』を、書籍化したものです。詳しくは、暮しの手帖社オンラインストアをご覧ください。(担当:宇津木)

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平和が「あたりまえ」であるうちに

2022年07月25日

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平和が「あたりまえ」であるうちに
――編集長より、最新号発売のご挨拶

このところ、帰宅の道すがら「あれ食べたいなあ」と思い浮かべるのは、冷ややっこ、きゅうりとワカメの酢の物、キンと冷えた夏野菜の揚げびたし……。暑い日が続きますが、お変わりなくお過ごしでしょうか。
今号の表紙画は、絵本作家の荒井良二さんによる「『あたりまえ』のような一日」。思えば、荒井さんに絵を依頼したのは、ロシアによるウクライナ侵攻が始まって2週間ほど経った頃で、私たちは「戦争と平和」を考える特集を組みたいと手探りしていました。
「『私たちは平和を選びたい、そして幸せに暮らしたい』という思いが伝わるような絵を描いていただけませんか?」
そんな依頼状をお送りし、お会いして2時間ばかりおしゃべりしたのですが、荒井さんは「うーん、平和を描くってむずかしいなあ」とおっしゃいました。そうですよね、むずかしいですよね……。
やがて届いた下絵は、画面中央にアコーディオンを弾く妖精のような木が立ち、梢のなかには、ランプやソファ、お茶のセットなど、「暮らし」を彷彿させる愛らしいモノがこまごまと描かれていました。木の外側の世界には、踊る人びとや活気のある市場、遠くには港の風景。ああ、なんだか明るくて楽しくて幸せそうだ。
この絵に荒井さんが寄せてくださった言葉をご紹介します。

あたりまえのように朝が来て、日が昇り鳥がさえずり、
あたりまえのように空を見て、あたりまえのように食卓にごはんが並ぶ。
あたりまえのように仕事や学校や遊びにでかけ、
あたりまえのように誰かと話し、あたりまえのように笑う。
あたりまえのように紛争や戦争のニュースを見て、
あたりまえのようにお茶を飲む。この「あたりまえさ」は
「どこ」から来るのだろう、誰が作ったのだろうと
ぼんやり考えながら家路につく。そして、あたりまえに夜が来る。

「平和」というのは、平和であり続ける限り、まさに空気のように「あたりまえ」に思えるのかもしれません。いま、私たちが「平和」や「戦争」を考えるとき、先の戦争を懐古的に振り返るのではなく、何か身に迫ったものとして捉えるようになったのは、ウクライナへの侵攻があって以来、「平和はあたりまえじゃないのだよ」と耳元でささやかれているからなのだろうと思います。
平和はあたりまえではないから、勝ち取らなければならない。弱い国はいじめられる。他国から攻められたら、いったいどうするんだ。
そんな声がしだいに大きくなって、熟考しないまま、まっとうな議論のないまま、なし崩し的に変えられていくのかもしれない。恐ろしいと思います。

今号では、いまの状況を見つめながら、私たちなりに「戦争と平和」を考えた特集を編みました。「小林まさるさんの七勝八敗人生」と「戦争を語り継ぐために」の2本です。なんらむずかしい記事ではありませんし、同時に、何か明快な答えが書かれているわけでもありません。
心を落ち着けて考えてみたい人へ。まわりの人たちに「どう考える?」と問いかけて、話をしてみたい人へ。これらの記事が、ある「よすが」となることを願っています。
私をはじめ、ほとんどの編集部員は親の代から戦争を知らない世代であり、迷ったときに「よすが」とするのは、創刊者で初代編集長の花森安治の言葉です。1969年の『暮しの手帖』より、花森の文章をご紹介します。

この日本という〈くに〉を守るためにはどうしたらいいかという議論ばかりさかんだが、そのまえに、それなら、なぜこの〈くに〉を守らねばならないのかという、そのことが、考えからとばされてしまっている。
そんなことはわかりきったことだというだろう。
そうだろうか。
ためしに、ここで誰かが「なぜ〈くに〉を守らねばならないのか」と質問したら、はたしてなん人が、これに明確に答えることができるだろうか。

私たちは国のために生きるのではなく、私たちの暮らしのために国があるんですよね。今号も、一人ひとりのかけがえのない暮らしに、小さな灯りをともせたらと願って編みました。どうか、お役に立てますように。

『暮しの手帖』編集長 北川史織

※荒井良二さんが世田谷美術館の収蔵品から作品を選び、その魅力を紹介する展示が8月6日(土)より開かれます。花森安治の絵も展示されますので、ぜひお運びください。
「荒井良二のアールぶるっと! こんなに楽しい世田谷美術館の収蔵品」

