小さな姫君に心うばわれて
(新連載:ホルトハウス房子「もの選びのまなざし」)
今号より始まった新連載「もの選びのまなざし」は、料理家のホルトハウス房子先生がその審美眼で選び、ずっと大切にしてきた品々をご紹介するものです。
ご紹介する品は毎号ひとつ。なのに、器や花器、台所道具から根付まで、先生の口から語られる愛用品の物語は、どれもすてき、どれもおもしろく、とっても選び難いのです。
今回、さんざん迷った末に選んだのが、木彫の小さなお人形「あすか姫」でした。
先生とこのお人形との出会いは、なんと60余年前、先生がまだ二十歳の頃でした。
光明皇后(聖武天皇のお后)の幼少期を象(かたど)ったというその姿は、童女でありながら妖艶で、目が合うと、ちょっとドキドキさせられてしまう。
「そうね、どこか艶めかしいわね。それでいてやはり、愛らしいでしょう?」と先生。
小さな姫君は先生とともに、いったいどのような年月を重ねてきたのでしょう?
本誌をお読みになったら、いま一度、写真をじっくりご覧ください。姫君の肩のあたりに、その歴史が刻まれているのがわかるはずです。(担当:北川)