追悼 樹木希林さん

2018年09月19日

希林さん_DSC_0195
3世紀1号のインタビューより/1986年

小誌95号の記事「あの夏の日の写真」のために、直筆原稿と写真をご郵送くださった樹木希林さん。
久しぶりに目にしたパノラマ写真には、若き日の希林さんと内田裕也さんの姿がありました。
淡々とした調子でご夫婦の関係を語る原稿に、最初はこれって笑っていいの? と戸惑ったものの、だんだんと可笑しくなってきて、ついに声を出して笑ってしまいました。なんて気持ちがよくて、かっこいい人なんだろう!
メッセージには「誤字、送りがな よろしくお願いします 謝礼は不要です」とありました。
 
その後、原稿確認のお返事を、お電話でいただきました。
「肩書きだけど、俳優っていうのはちょっとね。役者がいいわ。文章は好きに直してちょうだい」
さらに謝礼と見本誌をお届けしたい旨を伝えると、
「みんな、色々なものを送ってくるんだけど、箱を開けてそれを分別してゴミに出してって、本当にめんどくさいのよ。いくら言っても、送ってくるの。だから、送らなくて結構です。自分で書店に行って買って見るから」

その話しぶりが本当にこりごり、という感じだったので、私も潔く諦め、お礼のハガキだけをお送りしました。封筒を開けなくていいように。

希林さん、誌面を見てくださったかなぁと気になっていた折、亡くなられたとの一報を耳にしました。あの率直で、何をお話しされてもどこかユーモアがにじむ電話越しの声が甦り、にわかには信じられませんでした。
お手紙と、ほんの数分の電話のやり取りですら感じられた清々しさ、温かさ。電話を切ったあとの、胸がいっぱいの感覚は忘れることはできないでしょう。
あのお人柄が、誌面からわずかでも伝われば、と願っています。
(掲載誌95号を、ぜひご覧ください。まもなく96号が店頭に並びます。)

樹木希林さん、力を貸してくださり、本当にありがとうございました。
心からご冥福をお祈り申し上げます。

暮しの手帖社 編集部
佐々木朋子


暮しの手帖社 今日の編集部