小さな声を聞き取り続けて
(31号「わたしの手帖 寺尾紗穂さん ならば、ともに生きよう」)
寺尾紗穂さんは、自身で曲を作り歌詞を書いて、ピアノの弾き語りをするミュージシャンです。名前と顔が一致せずとも、透明感のある、伸びやかな歌声を耳にすれば、「ああ、この人!」と思う方は多いことでしょう。
彼女の作る曲は、繊細で、やさしいものばかり。どの歌にも、弱い立場にある人に寄り添い、ともにあろうとする姿勢が感じられます。
音楽活動の傍ら、寺尾さんは、原発労働者や、日本統治下の南洋の島々に生きた人々に聞き取り取材を行う、文筆家でもあります。そしてさらに、3人の娘を育てるシングルマザーでもある。
八面六臂とでも言いたくなるような活躍ぶりに、「一体、寺尾さんってどんな人なんだろう? ぜひお会いしてみたい」と思ったのが、今回の企画のはじまりでした。
取材場所に現れた彼女は、歌のイメージそのまま。「友人と語らうのにぴったりな場所」という東京は武蔵野の散歩道を歩きながら、お話を伺いました。大きな声ばかりが通るこの世の中にあって、小さな声を聞き取り続けてきた彼女。一見バラバラにも見える彼女の活動のすべてが根っこのところではつながっているのだと、きっと分かっていただけることと思います。(担当:島崎)