港港に友のあり──編集長より最新号発売のご挨拶

2017年11月24日

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コンニチハ。
みなさんはどんな秋をお過ごしでしたか?
ぼくの秋は、京都、滋賀、徳島、高松、盛岡、三浦半島……と、公私ともどもけっこうあちこちしましたよ。
狭い日本ですが、タテには長いので、季節の変わり目はその違いが如実に出ます。
先日、京都で迎えた朝、めずらしく娘を小学校まで見送りがてら一緒に歩きました。娘はまだ手をつないでくれますが、友だちを見かけるとぱっと手を離す、小学5年生です。大きくなっちゃったなあ。
……なんて話はともかく、京都の寒い寒い早朝、凍えるような舗道には、イチョウの葉が今を盛りと真っ黄色に色づき、朝の陽光を浴びてきらきら輝いています。
一方で東京はというと、まだこれから。そう、東京の町が黄色く色づく盛りは12月なんですよね。

盛岡は、花森安治展があって9月の末に訪ねました。いつもはどこに行っても、呼び出すのが「その地の友人」というやつですが、盛岡の友は全員東京に出ているので、ああさびしく日帰りかあ……なんてがっかりしていたら、講演会に突然現れたのがIくん。もう10年ぶりくらいかなあ。以前ぼくが遊びで短歌会をやっていたときに知り合った仲間です。
なんだあ、今は盛岡なのかあ!「ちょっと太ったねえ」「サワダさんこそ」「講演後、飲みに行かへん?」「いいっすよー」
と、まことに軽いやりとりで、こういう感じ、ぼくは好きだ。
Iくんは、「12万キロ走った」という軽自動車で市内を案内してくれたあと、〈光原社〉にもつきあってくれ、さらに駅前の〈ぴょんぴょん舎〉へ。焼き肉と冷麺に、なつかしい友人という、うれしい夕べ。結局新幹線の終電近くまで相手をしてくれました。こういう展開、大好きです。
港港、町という町に友のあり、が人生の醍醐味であると、ぼくは信じて生きる者です。
先日はその盛岡の友から「雪でタイヤを履き替えました」なんて報告あり。ああそちらはもう冬なんだね!
友がいると、遠い町が近くなり、想像力、思いを馳せることができます。遥かな町の天気予報も他人事ではなくなるものですね。

さあまた新しい号の発売です。
『暮しの手帖』は、全国誌。港港、町という町の多くの書店に運ばれてゆきます。
その先の、会ったことのない読者のことを思い描きつつ、編集部員たちはいろいろな特集を編んでいるのです。今回は、やりたい企画が多かったので、一気に増頁、特大号としました。ボリュームのある一冊になったと思います。
ぜひお手にとってご覧ください。
週明けからしばらく、編集部員たちがそれぞれの担当頁の報告をさせていただきます。編集長は「面白いことを書くように」とだけ命じております。本欄をどうぞお楽しみに。
よい冬をお迎えください。

編集長・澤田康彦


暮しの手帖社 今日の編集部