別冊『おしゃれと暮らし』発売中です。

2022年06月14日

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以前、木工作家さんを取材した時のことです。
木を膝で挟むようにして作業するため、ジーンズの膝の内側がすぐに擦り切れてしまうといいます。
彼女はそこに布を当て、様々な色の余り糸で縫い付けていました。
配色を楽しむかのように、自由奔放に布の上を走らせた糸は、とてもおしゃれに思えました。

『暮しの手帖』創刊編集長の花森安治は、1946年の『スタイルブック』の巻頭言で、こう述べています。

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おしゃれ、といえば何か、さしせまった毎日の暮しとは係りのない、浮いた遊びごとか、ひまがあってお金があって、というひとたちでなければ出来ないことのように考えられてはいないでしょうか。
そんな風なおしゃれも、たしかにこの世の中にはあるかも知れない。
けれども、そんな、お金さえかければ美しくなれるとか、ひまがないから、おしゃれが出来ないとか、
毎日の暮しから浮き上がってしまった遊びごとなら、
私たちは、おしゃれのことなど考えることは要らないと思います。
ほんとのおしゃれとは、そんなものではなかった筈です。
まじめに自分の暮しを考えてみるひとなら、誰だって、
もう少し愉しく、もう少し美しく暮したいと思うに違いありません。
より良いもの、より美しいもの求めるための切ないほどの工夫、
それを私たちは、正しい意味の、おしゃれだと言いたいのです。
それこそ、私たちの明日の世界を作る力だと言いたいのです。
 
別冊『おしゃれと暮らし』を制作するにあたり、この言葉を大切にするように心掛けました。
作家の小川糸さん、刺しゅう作家の神津はづきさん、スタイリストの伊藤まさこさんなどから、
暮らしから生まれた「おしゃれ」の工夫を教わったり、
いま、クローゼットにある服で新鮮なコーディネートができる配色を考えたり、
誰もができるおしゃれのヒントを集めてみました。
ただ、ここにあるのはあくまでもヒントです。
暮らしの必要や生活を楽しくしたい、という気持ちに真摯に向き合い、試行錯誤を繰り返す、
その過程を楽しむ姿勢こそが「おしゃれ」なのかもしれません。

別冊編集長 古庄 修

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目次はこちらをご覧ください。
ご購入はお近くの書店、もしくはオンラインストアで。

今日をほがらかに生きる

2022年05月25日

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今日をほがらかに生きる
――編集長より、最新号発売のご挨拶

最近、instagramを見ていると、軒下の巣に寄り添うツバメのきょうだいたちの写真が次々に投稿されています。添えられたコメントからも、「季節の風物詩」を愛おしむ気持ちが伝わってきて、なんだか心がほのぼのします。こんなとき、私が決まって開くのは、学生時代から使っている『ハンディ版 入門歳時記』。燕、乙鳥、つばくろ、つばくらめ、初燕、飛燕……。例句として、こんな句が並んでいます。

夕燕われにはあすのあてはなき 一茶

町空のつばくらめのみ新しや 中村草田男

一句目に、いまのウクライナの人びとの状況を思わず重ねてしまったのは、私だけでしょうか。二句目は、若々しいツバメが颯爽と空をゆくさまが目に浮かぶようです。
さてさて、さわやかな季節の到来。最新号の表紙は、ツバメのまなざしでどこか異国の街を眺めるような、初夏の風のきらめきが感じられる絵です。広島在住の画家、nakabanさんに描き下ろしていただきました。

