ボルシチだけじゃ、もったいない

『ビーツ、私のふだん料理』
『ビーツ、私のふだん料理』 荻野恭子著 地球丸 
1,500円+税 装釘 米持洋介

 もう15年ほど前のことですが、ボルシチを作ってみたくてビーツを探したら、デパ地下などを探し歩いても見つからず、缶詰でガマンしたことがありました。その頃に比べたら、いまは日本に生産農家さんもいらして、ビーツはずいぶん入手しやすくなりましたね。
 この本は、ビーツが大好きで、ご自宅のプランターで栽培もされているという、料理家の荻野恭子さんによるレシピ集です。荻野さんといえば、小誌で「うちで作れる世界の調味料」を連載中。食いしん坊が高じて30年以上前から世界中の家庭料理を食べ歩き、現地の味を、私たちにも作りやすいレシピでご紹介くださる方です。
私も先生の料理教室にお伺いしているのですが、生徒さんたちに向かって常々おっしゃるのは、
「これからの時代の料理は、グルメじゃなく、健康よ。命をつなぐ料理を覚えなくっちゃね」
その言葉どおり、ビーツはポリフェノールの力で抗酸化作用があったり、豊富なオリゴ糖で腸内環境を整えたりと、健康面でいいことづくめの「スーパーフード」のようです。ロシアでは、「ビーツがあれば医者いらず」と言われているのだとか。
荻野先生のレシピは、ボルシチ(なんと冷製もあり)のほか、インド風のカレー、スウェーデン風ミートボール、はたまた白あえや簡単ちらしずしまで、ほんとうに多彩。その色あいの美しいこと!
ビーツって、とっつきにくい、ボルシチ以外、料理が浮かばない……そんな方こそ、ぜひ本屋さんでお手にとってみてください。(北川) 


暮しの手帖社 今日の編集部