金田一秀穂さんの最新刊、『あなたの日本語だいじょうぶ?』が発売です

2023年07月12日

nihongotop

時代が進めば、さまざまなことが変わります。
考え方に違いが出てきて、以前にはなかった課題が見出されるようになる一方で、新しい文化も生まれてきます。そうした中にあっても、ある程度の年齢になっている人間であれば、「リモート」よりも「対面」、「パソコン入力」よりも「万年筆で直筆」というように、より人間の気配が強いものに温かみを覚えて惹かれるのは当然のことでしょう。
だからといって、新しいものを否定する必要はまったくありません。
新しいものは便利だし、常に発見があります。
言葉にしても、常に変化があります。
  流行語。
  略語。
  新語。
昔からあった言葉でも、従来とは違った意味を与えられることもあります。だから、巷のにほん語はおもしろいのです。
いまの若い人たちは、とにかく書くのが早くて、文章が短い。何かの返事をするにもつい長くなってしまいがちですが、それをやっていてはダメ出しされてしまいます。とにかくスピードが重視されるので、ちょっと何かを説明しようとすれば、「ムダ!」、「無理!」などのひと言で済まされてしまうのです。
もうひとつ若い人の特徴として、〝半径5メートル以内のことなら言語化、文章化するのに長けているのに、50メートル離れたことは書けない〟ということ。興味の範囲がそういう枠内に限られているということなのでしょう。たとえば、いま食べているオムライスがどんな味なのかといったことはうまく説明できます。それこそインスタグラムやツイッターなどのSNSで鍛えられている面が強いからです。しかし、国会で議論されていることやウクライナで起きていることなどは書けないのです。
これから私たちは、自動翻訳機やチャットGPTのような世界と、理屈では説明しにくい世界の両極と、いかに付き合っていくかが求められるようになります。そうしたところまでを理解したうえでコミュニケーションを取っていく必要が出てきます。
コミュニケーションはもともと言葉だけで行うものではありません。言語力以外の部分も非常に大切になってきます。本書では、そんなことが分かる一冊です。(担当:永井)


暮しの手帖社 今日の編集部