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巻頭記事「わたしの手帖」で取材にお伺いしたのは、浪曲師の玉川奈々福さん。みなさんは、演芸場やYouTubeなどで浪曲を聴いたことはありますか? 私は両親(戦後生まれ)が聴いていた記憶もなく、以前は「はて、浪曲とは? 講談とはどう違うのかな」という認識でした。あれはちょうど2年前、6号(2020年の初夏号)の取材のときのこと。「はじめてのお楽しみ」という連載で浪曲がテーマとなり、浅草の「火曜亭」で玉川奈々福さんの浪曲を初めて聴いたところ、すぐさま虜になってしまったのです。
まず、登場人物たちはたいてい、熱血漢で情に厚く、おっちょこちょいだったり涙もろかったりと、やたら人間くさい。物語は基本的に、「人と人のつながりっていいものだな」と思えるような人情噺。そして、語りのあいまに挟まれる朗々とした歌声の素晴らしさといったら。胸にどすんと響き、涙が出て、くよくよしていた心もすーっと晴れていく……これはもう、くせになります。
一方で、浪曲はその「心を強く摑む技」ゆえに、第二次世界大戦中は戦意高揚に利用されたという歴史があります。戦後、日本人が経済的に豊かになり、人のつながりが薄れていくと、反比例して浪曲人気は落ち込んでいきました。いっときは、もはや懐古趣味、過去の遺物のようにも捉えられていた浪曲の世界に、なぜ、奈々福さんは飛び込んでいったのだろう? お話を聞いてみたいと思いました。
じつは奈々福さんはもともと、ある老舗出版社の編集者。鶴見俊輔さんや井上ひさしさんほか、錚々たる編者たちの力を得て日本文学全集を編んだ経歴もあり、「言葉」に対して豊かな感性をお持ちです。インタビューは、きらっと光る言葉がどんどん飛んできては、「なるほどなあ」と深くうなずくような、なんとも贅沢なひとときでした。
なかでも胸に残ったのが、「今日をほがらかに生きる」という言葉。いまは「不安の時代」とも言われ、私たちはつい、「○○すれば幸せになる」とか「○○しなければ将来は不安ばかり」といった惹句や宣伝文句に心をからめとられがちです。しかしながら、今日という一日にしっかりと向き合い、本音で誰かと語らって、おいしいごはんを味わい、満足をおぼえながら眠りにつく……たとえば、そんな自分なりの「幸せの指針」を持つことが、あんがい大事なのではないか。そう思うのです。
それは、社会の課題や、自分の暮らし以外のことには関心を持たなくていいとか、そういった意味合いではけっしてありません。自分の手を動かして築いた暮らしは、社会にしっかりと張った根っこ、ある揺るぎない価値観になる。そこから社会を見つめれば、この満ち足りた暮らしをどうしたら持続させていけるか、おのずと深く考えられるものではないでしょうか。
もうすぐ、選挙の季節がやってきます。何かを選ぶのは簡単ではないけれど、考え、語りあい、私たち一人ひとりの「こう生きていきたい」という願いを一票にたくす。いつだって、誰もが無関心ではいられないアクションです。
今号も、旬の素材を生かした料理、あの人におすそ分けしたいカステラ、夏服にぴったりの刺繍のブローチ、動物の福祉を考える記事など、暮らしのなかの「幸せ」や「大切なこと」のいろいろを編み、ぎゅっと詰め込んだ一冊をお届けします。どうか、お役に立てますように。

『暮しの手帖』編集長 北川史織

いまもいつかは思い出になる

2022年03月25日

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いまもいつかは思い出になる
――編集長より、最新号発売のご挨拶

ここ東京では、あちこちで桜が花開く様子が見られるようになりました。ああ、いよいよ春がやってきたのだなあとうれしくなり、木々を見上げながら散歩するのが小さな楽しみになっています。いかがお過ごしでしょうか。
今号の表紙画は、フランスの画家、ポール・コックスさんによる「ずっと」。世界がコロナ禍に見舞われて2年が過ぎ、鬱々とした気持ちになりがちなときだからこそ、「ぶらっと散歩に出て、心を解放させよう」というテーマで絵を描いていただけないかとお願いしました。
やがて届いた絵には、手をつなぐ二人と、続いていく道。ポールさんが寄せてくださった言葉より、一部をご紹介します。
「愛する人との散歩を想い、ぼくはこれを描きました。絵の中の二人は、道の向こうに広がる世界を探検にいくのか、それとも家に戻るところなのか。そのどちらとも言えるでしょう。この穏やかな循環がずっとつづくことを祈って、この絵を贈ります」
二人の手が描く「M」の文字にも、さまざまな意味が込められていますが、それは「今号の表紙画」の頁をじっくりお読みいただけたらうれしいです。

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表紙の右端には、毎号たいていは巻頭記事のタイトルをキャッチコピーとして立てています。今号は「いまもいつかは思い出になる」。ふるさとの家族と長らく会えずにいたり、家庭や職場で以前とは異なる苦労があったりと、誰もが少なからず苦しみを抱きながら暮らしているいま、小さくとも、胸に灯りをともすような言葉を掲げられたらと思いました。
この記事で取材したのは、エッセイストの吉本由美さん。ふるさとの熊本市から高校卒業後に上京し、セツ・モードセミナーで学んだり、映画雑誌『スクリーン』の編集者となったり、インテリアスタイリストの草分けとして活躍したり。東京で40年余り、つねに心の赴くまま、「行き当たりばったり」に暮らしてきたという吉本さんは、11年前、両親の介護をきっかけに熊本に戻ることを決めます。
2日間にわたる取材では、ふるさとと言えども様変わりしている熊本で、どんなふうに友人をつくり、楽しみを見つけて暮らしていらっしゃるのか……といったお話をお伺いしました。そんな話題のなかで、吉本さんがふと漏らした「人生は懐古趣味がいいのよ。思い出すって、楽しいことだから」という言葉に、はっとしたのです。
「懐古趣味」というと、なんだか後ろ向きにも思えますが、私たちはおそらく、過去の小さな出来事を胸に反芻させて温かな気持ちになったり、誰かがかけてくれた言葉を励みにしたりして、「いま」を懸命に生きているのではないでしょうか。そして、そんな「いま」も、いつかは思い出になる。思い出すことが、人生の楽しみであり、喜びであるというのは、年齢を重ねるごとに実感することなのかもしれません。

