すべてパンだなんて!
(96号「シチリアの飾りパンまつり」)
94頁を開いてみてください。
祭壇らしきものをみっちりと埋め尽くす、ベージュ色のなにか。
はい、これすべてパンで出来た飾りなのです。
細かい細工に驚きますが、職人さんの手によるものではなく、
「ごく普通のお母さんたち」が、
ひと月ほど前からコツコツと作るのだというから、驚きます。
写真でもこの迫力なのですから、目の当たりにしたらどれだけ圧倒されるだろう……。
企画を進めながら、私の気持ちは何度もシチリアへ飛びました(もちろん行ったことはございません)。
お祭りをレポートするのは、イタリアに拠点を持つデザインジャーナリスト、田代かおるさん。「一度行ってみたい」と秘めていた思いを、写真家の在本彌生さんに話ししたところ、「行こう行こう」と東京からやってきてくれたのだそう。
お祭りを楽しむ二人の無邪気な目線が、美しい写真に投影されています。
田代さんはこのお祭りに「ものづくりの原点を見た」と書いています。
カトリックの信仰に根ざしつつも、市民主導。自分たちで収穫した麦を使い、
考えうる限りの装飾を施す。ものづくりは限られた人のものだけじゃない。
そんな当たり前のことに気付かせてくれる、旅の記録です。
(担当・田島)