ずっといっしょに
(9号「看取りのために、飼い主ができること」)
学生時代に飼い始めた愛猫が14歳になったころでしょうか。しきりにくしゃみをし、鼻血を出すようになりました。
かかりつけの病院に連れていくと、獣医師は、鼻の奥にがんができているのではないか、と言います。「がんかどうかを確かめるのにも、大きな病院で全身麻酔をして検査をしなければならない。怖がりな猫だし、そこまでしなくていいのではないか」という言葉に、私もその時は納得して、それ以上の検査をしないことにしました。
思い返せば、それがよくなかったような気がします。
確定診断を受けなかった飼い主の私の心は、揺れました。がんなのか、がんじゃないのか。もしかして、鼻炎なんじゃないか。もしかして、治るんじゃないか。
不安と希望の「もしかして」を捨てきれず、具合の悪い猫を連れて、たくさんの病院をまわることになりました。
この企画は、一緒に暮らす動物が大きな病気を抱え、完治は見込めないとなった時、どのように介護をし、最期を看取るかについて、ご紹介するものです。看取りを経験されたおふたりの飼い主、緩和ケアに力を入れている獣医師の先生のお話を掲載しています。末期症状の動物を抱えて右往左往する人をひとりでも減らせますように、そんな思いを込めて編みました。
私の愛猫はその後、よい獣医師に出会うことができ、2年近い治療を経て、静かに旅立ちました。またいっしょに暮らそうね。それまであたたかいところで待っていてね。そう約束して別れました。
いいお別れだったと思います。さびしいし、悲しいけれど、そう感じるのは、きらきらと輝くすばらしい時間を過ごすことができたからだと思います。
動物たちがそばにいる。なにげないようでいて、かけがえのない一日一日の積み重ね。皆さんも、傍らにいるその子を全力で可愛がって、今日という日を大切に過ごしてくださいね。(担当:島崎)
◎今号の目次は下記のリンクよりご覧ください。
http://www.kurashi-no-techo.co.jp/honshi/c5_009.html