今号は「ふるさと」をキーワードにした記事が、そのほか2本あります。ひとつは、「わたしの好きな ふるさとのお菓子」。8名の方たちに、味わうとほっとして素の自分に戻れる、郷里のお菓子について教えていただきました。
あとひとつは、「小林夫妻のピノ・ノワール この土地と生きる」。故郷である長野県原村に戻り、土地を耕し、ワインをつくることで、自然を守りながら暮らす。そんな小林夫妻の生き方について、編集部員が綴りました。
ご存じのように、遠い空の下、ふるさとを追われ、日常を奪われて、死におびえながら生きる人たちがいます。なんてことのない暮らしが、いかにかけがえのないものなのか、「平和」とはなんて脆いものなのか……みながそう実感し、不安を覚えるなかで、「平和を守るとはいったいどんなことか」、さまざまな議論が持ち上がっています。
議論ができるうちは、つまり、みなが自分の考えを口に出し、たとえ決着がつかなかったとしても、話ができるうちはいいでしょう。しかし、はやばやとある一つの意見にまとめあげられ、「違う」と考える人が声を上げられなくなる、それはとてもこわいことです。
「わたし」がどんな暮らしを送っていきたいか、どうしたら幸せに生きられるのか。たとえ自分に子どもがいなかったとしても、いまを生きる子どもたちにどんな未来を手渡していきたいか。自分の足もとから、社会を、この世界を見つめてじっくりと考えて議論していくことは、けっして「平和ボケ」ではないと私は思います。
「大義」よりも「暮らし」を礎にして、本当の民主主義とは何なのか、ぶれずに考える。それは77年前の過ちをもとに、私たち『暮しの手帖』が創刊してから伝え続けてきたことで、これからも変わらずに伝えていきたいと考えています。
なんだかカタくなりましたが、みなさまの日々が、穏やかで、春の喜びに満ちたものとなりますように。どうか、心身健やかにお過ごしください。

『暮しの手帖』編集長 北川史織

『昔話の扉をひらこう』の書評が掲載されました(朝日新聞・3/19)

2022年03月22日

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3/19(土)朝日新聞朝刊に、
小澤俊夫 著 『昔話の扉をひらこう』の書評『ことばは「音」 語ってあげて』
(吉川一樹さん評)が掲載されました。  

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子どもの頃の温かい記憶を呼び覚ますとともに、未来へのメッセージに満ちている。
……2人の息子との「ことば」をめぐる鼎談も収録。音楽家の次男・小沢健二さんと意気投合したのは、ことばはまず「音」であること。視覚・文字情報に偏る現代にあらがう一冊だ。(一部引用)
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昔話研究の第一人者である著者は、「子どもは社会の末っ子。今、不安の多い時だからこそ、暮らしのなかで、生の声でお話をしあう時間を大切にしてほしい」と願います。
人と人をつなげる昔話の力、声の力、語りの秘密等、お話を例に交えながらその豊かな世界をご案内します。

◎詳しくは、こちらをご覧ください。

野菜が主役のベストレシピ集ができました。

2022年03月16日

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暮しの手帖別冊『春野菜 夏野菜 決定版レシピ』が3月16日に発売となりました。
この本は、季節の野菜のおいしさを生かしたレシピを集めた一冊です。

これまで『暮しの手帖』は、たくさんの料理を掲載してきました。
そのなかに眠っている、格別おいしいレシピを丁寧に掘り起こして厳選したベストレシピ集です。

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ふきのとうや竹の子、柔らかな新玉ねぎや春キャベツなど、
まさに今だからこそ味わえる春野菜を使った料理、
トマトやきゅうり、なす、ゴーヤーやピーマンなど、パリッとみずみずしい夏野菜の料理。
そして、手早くぱぱっと作れるシンプルな野菜料理や
肉や魚介と野菜の取り合わせが絶妙な料理など、いろいろなテーマに沿ってレシピを選びました。

穏やかとは言えない日常が続いても、家庭でおいしい料理を食べたら、
少しだけ、ほっとできますよね。
ご馳走でなくてよいのですから、季節の野菜の味わいを、
シンプルでおいしい料理を楽しみましょう。
旬の食材って、そのままの味を生かすのが一番ですから。
くわしくはこちらのページをご覧ください。(担当:宇津木)

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暮しの手帖社 今日の編集部