花森安治 初の挿画集がついに完成しました。
現在、東京・世田谷美術館では、「花森安治の仕事 デザインする手、編集長の眼」という展覧会が開催され、あらためて花森のマルチ・アーティストぶりが注目されています。この挿画集の制作に至ったのは、読者のみなさまからの待ち望む声に後押しされてのことです。
花森が編集長として指揮を執っていた1948年~1978年の『暮しの手帖』をパラパラめくると、記事のタイトルまわりや、隅っこや、あちらこちらに、ちいさな線画をたくさん見つけることができます。それはティーカップ、お皿などの台所用品であったり、文房具、家や木だったり……。絵のモチーフは身近にあるものがほとんどです。これらは全て花森が描いたものなのですが、その時代から想像すると、とんでもなくハイカラでモダン。当時、そんな挿画に心躍らせた読者も多かったようです。
花森安治といえば、まず思い浮かべるのは、庶民のあたりまえの暮らしを守るために、企業や国に対して臆することなくペンで闘ったジャーナリスト。当時の編集部員にとっては鬼の編集長で、その怒号は凄まじかったそう。あるOBからは「怒気が顔を打つようだった」とも聞いたことがあります。一方で、表紙画からレイアウトデザインまで一人でやってしまう類い稀なる存在でした。「天才編集長」と呼ばれた所以はここにあります。
暮しの手帖社は、花森が遺した約8000点の挿画を大切に保管しております。本書『美しいものを』には、その膨大ななかから「美学」をテーマに、繊細でかわいらしい、ユーモアあふれるカット、希少なカラー挿画を厳選して、500点余りを収録しました。そして、花森の美学に触れる言葉を散りばめています。
タイトルの『美しいものを』は、花森の名随筆から名付けています(同名タイトルの随筆は、自選集『一銭五厘の旗』に収録されていますので、ぜひこちらもご覧ください)。
『暮しの手帖』初代編集長・花森安治が追求した「美しい暮らし」の世界です。どうぞご堪能ください。(担当:村上)
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