ずっと誰かのために作ってきた
(26号「ずっと、食べていく 三好悦子さん」)
「ずっと、食べていく」というテーマが決まったときに、まっ先に思い浮かべたのは、山梨県北杜市で「ギャラリートラックス」を営む、三好悦子さんでした。
わたしが悦子さんの料理をいただいたのは10年以上前。友人たちと訪れたトラックスは、初めての場所とは思えないほど心地よく、すっかり寛いでしまいました。そして展示のオープニングパーティーのために続々と並ぶ料理の美しさに圧倒されながら、ひとつひとつ目と舌でしみじみと味わったのです。このたくさんの料理を、オーナーの悦子さんがほとんど1人で作っているということをのちに知って、とても驚きました。
今回、久しぶりにお会いした悦子さんは相変わらず朗らかで、いつも人に囲まれていました。撮影中、「ちょっと食べてみて、ほらほら」と次々に味見をさせてくれ、「お腹すいたでしょう?」とあれやこれやごちそうしてくれました。こんなふうに、悦子さんはいつも誰かのことを心に置きながら、料理を続けてきたのだろうなぁと感じました。
「料理は食べたらなくなって、それでおしまい、だからいいのかな」と悦子さんは言います。
でも、悦子さんの料理は、10年経ってもわたしの記憶に鮮明に残っていました。あのときの心地よい空気とともに。
悦子さんの料理にレシピはありません。いつだって、そのときの心の赴くままに、味見を繰り返しながら作っていくからです(カレーは100回くらい味見するとか)。そんな悦子さん流の2つの料理の作り方をお教えていただきました。分量もなくざっくりとしていますが、それこそが悦子さんの持ち味。
みなさんも、心の赴くままに作ってみませんか? 自分好みの味が見つかるかもしれません。(担当:小林)