暮らしのなかのあたたかさ
(27号「ヨゼフ・ラダが描く 冬のチェコ」)
ある日、輸入食品店の棚に可愛らしい箱入りのチョコレートが並んでいて、思わず手に取り、見入ってしまいました。小さな四角いチョコレートの包装紙ひとつひとつに、雪の積もった教会、もみの木を抱える男の人、クリスマスの飾りを見上げる子ども、そり遊びをする子どもたち……素朴で楽しそうな人々の暮らしが描かれ、「JOSEF LADA(ヨゼフ・ラダ)」と作家名があります。箱の裏面には「チェコのクリスマス」の過ごし方が紹介されていましたが、その文化は初めて知ることばかりでした。ヨゼフ・ラダとはどんな人? チェコのクリスマスについてもっと知りたいな、と思ったことがこの企画のきっかけとなりました。
ヨゼフ・ラダは1887年生まれ。自然や動物に親しんだ子ども時代の経験や、田舎の伝統的な暮らしを心に置きながら、数多くの作品を描いたチェコの国民的な画家です。二人の娘たちのために考えた黒ねこの物語『ミケシュ』をはじめ、『きつねものがたり』『おばけとかっぱ』などの童話の作家でもあります。
今回、ラダの作品のなかから特に冬の暮らしを感じられる絵をご紹介します。心が和む美しい色彩の絵。その根底には、自然界への敬意や、なにげない暮らしのなかに安心できる確かなものがあるという、強い思いが込められているように感じました。
『Mikeš(ミケシュ) チェコから来た小さなベーカリー』、『小さな絵本美術館』をはじめ、たくさんの方にお力をいただき、ご縁に恵まれて編んだ誌面です。あたたかいラダの絵とともに、チェコのクリスマスの文化をゆっくりお楽しみください。(担当:佐藤)