この本の題の「一銭五厘の旗」とは庶民の旗、ぼろ布をつぎはぎした旗なのである。この本の全部に、その「一銭五厘の旗」を振りかざした著者の正義感があふれている。正義感ということばは正確ではないかもしれない。しかし、それに代わる適当な言葉が見つからない。よこしまなもの、横暴なもの、私腹をこやすもの、けじめのつかないもの、そういう庶民の安らかな暮らしをかき乱すものすべてに対する著者の怒りとでもいったらいいだろうか。(刊行当時の「毎日新聞」書評より)
『暮しの手帖』の基礎を築いた初代編集長・花森安治の思いが詰まった自選集、今なお輝きを放ちます。1972年(第23回)読売文学賞随筆・紀行賞受賞作。
[目次]
塩鮭のうた
札幌
戦場
なんにもなかったあの頃
商品テスト入門
見よぼくら一銭五厘の旗
酒とはなにか
1ケタの保険証
もののけじめ
リリスプレスコット伝
重田なを
千葉のおばさん
まいどおおきに
大安佛滅
日本料理を食べない日本人
結婚式この奇妙なもの
漢文と天ぷらとピアノと
お互いの年令を10才引下げよう
世界はあなたのためにはない
どぶねずみ色の若者たち
8分間の空白
医は算術ではない
広告が多すぎる
うけこたえ
美しいものを
煮干の歌
武器をすてよう
無名戦士の墓
国をまもるということ